ー ORDINARY ー

※ 登場人物はすべてフィクションです。車と楽器とフィクションに塗れた会社員の日常を、のんべんだらりと書き綴っています。

小説「シンドローム」について

学生の頃から小説を書くのが好きで、今でも長編を一本つらつらと書き続けています。


シンドローム | hurryharryhurry #pixiv https://www.pixiv.net/novel/series/1107266 


主人公は中学校の剣道部員で、「人の頭の上に雲が見える」「試合中稀に幽体離脱をする」という二つの妙な体質を持っているものの、特に気にせず、小さな頃から竹刀を振り続けてきました。


ある日、夏休みの直前にナツメという転入生がやってきます。


私立の強豪校からの転入生である彼女は剣道部に仮入部しますが、主人公はそこで、稽古中に彼女が「離脱」するところを目撃します。


以降、夏休みから二学期スタートまでの1ヶ月半で、主人公、ナツメ、そして小さな頃から剣道を続けてきた部員たちの間に、「変化」が少しずつ感染症のように広がっていく、という話です。


テーマは「続けること」と「やめること」と「考えること」。


書きたかったのは「文化部のような空気感を持つ運動部」、「学校の図書室という謎空間」、「中学二年の夏休み」です。


米澤穂信の「古典部シリーズ」の雰囲気で、恩田陸の学園モノみたいな話を、もうちょっと成長しきっていない登場人物でやりたかった、といえば何となくのイメージは伝わるのではないかと思います。


また、これ以前に書き上げた中編「彼女の空中散歩」にて、埼玉県と千葉県と東京都の中間に展開する仮想の街、「水保市、虹ヶ丘市、風森市の三市街」という舞台が出来上がったので、その場所のイメージを膨らましたかった、という動機もあります。


2019年または2019年度で完成させられればと思いながらつらつらつらつら書き続けているので、お時間のある方はご笑覧いただければ幸いです。

 

追記:

タイトルの「シンドローム」はGOING UNDER GROUND の曲名からです。好きな曲で、語幹もよく、主人公たちの間にあるものが感染症のように広まっていくところからちょうどよかろうと拝借しましたが、歌詞等との関係は特にありません。ありませんが、色合いというか、雰囲気は思いっきり影響を受けていることに今気づきました。登場人物がまだ幼い感じと、淡い色合いみたいなイメージが。

 


〈あらすじ〉


僕の中学二年の夏休みは、地区予選で恭介に負けたことから始まり、九月一日にナツメが転入してきたことで終わる。

転入生、ナツメの奇妙な不安定さは、僕らの間に、まるで感染症のように広まっていって――。

ちょっと不思議な剣道部の、いつもより賑やかだった夏休みで起こる、図書室と雲と幽体離脱の話。


シンドローム | hurryharryhurry #pixiv https://www.pixiv.net/novel/series/1107266 

エフェクターボード(2019年10月時点)

ギター弾きのエゴと浪漫と欲望の結晶体、

エフェクターボード。


こんなに人間のエゴが詰まったもの、この世に数多溢れる演奏ツールの中でもそうそうないと思います。足元に並ぶカラフルなペダル。歪みの選択やツマミの位置で、弾き手が何をやろうとしているのか見る側に想像させてしまう異様な情報提示力。魅力です。


アンプ直のどダイレクトさも好きですし、最近は足元にHX Stomp一発という人も多くて、大体においてそういう人の方がどストレートに良い音を鳴らしてる気もするのですが、私は未だにアナログペダルが並んだ人様のボードを眺めるのが好きです。


エレキギターを本格的に弾き始めて4年。エフェクターが増えてボードに並べて以来、宅録時もバンド時も練習時もほぼほぼこのラインナップなので、わりと最初の頃から方向性は間違っていなかったのだろうと思い、これを機にまとめておこうと思います。


 

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①TS808 / Ibanez (オーバードライブ)

②Sweet Honey Overdrive / Mad Professor 

(オーバードライブ)

③Fishing is as Fun as Fuzz / Ninevolt Pedals (ファズ)

④Aqua Puss Mk 2 / Way Huge (ディレイ)

⑤SCH-Z / Arion (コーラス) 

⑥TR-2 / BOSS (トレモロ)

⑦Bluesky / Strymon (リバーブ)

⑧RC-1 / BOSS  (ルーパー)


◯ボード…EBB1-L / Music Works

◯電源…AC/DC Station 4 / Custom Audio Japan

◯パッチケーブル…SL-8(Nickel) / Free the Tone

◯ギター…主にストラトタイプ (たまに気分でレスポールなどなど)


漢の直列8発です。


※速いディストーションの曲を弾くときには、③ファズをディストーション (SL drive / Xotic)に変更してTSでブーストします。


※カッティングで押し切るような曲をやるときには、①TSをコンプ (Home Run King Comp / Ninevolt Pedals)に変えてます。

 

※音はストラトの紹介記事掲載のYouTube動画あたりをご覧ください。


 

コンセプトは『クリーン主体。後は大体これで出せる』です。


基本はSweet Honey Overdriveをプリアンプ的にかけっぱ、ボリュームとトーンを若干絞ってフロントクリーンを出してます。


装飾音を入れるときにはディレイ・コーラス・トレモロを気分でオン。ビル・フリーゼルみたいな音を出して遊んでます。


歪ませるときとテンションがぶち上がったときは、TSでブースト。John Mayerの音を狙ってます(出るとは言ってない)。


バーブは、全ツマミマックスでキルドライ、ボリューム奏法でストリングスみたいなロングトーンを出すのに使ってます。ノーマルの残響リバーブは基本アンプ側かDAWソフト上でかけてます。

 

元々はルーパーで遊ぶ為に作ったボードなのですが、どこまでも使い勝手が良く、重宝してます。飽きないです。



使用頻度は低いですが、肝はTSとリバーブだと思います。


TSはホント一家に一台レベルで便利です。ゲインを上げて単体で使ってもおもしろいですが、一番はやっぱりブースター使用です。TSの鼻づまり感解消のためトーンは上げ目、ボリュームマックス、ゲインは最小レベルで、前段の歪みをブーストすると抜けます。超抜けます。なんでこいつは単体で使うとミッド命の何とも言えない音がするのに、ブースター使いすると抜けてくるのか意味がわかりません。

 

TS独特のコンプ感にも最近慣れてきました。TSオン時は普段より強めに弾いて、ピッキングでゲインを上げてやるのがコツだと思います。ハイの歪み成分が出て音が抜けてくる気がする。


続いてリバーブ。ルーパーで遊んでると、こいつが一番楽しいです。ギタリストの憧れる音は、サスティンが延々と伸びるクリーントーンだと思うんですよね。それが出来ないから世のギタリストはゲインを上げてきたわけで。


キルドライ及びボリューム奏法のリバーブは、このカタルシスを一撃で解決します。一小節分のループに、適当な和音のボリューム奏法を加えるだけで世界観が一変します。トム・ミッシュっぽいことをやりたくて使っている奏法です。まあエレハモのフリーズ買えって話なんですが……。


最後はルーパーです。「人と合わせられない間のリハビリ相手」として買ったルーパーですが、これのおかげで毎日ギターを触るのが楽しくなり、リードだけじゃなくオブリを練習するきっかけにもなりました。DTMに憧れるギター弾きはインターフェースやDAWソフトを買うより扱いやすいルーパーを一台買うのが一番じゃないかと思います。もれなく展開が苦手になりますが…。


※近年展開の苦手さは、端からルーパーにコード・リズム展開のあるフレーズを吹き込むことで解消を試みています


 

以上、個々のエフェクターは時間のあるときに題材にしようと思いますが、エフェクターボード全体に関するまとめです。

 

クラプトン、ジョン・メイヤー、トム・ミッシュが好きな私ですが、片鱗は感じるでしょうか。Aqua Pussをど真ん中に据えているところでメイヤー熱が伝われば幸いです。

 

このレベルなら持ち運びも便利なので、しばらくはこの編成であっちやこっちや出張っていこうと思います。

 

 

追記:

 

ボードをMUSICWORKSのEBBにしたのは、固定方式がマジックテープであったからです。

 

当時すでに使うエフェクターは固定されてきており、メインで使うペダルを売ることはそうそうなかろうと、筐体の裏にマジックテープを貼ることに抵抗はありませんでした。マジックテープ固定なら気分で入れ替えるのも楽そうだとも思いましたし、それは実際その通りでした。たまにTS808をTS-9にしたりして遊んでいます。

 

なお、持ち歩くときにペダルのズレを防ぐ為にクッションで固定する人が多いと聞き、今のところ下記のように対応しています。

 

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これを、


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こうして、


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こうです。これでぶん回してもそうそうペダルはズレません。

 

澪ちゃんのぬいぐるみは遥か昔にゲーセンでゲット。Roseliaのクッションは最近秋葉原ラムタラメディアワールドで購入しました。買ったときはノリノリでしたが、先日新しいバンドの初練習に持ち込んだときはさすがに羞恥心が生じまして、さっと出してさっと仕舞い事なきを得ました。ちなみに私は紗夜さん推しです。くどはる可愛いよくどはる。

新山、シルビアのターボに乗る。その2。

首都高6号線から小菅、堀切ジャンクションを経由してC2に入り、湾岸道路を目指します。


即位礼正殿の儀の当日でC1が封鎖されており、交通量がどうかという心配していましたが、幸いなことにスッカスカです。こういう日はかえってみんな上を使わないのか。快走路のC2を、Spec-Rがタービンの回転音をキーンと響かせながら走っていきます。


「それにしても速いね」

「速い。てか、前に出てほしいタイミングでのダッシュ力があるから、結果的に速く感じるんだよね」


そういえば新山さん、コペンに初めて乗ったときも「速い」と言っていました。いつだったか、ボクスター乗り(タイプ981・NA)に運転してもらったときにも、出てきた感想は「思ったより速い」でした。排気量はそれぞれ2.0と2.6。コペンの何倍あるんだって話です。


よくよく考えればこういうときにいう『速さ』とは速度のことではなく、踏んだときの加速力のことを指すことが多いんだろうと、今更ながらに実感しました。そもそもこのときも普通に法定速度で巡航中です。普段何気なく口にしてる言葉って、意外とイメージが曖昧なまま使ってたりするもんですね……。


「ちょっと無理やりだけどさ」

「何すか」

「ターボがハムバッカーで、NAがシングルコイルって感じがする」

「……そりゃまた思い切った喩えだね。ああ、でも分かる気がするな」


ギターのピックアップの話です。新山さんは基本フェンダー系シングルコイルのギターを愛用していますが、私はわりとレスポールストラトを取っ替え引っ替えする方なので、新山さんの喩えは思いのほかしっくり来ました。


「踏んだときのダッシュ力って意味でパワーがあるターボと、踏んだときも抜いたときもアクセルの反応が機敏なNA。ピックアップの出力が高くて纏まった音が出るハムと、ピッキングに気を使わないと良い音が鳴りにくいシングル。ーーなるほど、ちょっと似てる気がするね」

フライホイールの件があるから、ターボとNAっていうよりオーテックバージョンとSpec-Rの比較の面が強いけどね。ーーただこれ、全開走行になると多分ターボの方が手強いのかな?  トルクがある分、下手な踏み方をしたら空転しかねない気がする。それでも、サーキットとか行かずに普通に走る分には、楽なのはターボ、楽しいのはNAって感じだね」



大黒パーキングに到着。


夜は閉鎖されてばっかりなので、来るのは久しぶりです。車を停めると、新山さんはダッシュボードを開けて、いそいそと車検証を取り出します。

 

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「……レンタカー借りて車検証とメンテナンス簿読み出すやつ、そうそういないと思うんだけど」

「そう?  某ブラックバードさんも『車検証見れば大体のことがわかる』って言ってたじゃん」

「ありゃ車の大きさと前後重量配分の話でしょ。これどっちも同じじゃん」

「いやまあそうなんだけどさ……。どっちかというとメンテナンス簿が気になって。結構マメにメンテされてる感じがしたから、どんなもんかと思って」


言われてみれば、ボディーはやたらとキレイだし、ワックス掛けもされているようで手触りもよかったし、窓はやたらと雨を弾きます。レンタカーで酷使されているにしては、やれた感じがありません。


「……7月のメーター記録があった。すげえ、3ヶ月で10,000km以上走ってる。結構乗られてるんだなこの車」

「さすがに人気だねシルビア。それと、今気づいたんだけど、随分遠くから来たんだねこの車」


車検証入れを見ると、本州の端っこ辺りの日産ディーラーの名前が入っていました。


「うわホントだ。おれのは関東圏内で乗られてた個体だけど、こうして見るとなんか感慨深いな。初年度登録は……、平成11年か。最初期型だこれ」


しばらく内装外装をあちこち調べていきます。

 

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「お、バニティーミラー付いてんだね」

「そうなんだよ。シルビアのバニティーミラー、途中の年式からオミットされてるんだよね。おれの後期仕様だから付いてないんだよ」

「え。何それ。普通、内装仕様って増えてくもんでしょ。減ることなんてあるの?」

「要はコストダウンだよね。日産車、2000年に入ってからこういう地味なところの仕様が消えていくんだよ。ちょうどゴーンさんが入った時期だし、当時の経営状況を偲ばせるよね。ーーあとこれ、この音」


鍵を刺したままドアを開けると、キー抜き忘れの警告音が鳴ります。


「あ、音が違う」

「昔はこの音なんだよね。ポーン、ポーンって。今のはピピピピ、ピピピピ。この時期に変更されてるんだよ」


詳し過ぎます。

 

一体どこでこういう情報を得るのか。いつぞや、圏央道で遠方を走るプリメーラのウイング形状から「ありゃオーテックのだね」と判別した辺りから薄々感じてはいましたが、やっぱりこいつ、筋金入りの日産党だと思います。本人は頑なに認めませんが。


 

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大黒パーキングの名所、ベイサイドレストランにて、名物のサンマーメン辛味噌炒めラーメンを食い散らかし、のんびりと帰路につきます。ここのラーメン、量がやたら多くて味も旨くて好きです。

 


「いやーおもしろかった。どうですか、NAとターボ比べてみて。ターボ狂になった?」

「最初危うくなりそうだったけどね。……そうだなあ、やっぱりNAでよかったかなあ」


しみじみと語る新山氏。


「街乗りが楽なのは間違いなくこっちで、高速乗ってても6速巡行から加速できるし、踏めばやたら速いし、かなり印象はよかったんだけど。ーーここまで速くなくていいなってのが一番の感想かな。安楽さはこっちの方が上だけど、安楽さを求めるなら、別にシルビアじゃなくても良い気がするし。NAはやっぱり、ナチュラルでバランスがいいっていうのがよく分かった。いや乗ってよかったよ」

「乗り換え考えてたのに、まーたオーテックに愛着湧いちゃいそうだね。まあホント楽しかったね。……あとさ、今気づいたんだけど、おれ、この車ちょっと酔いそう」

「あ、やっぱり?」


高速巡行中、ふらふらと視線がブレる感覚があります。


「直進安定性はおれのやつの方がいい気がするな。おれのシルビア、サスペンションNISMOのに換えたり、ゴムブッシュ新しくしたり、剛性上げるためにあれやこれや試してたんだけど、あれは改悪になってなかったんだな。今回それが分かったのもよかったよ」


 

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無事愛車の元に辿り着いた新山氏。大変に楽しかったです。おれも今度またロードスターでも借りようかな…。

 

 

今回のオチとしては、これで少しは新山さんの乗り換え欲も治るかなと思いきや、それとこれとは話が別だったということです。最近は満足のいく出物もないようですが、果たしてどうなることやら……。

 

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終わります。

新山、ターボのシルビアに乗る。その1。

何度か書き記している通り、地元の友人新山の愛車であるシルビアS15は、オーテックバージョンという比較的珍しいモデルです。


日産の特装車製造を手掛けるオーテックジャパンによるカスタムモデルで、車検証にも「GF-S15『改』」とバッチリ刻まれている、言ってみればお上の認めた改造車です。

 

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※車検証の型式番号にバッチリと刻まれている『改』の文字


その最大の特徴は、一般的なシルビアのイメージに反する『NAチューンドモデル』であること。


つまるところ新山の愛車は、「高回転までぶん回して楽しい車」として開発されており、「高回転域での伸びにギア比を振っている」ということは、逆に「低速トルクを大なり小なり犠牲にしている」ことも意味し、この特性が新山を「次乗る車は街乗りと高速巡行が安楽な車」という思考に向かわせている一旦であると私は思います。


となると、「じゃあ逆にターボモデルはどうなのか」という話になってきます。新山曰く、


オーテックバージョンについて改めて調べてみたら、やっぱりターボのSpec-Rと比較されてることが多くてさ。読んでて気づいたんだけど、おれターボ車ほとんど乗ったことないんだよ。それこそ梁井のコペンと、先輩の34Rをちょろっと動かしたくらいで。ーー同じ車で、同排気量のNAとターボを乗り比べる機会なんて早々ないと思うんだけど、……よくよく考えたら、シルビアはそれが出来るんだよね」


おもしろレンタカー。

https://www.omoren.com


千葉県野田市に本店を構えるスポーツカー・MTカーに注力したレンタカー屋で、それこそRB26エンジンのGT-R三世代からアルトワークスまで、おもしろいところだとジムニーからガヤルドまで、「気になるけどなかなかじっくり乗る機会がない」車のラインナップが魅力です。私が車選びの出発点にNCロードスターを借りたのも、86を借りたのも、購入前の決心の為にコペンを借りたのも全部ここです。大変お世話になりました。


S15も当然のようにラインナップされており、グレードもやはりというべきか一番人気のSpec-Rです。


「というわけで、シルビアに乗り続けるにせよ乗り換えるにせよ、『ターボがどんなものなのか』はちゃんと知っときたいと思いまして。ふと見たら次の休みの予約が空いてたんで、6時間コースで借りてみることにしました。暇なら大黒あたりまで一緒にどうすか」


以上が、シルビア(NA)に乗ってシルビア(ターボ)を借りにいくという、珍行動の経緯となります。


同排気量で、違いはターボの有無とそれに伴うチューニングのみ、という二車の比較は中々に出来ない体験だと思いますし、せっかくなので書き残しておこうと思います。



おもしろレンタカー野田店。

 

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「大黒パーキングかな?」

「変な笑いがこみ上げてくるね、この車の並び」

 

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しれっと置かれているランボルギーニガヤルド。異彩を放っています。


スタッフのおねーさんが案内してくれます。シルビアに乗ってシルビアに乗りに来た新山に特に突っ込むことはなく、ただちらっと新山のオーテックに目をやっては「私の15とホイール一緒です」なんてことを話しており、「やっぱそういう人が働いてるとこなんだなあ」としみじみ感じ入ります。

 

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「こちらですね。操作方法は…、多分大丈夫ですよね」

「まあ同じですからね。ETCの場所だけ教えてもらえます?」

「運転席側右手、ブースト計の下です。あとは、バックミラーのところにドラレコが付いてますので、そちらには触らないようにお願いします。雨が降ってますのでアクセルは急に開けないようにしてください。ターボですし、ガバッと開けると空転することもありますから。それではお気をつけて」


……


野田店は住宅街の真っ只中にあるので、通りに出るまでは細い路地を抜けていきます。微速前進しながらファーストインプレを話し合う新山とナビシートの私。


「こうして徐行に毛が生えたレベルで動かしてる限りじゃ、特に何も変わらないね」

「まあね。でも普段と同じ車ってのは、こういうとき助かるな。車両感覚も同じだし、エアコンの操作とかもブラインドで出来るから運転に集中できる」

「欲かいてGT-Rとかにしなくてよかったよね……。にしても、運転席はステアリング違ったりシフトレバー変えてたりするから諸々違うんだろうけど、助手席の光景はあまりにいつも通り過ぎて不思議な感じ」

 

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いつもの光景。


「運転席は、あとシートの違いがデカイ。おれのレカロに換えてるから、久しぶりの純正シートなんだけど……、うわ、後方確認がしやすい」

バケットシートってやっぱり後ろ見にくいの?」

「ちょっとね。こうして久しぶりに戻ると、違いが分かるくらいのレベル。あとは、膝が余る。体制が崩れるから長く運転してると腰か背中にきそう。改めて比べると、レカロってしっかり固定されてたんだなあ」


そうこうしてるうちに大通りに出ました。右折して加速します。


「すごい! 前に進む!!」


身も蓋もないインプレです。

 

「このくらいの速度域だと助手席じゃよくわからないんだけど、違うもんなの?」

「違う。3,000~4,000rpm弱でシフトアップしても、普段より前に出る。このくらいだとまだターボの影響じゃないだろうけど……、うわー、そうかー、こんな感じかー」


往路にて、「今日1日でターボ狂になって『NAのシルビアなんてシルビアじゃないでごわす』みたいに言い出す人間になっちゃったらどうしよう」と戦々恐々としていた新山さんですが、最初の感触は上々のようです。へー、ほー、と声を上げながら一般道を進んでいきます。


「気に入ったみたいだけど、ネガの方はどうなの?  ターボはアクセル操作の反応、ワンテンポ遅れるっていうけど……」

「立ち上がりが遅れる感覚はたしかにあるね。踏み込んだときも、アクセルを抜いたときの反応もNAより遅いと思う。ーーただこれ、オーテックバージョンがわりとタイトだってのはあると思う。オーテックは軽量フライホイール入ってるから」

フライホイール?」

「クランクシャフトの回転を安定させる為の緩衝材円盤みたいなもん。これを軽くすると、まあ間違いなくエンジン回転数に対する反応はタイトになるわけですよ。梁井のコペン、アクセルの反応遅いって感じある?」

「特別には感じたことないね」

「それはターボの挙動が穏やかだからだと思う。シルビアも比較的穏やかなターボとは言われるんだけど、おれの場合、やたら軽いフライホイールが入ってる車に四六時中乗ってるから、尚更に『反応が遅い』って感じるのかな、と思うね」

「ははあ。じゃあ、やっぱりNAの方が扱いやすいのかね?」

「それがそうも言えなくてさ。少なくともおれが感じた限りだと、一般道で流す限りはこっちの方が楽だと思う。アクセルの反応が鈍いってことは、それだけダルな操作しても挙動が安定してるってことでさ。車の動きががギクシャクしないんだよ。疲れてるときなんか、アクセル操作が雑にならざるを得ないときとかあるじゃない。それこそ長距離ランの帰りの一般道とか……、そういうときは、絶対こっちの方が楽だと思うよ」


野田店から一番近いインター、常磐道の首都高寄り、流山インターに入ります。


「入ったね。安全運転でお願いしゃす」

「はいよ。加速しまーす」


キュイーン。


「おお」

「おおおおおおおお」


合流。さらに流れを見て追越車線に入り、何台かをやり過ごして、走行車線に戻ります。


「ち、違うね」

「うん、ただ、これはなんとも……」


運転席も助手席も感じたことは近しいようで、互いの感想を交換します。


ダッシュ力は間違いなくこっちのが上だわ。超速い。ただ……」

「2速でリミットまでぶん回したときの加速感はオーテックのが上だよね」

「だと思う。いやー、一般に言われてることの感覚が分かったわ」


曰く、


「トルクバンド問題だよね。比較的低回転からガバッと立ち上がるのがターボで、回転が上がってからの盛り上がりはNAの方が上。だから、上まで回した時の気持ち良さはNAだっていう」

「だと思う。最初のダッシュ力はびっくりしたけど、5,000rpm後半からの加速が伸びないから、総合的なダッシュ力はオーテックに比べてダルく感じた」

「単純だけど、よく書かれてる通りなんだね。ターボは中回転域からのダッシュ力、NAは回したときのリニアな反応かー。なるほどねー」


続きます。

 

新山、シルビアからの乗り換えを検討する。

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北海道から帰って1ヶ月ほど経ったある日。「暇ですか」とのメールに応じて新山氏の実家まで出向くと、庭が上記の写真の状態でした。


「何ですかこれ」

「笑’s・コンパクト焚き火グリル・B6君。焚き火台だね」


当時まだゆるキャン△がアニメ化されていない、2016年9月の話です。私は目を疑いました。


「小さくね?  こんなんで焚き火出来るんですか」

「できる。しかも折りたためるんだよこれ。ライダー御用達の小サイズ。こないだの北海道旅行で、インテさんが使っててさ。『いいですね』って話したら、『貸してやるから、しばらく使って気に入ったら買うといいよ』とのことでお借りしました。余った炭もあることだし、肉でも焼いてテストしようと思ってさ」


笑’s。埼玉県の誇るキャンパー兼板金屋さん、高久笑一氏による焚き火台ブランドです。耐久性と簡易組立性、収納性を突き詰めた小型焚き火グリル、A-4君・B-6君がメイン商品。2018年にゆるキャン△とのコラボモデル、「B-6君・リンちゃんのYAKINIKUセット」が発売されて話題になりましたが、それ以前からキャンパーの間では名品と評判になっていたようです。

 

笑’sホームページ

http://www.sho-s.jp


「成り立ちが国内ギタールシアーみたいだな……」

「あー工房モノのギターみたいな?  分かる気はするね」

 

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実戦投入時の写真。サイドから見たロゴがよいです。

 

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近所のスーパーでビールと肉を買い込み、炭と着火剤を投下。少しばかり涼しくなった庭にキャンプ用の椅子を出して、焼肉を開始します。


ちびちびと肉を焼きながら、「結構火力上がりますねこれ」「設計がいいんだろうね、下から空気入りやすくなってるし」などと感想をまとめていると、ポツリと新山さんが話を変えてきました。


「そういや、最近、バイク降りようかと思っててさ」


なお、この一年後にホンダ・CB400からホンダ・ゼルビスに乗り換えている上に通勤もバイクになる新山さんですが、それはまた機会があれば書き記します。


「唐突だね」

「北海道から帰って、やるこたあやった感が出てきてね。元々おれ、どっちかっていうと車派の人間で、バイクに興味出たのって大人になってからだしさ。これから先、バイクに掛かってる時間と金を車に投下した方が、密度濃くなるんじゃないかって思い始めてきまして」

「『選択と集中』ってやつですか。そうなるとシルビアに投資すんの?」

「いやー実はそこもねえ」


言い澱む新山さん。今回の本題に突入します。


「最近、他の車が気になり始めて」

「……といいますと?」

「この先、いつまで好きな車に乗れるんだろうって考えちゃうんだよね。維持費と利便性、ましてこの先子供なんか出来たら、日常使いで乗ることとチャイルドシートのこととか考えると、4人乗れるとはいえ、2ドアでMTのシルビアってわけにもいかないでしょ。ーーしかもおれ、最近遠出増えてるんだよね」

「キャンプ始めたし、旅行にも行ってるね。冬なんか結構あちこち出かけてたでしょ。こないだ、真冬の月山に温泉入りに行ってなかったっけ」


しかもシルビアで。よくスタックしなかったなとつくづく思います。


「そう。そうなんですよ。となると、荷物が詰めて、安楽に走れて、雪の深いとこでもどこでも、懸念なく突き進める車がいいなあと思うようになりまして。ーーシルビア、特におれのオーテックバージョン、街乗りだとどちらかというとダルな車だからね。低速のトルクないんですよ。ターボのスペックRと比べると、NAのシルビアはギア比も全然違ってさ。あっちの方がトルクもあるし。ぶん回せば別だけど、ある意味コペンの方がキビキビさは上だと思うよ。……おれのシルビア、高速で6速巡行の状態から加速できないからね」

「そういえば、坂に差し掛かるときわりと5速にシフトダウンしてるよね。ーーとなると、これ以上バイクにかける金があるのかと?」

「そういうことです。まずは車に振り切るところからかな、と。あ、実はこないだ、ラパン試乗してきたんですよ」

「軽じゃん! 高速巡行とトルクの話はどうなった!」


シルビアに乗ってる人間がラパンを見に行くことがそもそも稀有だとも思います。


「いやー、維持費考えると、まず候補に上がるのは軽かなと。家族できたら乗るのおれだけじゃないしね。特に最近の軽は高速もそれなりに走るし。それに、結構侮れないよラパン。初代のSSグレードなんか元気いいって評判だったからね」

グランツーリスモにも出て来てたね」

「5ね。それに現行ラパン、Gグレードだとミッションが5速AGSってやつなんだよ。機構はマニュアルと一緒で、クラッチとシフト操作をオートでやるタイプ。おれCVT苦手なんだけど、これなら挙動も違和感ないんじゃないかと思ってさ。しかも軽い。650kg。シルビアの半分弱だぜ。絶対楽しいでしょ」

「元がアルトだもんね…。新型のアルトならおれも会社で乗ったけどよかったよ。キビキビしてて。で、どうだったの?」

「案の定よかったです」


どうもこの男、別にスポーツカーが特別好きというわけではなく、工業製品として車全般が好きなようで、シルビアとラパンを同列に並べて語れる辺りやっぱり面白い思考構造をしてるなと思います。


「あと、コペンも見に行った」

「え。ひょっとして同じとこ?」

「そう。すぐそこのダイハツ。案内してくれた人も同じだったみたいで、地元の友達が乗ってるって話したらすぐ分かったよ。念のためシルビアの下取りも見てもらったんだけど……、珍モデルとはいえ、やっぱりターボ付いてないと人気ないみたいでさ。『私も昔シルビア乗ってたんですが、乗れるうちは乗っといた方がいい』って言われた。そりゃそうだよね」


候補車のチョイスの訳がわかりませんが、聞く限りラパンは「長く乗ること」と「楽しさ」のバランスを考えて絞り出した選択肢であり、コペンは「維持費とリセールの強さ」を踏まえて「短期所有のファンカー」に振り切って出てきたものと思われます。結構よく考えています。


「ただまあ、一番気になってる車があってさ」

「何」

「サファリ」


またえげつない車が出てきました。

 

「エクストレイルのお化けみたいなやつか」

「すごい言い方するね。サファリの方が歴史全然古いんだけどね」


日産サファリ。トヨタランクルと並び称されるオフロードカーの筆頭格であり、今では絶版となってしまった大型四輪駆動車です。山岳救助隊が愛用している、紛争地帯でゴリゴリに使われている、サスペンションからしてトラックやらジムニーやらと同じリジットサスである、などなどから分かる通り、昨今のSUVブームとは一線を画する「走破性全フリ」という性質の車です。


「一番ヤバいけど一番納得感のあるチョイスだね」

「でしょ。大排気量。有り余るトルク。図体のデカさ。走破性。欲しい要素は全部満たしてる。完璧です。問題は燃費と税金だけだね」

「何リッターあるの排気量」

「4.8L」

「4.8L」

「ついでに燃費は4とか5Km/h」

「存在がアメ車じゃん」

 

男の夢である「スペックで笑いが取れるタイプの車」のようです。

 

「用途を考えるとそんなにおかしなスペックでもないんだけどね。今のSUVと比べるとたしかに諸々デカイと思う。ロマン枠であることはたしかだね」

 

ほしいのは最終モデルである3代目のY61型、4.8Lガソリンエンジンモデル、デフロック付きの仕様だそうです。維持費は単純計算でシルビアの倍。そりゃあバイク離れを考え出すのも分かります。

 

「なるほどね。……でもまあ、デカくて安楽な車ほしくなるのは分かる気がするなあ。近場のドライブスポット粗方行き尽くしたせいか、年々一回辺りの航続距離が伸びてるもんね」

「関東圏なら『ちょっとそこまで』って感覚は付いてきちゃったよね」

「そうそう。こないだの北海道も、青森から東北道使って自走で帰ってきたんだけど、やっぱりコペンじゃ少しキツかったんだよ。100km/h巡行しようとすると4,000rpm近く回るからやかましいし、休憩しようにも2シーターだからシート倒せないし。A3みたいに、クルコンでも付いてれば500kmくらい安楽に走れるんだけど」

「マニュアルじゃそうもいかないしねえ。ーー『年をとるとゆったりトルクで走りたくなる』って車レビュー記事、昔からよく読んだけど、あれってホントなんだな」

「体力の低下と行動範囲の拡大ですかね」

 

こういうときに年をとったなあとしみじみ感じます。趣味嗜好の変化というか拡大。食い物の嗜好とかもそうですよね。

 

「ただまあ、普段使いじゃ間違いなくコペンが一番楽しいと思うんだよね」

「それ。多分シルビアもそう」

 

新山は、シルビアの場合は街乗りのトルク不足があるからまた少し違うと思うけど、と付け足した上で、

 

「おれも、峠道なんか走ろうものなら『やっぱりシルビアがよかったなあ』ってなるんだろうしさ。その辺はホント選択だよね。いやでもサファリほしいよサファリ。ああいうどデカイ車でのんびり走るって感覚味わったことないしさ。あれはあれで楽しいんだろうなあ。気になるなあ」

 


オチから言うとこのしばらく後、謎のエンジン息継ぎ現象の解決の為にO2センサー交換に手を出したことをきっかけとし、新山氏はやっぱりシルビアをいじり続けることになり、足回りのゴムブッシュを全交換し、タイヤをミシュランに換え、オーテックバージョン対応マフラーをヤフオクで競り落とし、ロールバーを増設し、シルビアはその性能(主に直進安定性と運転手のやる気を高める気合い度)を着々と上げていくことになるのでした。

 

そうこうしつつも、他の車への興味は完全に消え切らないようでして、主に「常用回転域でのトルク感」を軸にあれこれと車の物色を続けていくことになります。次はそんな中、「NAのシルビア乗り」にとって避けて通れぬ「ターボ」についてのお話です。


続きます。

大学の先輩製作クラシックギター試作4号機.

大学の先輩製作クラシックギター試作4号機.


大学時代の先輩から譲ってもらった、自主製作クラシックギターの試作4号機です。

 

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やや小さい、薄型のボディーサイズ。心持ち低めの弦高。製作者の先輩曰く「おまえどうせクラシック弾かないだろうから薄めに作った。ボサノバとか合うと思う」とのことです。卒業前のソロ会はレイ・ゲーラ弾いたんですけどね…。そのあくる日。


ただまあ先輩の読みはドンピシャで、もっぱらボサノバ系のバッキングとソロフレーズで活躍しています。ミッドが控えめでありながら、ハイとローが主張するクッキリした音で、ボーカルと合わせると互いの音がよく聴こえて激烈に心地いいです。ミッドはマイキングで調整すりゃいいという思想。


弦高低めなので変に強く弾くとバチバチ言いますが、芯を捉えて弾くと中々に太い音も出ます。おかけまで右手に気を使うようになりました。ボサノバ伴奏時、ボーカルさんからは「爪弾いてる感じがあって良い」と言ってもらえたで、自分としては及第点以上です。


ソロフレーズを弾くと、アタックが際立ったカキクケコの発音が目立つ音がします。所謂「ガット」感のある音で大変気に入っています。アタックを効かせても耳に痛くなりにくいのがガットの利点だと思っているんですが、まさにそんな印象です。とても良いです。



わりとシンプルなギターが好みな私ですが(000-18やLowdenなど)、このギターを始め、クラシックギターは繊細な装飾が多くて素敵だなと思います。

 

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サウンドホール。縁取りが美しい。

 

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ペグ。よく見るとサイドの彫り物が細やかです。どんだけ手間かかるんだこれ…。ヘッドにもサイドバックと同じ突き板が貼ってあるんですね。

 

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指板はエボニー。黒々として綺麗です。

 

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ボディー外周。エレキギターでういスクレイプドバインディングみたいで独特の色気があります…。

 

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ブリッジの装飾も細やかです。

 

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トップ材はスプルース系、サイドバックはローズウッド系でしょうか。ネック材はマホガニー。明るいスプルーストップが好みなのでこの仕様は嬉しかったです。

 

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弦はサバレスを使用。クッキリハッキリした音質特性を活かすことと、弦高の低さからテンションを稼ぐことが目的です。相性はいいと思います。


こうして改めて眺めると、製作者の先輩の美観が随所に出ていることに気づいて懐かしくなってしまいました。


柔らかで飾らない人柄ながら内面が激情家で、音色は暖かいのに演奏は力強い、芸術家そのままの二律背反を持ちながら部内の誰からも好かれている先輩らしい、声高に主張しない、最強に美しいギターであります。



大学卒業後、久しぶりにOBで集まって合奏練習をしていたある日の休憩中、先輩から「梁井くんギターいらない?」と声をかけられました。


突然何やらと思いつつ「ほしいです」と答えたら、続いて出てきた台詞は「おれ最近ギター作っててさ」とのこと。


『おれ最近ギター作っててさ』


何ともパンチのある台詞だなと思いつつ、この人ならやりかねないと納得もしながら話を聞いてみると、この先輩、数年前から「弾くより作る」にハマり始めたようです。


卒業後、働き始めて貯めたお金を投入して木材と機材を購入。試作に一本、自分用に一本、ギターを始めたいという友人に一本製作し、直近の一本は趣向を変えて「小さめ薄型のボディーでフラメンコギターに近いやつ」を作ったとのこと。作った後で「さてこれをどうしよう」と悩んだところで、合奏の練習日、休憩時間中にエセボサノバを弾いて遊んでいた私を見て、「こいつに渡そう」と目をつけてくれたそうです。


この先輩、ズバ抜けた音色と表現力と情熱と人柄でサークル内の誰からも好かれていた人でして、この人が作ったギターならぜひにもと、二つ返事で答える私。「いくらでしょう?」と尋ねたところ、


「代金はいらない、できればたくさん弾いてほしい」


次の練習日、先輩が持ってきてくれたギターを見て「きれいなギターだ」と息を呑みましたが、細部の装飾の美しさに気づくのはそれから数年弾き続けた後になります。弾いてみた感触は上々で、ボディーの小ささと弦高の低さから来るハイ寄りの傾向はあるものの、今まで使っていたギターとタイプが違うこともあり、これを使いこなしてみたいと思える音色でした。


「長くたくさん弾いてほしい」という先輩の言葉も頭にあった為、ナイロンギターはこれ一本に絞ろうと、それまで使っていたクラギを手放すことを決意。部員が増えてギターが足りないという、母校のギターアンサンブルサークルに予備ギターとして寄贈することにしました。アストリアスの入門ギターでしたが鳴りもよくいいギターだったので、今でも弾いてもらえているなら嬉しいです。


それから3年間、合奏サークルでゴリゴリに使い倒させてもらいました。



合奏サークルもメンバーの結婚や出産で休止状態になり、私もエレキに移行して、しばらくケースにしまわれていたこのギターですが、3020 SOULSで一緒になったrucaさんから「ボサノバをやろう!」とのお誘いをもらい、久しぶりに陽の目を見ることになりました。


コンデンサマイクを使った生ギター録音は初めてで、録り音にDAW上でエフェクトをかけたのも、思えば今回が初めてでした。諸々幅を広げてくれたギターだと思います。


「長くたくさん弾いてほしい」と話していた先輩に応えられたことが、このギターに関して一番の喜びです。これからもよろしくお願いします。

G&L Tribute Series LEGACY (Mod).

G&L Tribute Series LEGACY (Mod) Rosewood Fingerboard / Lake Placid Blue.


手持ちギターで一番の古株、G&Lのストラトキャスタータイプです。

 

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改造及び調整、ハンダの実験台として使っていますが、中々どうして基礎力の高いギターに仕上がって来ました。

 


G&L Tribute Series LEGACY (Mod).


ピックアップをSeymour Duncanに、ジャックをスイッチクラフトに、トーンポットをCTSに、コンデンサをオレンジドロップに交換してます。「交換したらどうなるか」を音で録っときゃ良かったんですが、途中から「てめえで交換することに意義があるんだ、てめえで交換すればその分音が良くなるんだ」みたいな思考に陥り記録を取ることを放棄。最近はなるべく自分で作業できるようになろうと、練習台であれこれ弄り回されているギターです。

 

ピックアップ交換のおかげで、フロントは出力高め、センターはスタンダードなシングルコイル、リアがPAF系のハムと、わりと特徴的な音になっていて使い甲斐があります。


 

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元々の姿はこんな感じです。一見普通のストラトに見えますが、晩年のレオ・フェンダーの拘りなのか、要所要所が謎の仕様になっています。

 

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まずブリッジ。2点支持のシンクロトレモロユニットですが、支持部分にフェルト布のようなものが噛ませてあって、ベタ付けに出来ないフローティング専用ユニットになっています。


形状も独特で、ヘッドと相まって「あ、ジーエルだ」と一発で分かる仕様です。

 

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続いてトーンコントロール。トーン部分はローカットとハイカットになっていましたが、こいつの挙動が本当に謎で、所謂Cカーブ的な動きをします。途中まで効きが分からず、急にガクンと帯域がカットされる感じでした。


本格的に弾くようになってからすぐにAカーブのトーンコントロールに換えてしまったので、今触ればもう少し狙いが分かるかもしれませんが、初心者が一発目に買うギターとしては何とも難しいコントロールじゃないかと思います。


で、諸々の改造を経た現在の姿がこれです。

 

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最初に換えたのはリアピックアップ。Seymour DuncanのTB-4 JBに換えてます。

 

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当時ピッキングの強弱という概念が頭になく、シングルコイルのリアピックアップの何をどうすれば良い音が鳴るのかがさっぱり分かりませんでした。おまけに、店で見かける高いギターは軒並みリアにハムが載っていて、それならせめて見た目だけでもそれっぽくしようと決心。ブラックのオープンタイプのハムバッカーを物色し、手に入りやすくて情報も多い、ダンカンSH-4のトレモロギタータイプ、TB-4を購入しました。

 

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G&Lは所謂弁当箱ザグリのボディーでしたが、ハムを載せるには深さが足りずに木部の加工が必要だったので、大人しくショップに頼むことに。持ち込み先は浅草のネイキッドギターワークスさん。エフェクターレビュー好き御用達、フジコ・オーバードライブさんのブログで知ったリペアショップです。以来、自分じゃ出来ない作業はここにお願いしていて、隣のトンカツ屋で激烈にうまいトンカツ食べて帰ってます。胡椒が効いてて超うまいです。


ついでに緩みがちだったジャックと、例の謎コントロールの問題も片付けてしまおうと、ジャックをスイッチクラフトに、トーンポットをCTSのAカーブに、コンデンサをオレンジドロップに換えてもらいました。この辺、音にどう影響があったのかは不明ですが、使いやすい普通のギターになってくれたのはたしかです。なお、ボリュームポットはMightymiteの250KΩAカーブのままです。


その後、フロント・センターピックアップの交換と諸々の調整は自分でやりました。

 

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※配線の雑さは何卒ご容赦ください


リアを換えてみるとフロント・センターの線の細さが目立ったので、同じくダンカンで統一してみようと思うに至り、イシバシの御茶ノ水U-Boxでピックアップを物色。ちょうど気になっていたSSL-1とSSL-5の在庫が1つずつあったので、センター用、フロント用にそれぞれ買って帰りました。ついでにフェルナンデスの半田ごても合わせて購入。自分で取り付けてみることにしますが…


ここでピックアップ取り付けあるある問題に直面します。磁極と巻方向の問題です。


取り付けを終えて音出ししてみたところ、フロント・センターのミックスポジションが「ミッドがスカスカなシングルコイル」みたいな音になっており、配線間違ったかなと見返してみても正しい配線向きのはずで、こりゃどうしたもんかとアレコレ調べてみたところ、以下の2つのことがわかりました。


①ピックアップには「巻き方向と磁極」がそれぞれある

②ピックアップ単体で売っているものは磁極と巻き方向が買わなきゃわからないこともある


んなバカな!と思いきやどうもマジらしく、テスター使って調べないとどっちがどっちだかわからないこともあるようです。一万円以上する品物でそりゃ業界的にどうなんだと甚だ思いましたが、大学から社会人にかけて学んだことに「世の中は意外と不親切」「知識と下調べをもってして当たらないと大体失敗する」の2つがあり、反省。ここから試行錯誤が始まります。


最終的には、


①センター・リアのハーフトーンは綺麗に鳴っている(ついでに多分ハムキャンセルされている)

②フロント・センターがフェイズアウトしている


のだとしたら フロントを逆配線すればいいんじゃないかというツイッターでのアドバイスに従い決着しました。Xystさんありがとうございました。なお、フロントを逆配線することによるフロント単体での音の違いは試した限り感じられませんでした。ネットで調べた限りでも、単発で使用する分には特に影響がなさそうです。


というわけで、このギター、フロント・センターはノーマルのハーフトーン、センター・リアはハムキャンセルのハーフトーンとなっている状態です(多分)。この辺、ちゃんと理解してまとめてみたいもんです。

 

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続いて苦戦したのが、トレモロの調整と弦高の問題です。


これ、分かってしまえば実に当たり前の問題で情けないのですが、しばらくの間「このギターやたらネックが動くなあ」と思っていました。


私は基本10-46ゲージの弦を使ってるのですが、このギターは実験がてらあれこれゲージを変えており、09-42から10-46やら10-52やらに変えたり戻したりすることが多く、そのたびに弦高が高くなったり低くなったりで、「なんだよもー」とボヤきながらグリグリトラスロッドをいじっていました。


後から考えればなんてことはない、それは弦のテンションでトレモロユニットのブリッジが浮き上がったり下がったりしていただけで、ネックは思いのほかタフであり、ロクに動きもしていないものをロッドを無駄に動かしまくっていただけでした。すまぬジーエル君…。


10-46に戻した際、いくらブリッジを下げてもどうにも弦高が高いままで、「おかしい、いくらなんでもそんなすぐにネックが反るとも思えない」となってようやっと、09-42のときよりブリッジが浮き上がってることに気づきました。いそいそとボディー裏、トレモロユニットのネジを締めこむ私。情けないですがこういうアホみたいな経験を踏まないと構造が理解できないド文系の極みです。

 

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最後にネック周り。ヘッド側からトラスロッドを弄るタイプのギターは、ネックエンドが少し寂しいですね…。指板のラディアスは12Rらしい。


 

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他のギターは「こういう音を求めて買った」「こういうイメージなのでこういう使い方をしてこういう音を出そうとしている」という話から入っているにも関わらず、こいつの場合は「どこをどう改造してどういう苦労があった」という話に終始している辺り、付き合い方がよく分かります。実際、ギターの構造やら弄り方やらはこのギターで知れました。感謝してます。


元々はジョン・メイヤーに憧れて、シングルコイルの「弾ける(ハジける)ような音」がほしくて買ったギターです。


その後、「イメージするフロントシングルの音はフェンダーで出せる」「モダンでクリアはフロントシングルはタイラーで出せる」となった現状から、「それならこいつは出力高めのフロントシングルにしよう」と、フロントをSSL-5、センターはシャキシャキ感を狙ってSSL-1にするに至りました。


フロントで音が厚いなあと思ったらボリュームを絞るか、センターに切り替えるかで対応してます。こういうキャラクターが明確に違うフロント・センター・リアの使い分けも結構楽しいもんです。

 

もっぱらリアハムでアニソン弾く用として使っていたギターですが、今度タイラーともフェンダーと比べて「分かりやすく違う音が出るギター」として、クリーンクランチでもあれこれ使っていきたいと思います。

 

 

ちなみにボディー裏のステッカーは、高校大学時代によく聴いていた邦楽バンドのステッカーです。

 

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SpitzGoing Under GroundGrapevinethe band apart、he。

 

大学からどちらかというとトラッドな音楽を聴くようになった私ですが、「昔好きだった音楽をたまに聴くと昔の情景を思い出して良い」と思い、机を引っ掻き回して高校から取っておいたステッカーを引っ張り出し、こいつにペタペタ貼ることにしました。たまーにボディー裏を眺めては郷愁に耽っています。