1st EP『AKIHABARA - EP / Tender Heart Craftworks』
このたび拙作7曲入りクリーントーンギターインストゥルメンタルEP『AKIHABARA - EP / Tender Heart Craftworks』が無事配信されました。
涼しい夜に晩酌で呑むレモンサワーみたいな仕上がりになったと思います。下記リンクから各種サブスクで聴けますので、よければぜひご一聴ください。
https://big-up.style/vCEX3jaiSh
AKIHABARA-EPと言いながらジャケットの場所は渋谷のスクランブル交差点で、裏ジャケットの写真は浅草の名プリン店、浅草シルクプリン隣の電柱です。この辺りは雰囲気です。
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配信代行サービスはBIG UP! のフリープランを使いました。その名の通り完全無料です。
各曲の録音経緯については個々に記事がある為ここでは割愛しますが、『シンセパッド、ベース、TR-808で作ったビートの上でストラトを弾きまくったやつ』が4曲、シンセオンリーのエレクトロニカが1曲、アコースティックのソロギターが1曲、ブルースソロギターが1曲と、わりとバリエーションは豊かと思います。
ジャンルは、自分ではヒップホップビートが一番近いと思いますが、よくわからないまま登録上はロックとしました。友人からはネオフュージョン認定していただけたのが嬉しいです。
この記事では、曲さえ出来上がっていて、己の恥部を世界に晒す決心さえ付けば今の時代いかに配信が簡単か、配信開始までの流れなど、EPの形にして世に出すことになった己の経緯を、思い出がてら残しておこうと思います。
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いつものようにレモンサワーで晩酌しながらTLを彷徨っていたところ、エイベックスによる配信代行サービスBIG UP! にフリープランがあるとのツイートを発見。
「無料かあ…」としばらく逡巡してしまいました。配信代行は年間手数料がかかると思い込んでいたからです。
録り溜めたトラックが増えてきて、「そろそろアルバムにしたら?」という声を友人からもらいながらも、踏ん切りがつかないまま迎えた2021年9月。これまで腰が上がらなかったのは、「これを配信してよいのか?」という自信の話は置いておくとして、単純に金がかかるからです。
何はともあれ無料です。その分還元率は低く、ダウンロードは販売額の50%、ストリーミングは受領額の70%とのことですが、いただけるものなら十分ありがたいものです。
必要なものを調べたところ、『1,600×1,600ピクセル以上のジャケット画像データがあればよい』とのことで、PENTAX K-70で撮り溜めた写真から良い感じのものをチョイス。本名をもじったソロ名義とアルバムタイトルを30秒程で決定し、ジャケットを作成しました。
ジャケット作成はCanvaのスマホアプリを利用。ここが一番時間がかかったと思いますが、それでもデザインさえ固まってしまえば15分〜30分で作れると思います。
トップ画面右下の+マークを選択。続く画面で、1,600×1,600はフォーマットにない為、カスタムサイズを選択します。
私は適当に2,000×2,000に設定しました。最低サイズも気になるけど、あんまりデカイと支障があるかなと思った為です。
あとはこんな感じで画像をアップロードしたり、テキストを打ち込んだりして、ドラッグで位置を決めていきます。パワーポイントみたいにグリッド自動調整をしてくれますし、等間隔配置も設定できるのでありがたい。
最後に配信代行サービスにアカウント登録をし、アーティスト情報、商品情報を入力、曲をアップロードして、ジャンルなり何なりを打ち込んでから配信登録をかけるだけです。
恐ろしいことに思い付いてから30分ちょっとで配信登録まで辿り着きました。こういうのは逡巡したら終わりなので一気に行けて良かったと思います。凄まじい時代になったものです。
ちなみに、払い出しに必要な銀行口座やPayPalアカウントの登録は、配信登録の段階では必要ありません。あくまで払い出しをする際に登録すれば良いようです。この辺りも気楽です。
配信は3週間弱かかる一斉配信でなく、準備が出来次第の配信を選択。理由は単に待ちきれなかったからです。それでも、大体1週間ほどで一通りのサブスクで配信されていました。早いものです。
配信登録から概ね2日で申請が通り、ステータスが『配信』に切り替わりました。まずはLINEミュージックから、その後2日でApple Music、翌日Spotify、その翌日Amazon系で配信が開始。大体皆さん使われてるのはこの辺りだろうと、Amazonが確認できた時点でTwitterで宣伝を始めました。
一つ注意点としてタイトルに『EP』を入れると審査が落ちる場合があるようです。
全部で20分ちょっとの長さなのでEP扱いだろうと『AKIHABARA - EP』のタイトルで登録したのですが、2日後に「EPの長さだとこっちでEPを末尾に入れるのでタイトルに入れるな」という旨の通知が届きました。
これを機にとマスタリングし直し、音圧をぶち上げ、タイトルからEPを外して登録。すると配信されたタイトルは『AKIHABARA』となっていました。
なんだよ!とは思いましたがジャケットにEPと入っているし問題はなかろうと気にしないことにしました。この辺りは謎です。
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何かしら形に残したかった気持ちは昔からあったので、こうして発信できたのは我ながら嬉しく思います。
何より、聴いてほしかった方々に「よかった」と言ってもらえたのが嬉しかったです。ツイッターの音楽仲間から感想をもらえたり、昔の友達が連絡をくれたり、反応が見られるのはやっぱり嬉しいものだなと。
特に、トラックメイカーの方々からギターが良かった、ギター好きなのがよく伝わったと言ってもらえたのは「作ってよかったな」と率直に思いました。トラックを作り始めた最初のきっかけは好きなギターの音の記録だったので…。
なお、ソロ名義のTender Heart Craftworksは本名のもじりで、裏ジャケットに添えた梁井優樹の名前は完全に偽名です。山田淳と瀬葉淳とNujabesみたいなものだと思っていただければ幸いです。和名表記で文字映えする名前を付けたかったという。
James Tyler Classicを1年弾いてみて。
James Tyler Classicを買ってから、早くも1年が過ぎました。
愛用しまくっています。これしか弾いていないということはありませんが大体こればっかり弾いています。完全にファーストチョイスです。
3Sピックアップの状態で購入し、当初の目的通りフロント・センターをSuhr ML Standardに、リアをSuhr Thornbuckerに換装し、SSHで1年使ってきましたが便利です。持ち替えの必要がありません。
各ピックアップの音は上記の通りです。クリーンがスッキリしてて使いやすい上に、タッチでそこそこ太くも鳴らせます。エフェクト乗りも良く、そこそこ歪ませてもギャンギャンと食い付いて来てくれます。
何が良いかって、「自分にとってはこれ一本で全部出来る」ことなんですよね。
フロントのやや雑味のあるクリーントーン、センターのカッティングやアルペジオ、ハーフトーンでの和音やソロでのアクセント使い、そして歪ませたときのリアの食い付き。
フロントに関しては「ストラトの形をしていてストラトのピックアップが付いていれば全部ストラトの音がする」と思い込んでいる節があるのですが、SSHに起こり得る問題である『リアをハムバッカーにしたときの、「妙に出力強いなこのリア」という感じ』を何とかできないものかというのが、James Tyler JapanのStudio Elite HDを使っていたときの悩みの種でありました。
そこでこいつです。
トラッド系ギター弾きが一度は通る「ストラトとレスポールの音を持ち替えずに切り替えて出したい」という欲求を、こいつはかなりの満足度で叶えてくれます。
異論を恐れず乱暴な言い方をすれば、Thornbuckerのリアはレスポールの音がします。
どクリーンで鳴らしても「出力高めなテレキャスかな?」というような、ややスッキリしたハムバッカーの音で、歪ませるとゲイン感がピッキングに食い付いてくる感じが、レスポールのイメージに近いです。多分ですがピート・ソーンとSuhrは『ストラトボディーにマウントしたときに』レスポールのPAFに近い音がする、というイメージでThornbuckerを開発したんじゃないかと想像しています。
SuhrのClassicを弾いたときのに印象があまりに良かったので、Tyler Classicの3Sで好みの竿が出たらピックアップ全部Suhrにしてやろうと思っていたのですが、1年使って改めて正解だったと感じています。
フロント・センターの音は飛び抜けて特徴があるわけではなく、ややスッキリ目のストラトの音ですが使い勝手が良いです。
ハイパスも付いているので、もうちょっとクリアにしたいときはボリューム絞ってコントロール出来ればと思っています。隅から隅まで使い倒していきたいところです。
PENTAX K-S1スナップ記録
K-S1で撮ったスナップ記録です。
上のは買って間もない頃、カメラ散策に出かけた等々力渓谷で撮った猫ちゃん。やたら猫だらけなスポットでした。
カメラを買って初めて撮った愛用の時計、ハミルトンのオート・カーキ。ぼかせるのが嬉しくてバシャバシャ撮ってました。
友人新山さんのスタッドレスタイヤ試運転で行った、群馬県の土合駅。カメラを買った翌日だった気がします。
シャッタースピード0.3秒を手持ちで撮ろうとする怖いもの知らず。
等々力渓谷の湧水。もっとシャッタースピード遅くすれば良かった。
以降バシャバシャと作例を載せていきます。
最初の猫もそうですが、被写体をアップできれいに写せるのが兎にも角にも嬉しかったのでそんなものばっかり撮っており、写真は主題副題と言いますが、私の写真は主題一発のものが多いようです。
好きに撮れてはいるので気に入ってはいますが、ブツ撮りに等しいので、今後はもうちょっとスナップらしく構図を確認していきたいところであります。
デジタル一眼レフカメラ『PENTAX K-S1』
コペンを買った2014年の暮れ、「出先でバシャバシャ写真を撮りたいな」と思い、衝動的にデジタル一眼レフカメラのPENTAX K-S1を買いました。
結果的に旅行先というより近場をふらつくときのスナップ用になってはいますが、気に入っています。用事のないときにカメラを持って徒歩で徘徊することが増えました。
旅行先はどちらかというとスマホでさっと撮るに留めて、デジタル一眼でしっかり撮るのは都内が多い気がします。東京は独特な景観が多くて歩いていて飽きません。
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K-S1にした理由は、①デザインがカジュアルで、②小さくて軽く、③ペンタックスだったからです。
2014年の発売直後だったこともあって、ヨドバシでガンガンに売り出されているのが目に入ったのですが、この白いボディーカラーがポップで惹かれました。カジュアルですよね。カメラにありがちなゴツゴツ感がなくて、素人にとっちゃ取っつき易くて手に取ってしまいました。
カラーバリエーションも豊富で、結構売れるんじゃないかなと思いきや、2021年現在中古市場では滅多に見かけず、ネットでもレビューをあまり見かけません。
それならば手前でレビューしてしまおう!と思い至ったのが本記事の引き金です。もし中古で見つけて気になってる方、エントリー機やサブ機としては最適だと思いますので買いましょう(圧)。十分な性能ですし、唯一足りないWi-Fi通信機能はSDカードリーダーを買えば補えます。
防塵防滴機能がない点は、雪山に登ったり砂漠を横断することでもない限り、そんなエクストリームな環境で使うことはほぼないと割り切った方がいいと思います。
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軽さについては、本体重量498g。K-70の628gと持ち比べても明らかに軽いです。最初の一眼レフとしては持ちやすくて良かったなと思います。
ペンタックスだから、という理由については、完全に直感です。ブランド名の気の抜けた語感とビジュアルが気に入りました。
緑の発色が良く、総じて防塵防滴性能が高い(K-S1は付いてないですが)ことから持ち歩きに適していることも決め手になりました。
とあるモデルさんから「ペンタキシアンには変態マゾが多いよ」と言われたことが今でも耳の奥で響いています。どんな情報源だ。
以降、シチュエーションごとの作例です。
適当な出先スナップがこんな感じです。全部キットレンズのDA L18-55mm F3.5-5.6AL。オートフォーカスが遅くモーター音がぎゃーぎゃーうるさいとあまり評判の良くないレンズですが、使っていて不満は全くないです。
スナップに近いですが車を撮ることが多いです。パーツを切り出して撮るのが楽しい。
↑モデル:雲丹さん
ポートレート。人を撮るときと、極端に暗い場所のときだけDA 35mmF2.4ALを使います。キットレンズに単焦点の明るいレンズが1つあればわりとどうとでもなると最近思います。
景色。超広角がほしいなあと思うこともありますが、後で見返すと大体焦点距離20〜55mmで撮っており、キットレンズで十分やんけ!となってます。
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取り立て不満なく使い続けていたK-S1ですが、足りない機能といえば前述の通り、Wi-Fiによるデータ転送機能と防塵防滴ボディーです。
撮った写真をアップするのに、一旦家に帰ってSDカードを読み込む必要があります。これに関してはカードリーダーを買ってきてスマホで読み込めばいいんですが、それだけの為に数千円かかるのもなあ、と買い損ねていました。エフェクターなら数千円とか「格安じゃん!」と試奏もせずに飛びつくのにね…。
防塵防滴も、だんだんカメラにハマってくると、アウトドアにガンガン持ち出したり雨の中で撮ってみたりがしたくはなります。
これも、K-S1で不具合が出たということはないので、普通に使ってる分には何の問題もないんでしょうから、どちらかというと浪漫と安心感の問題です。大人になると大排気量車に乗りたくなるのに近しい動機だと思います。
暗所の手持ちでも思いの外しっかり写ってくれるK-S1にとりたて不満もないまま6年が経過。
上記理由とカメラ熱の再燃と、付属キットレンズのあまりの優秀さから、2021年の夏、私はK-70を買い足すことになりますが、K-S1もサブ機として通勤リュックの中に放り込んであります。仕事帰りに撮りたくなったらサラリと撮れるのが嬉しい。
次に乗りたい車を物色する(BMW M235i)。
SLK55 AMGを買って以来、すっかりV8を讃えるマッドマックスの民になってしまった我が友人、ぽりぽりに触発され、大排気量FR車に目が行くようになってしばらく。
現実的な価格帯で手に入れられるハイパワー中古車を物色したところ、IS-Fに続いて、2台目に出て来たのはこいつです。
◯BMW M235i (6MT)
エンジン: N55B30A型 2,979cc 直列6気筒DOHC 24バルブターボ M Performance
ボディサイズ:全長 4,470 × 全幅 1,775 × 全高 1,410 mm
ホイールベース:2,690mm
トレッド:前/後 1.510/1.535mm
タイヤサイズ:(前)225/40R18/(後)245/35R18
車重:1,530kg
最高出力:326ps(240kW)/5,800rpm
最大トルク:45.9kg-m(450N・m)/1,300〜4,500rpm
変速比:(1~6/後退)4.110/2.315/1.542/1.179/1.000/0.846/3.727
最終減速比:3.077
最小回転半径5.1m
直列6気筒エンジンにターボ付き。コンパクトな4シータークーペです。
日本発売は2014年。ボクスターやらケイマンと同価格帯の、それもマニュアルモデルの新車がBMWから出た、すごいすごいと色めきだったものです。
2021年現在、マニュアルモデルの中古価格は、走行距離5.0万km超の個体でギリギリ200万円台後半。E46型M3の中古を買うよりやや安いくらいです。スペックと年式を考えると恐ろしい程お買い得だと思います。
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スペックを読んだ限りだと、サイズ感を含めて、特性がどことなくアウディA3に似ています。パワーは倍以上違いますが…。
まず、トルクバンドが広いです。
ダウンサイジングターボの傑作技術、TFSIエンジンを積むA3より、100rpm低く、500rpm高く、トルクバンドが続きます。
一方、馬力は3.0Lターボのわりに高いわけではないので、後に発売されるM2との差別化の為か、どちらかというとトルク寄りのセッティングをしているように見えます(M2は同じ排気量ターボで最高出力が410ps / 6250rpm)。
コンパクトセダンのわりに後席も広く、170cmの大人が普通に乗れるとのこと。見た目もM2やらM3やらと比べてオーバーフェンダーもしておらず、威圧感もないのです。
全体的に、普段使いに便利な性格を残そうとしている印象を感じます。
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こう書くと単に「そこそこパワーがあってマニュアルがある使いやすい4シータークーペ」なんですが、今コペンからの入れ替えで車を買うなら、そんな現実的な理由でなく、すべてをぶっちぎるファンキーな理由・浪漫が必要です。
IS-Fにおいてそれは、『35GT-Rと同年、2007年に発売された、国産スポーツカー暗黒時代に一石を投じる最初の一台』『それも280馬力規制を遥かにぶっちぎる、5.5L423馬力の超ハイパワー車』という点だと、先のエントリで書きました。
では、M235iの浪漫は何か。
それは『直列6気筒とターボという、BMWの伝統二つを組み合わせた、モジュラーエンジン化する前の最後のエンジン』という点だと思います。
BMWといえばシルキーシックスと呼ばれる直列6気筒エンジンが有名で、その滑らかに廻る感触は、当然にNA故でありましたが、実はターボを市場に流行らせた実績があります。
どちらも1970年代のことです。
それから40年ちょっと経った2014年に出たM235iは、ストレートシックスとターボという、エンジン屋であるBMWの歴史が結実したモデルであります。そいつに日本でもマニュアルを設定して出してきた、ということは、メーカーとしても相当な気合をぶち込んできたモデルではないでしょうか。
その辺りをちゃんと調べようとしてみたところ、ちょっとした論文級の文章量になってしまったので、以降はお手隙の際にご笑覧ください。
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まずシルキーシックスという呼称について。
こいつは1976年、当時のフラッグシップとして発売された初代6シリーズ搭載の直列6気筒SOHCエンジン、M30B32型に対する賞賛が始まり、とする説が有力です。排気量のデカい、通称ビッグシックス。この吹け上がりを当時の欧州ジャーナリストが「絹のようだ」と呼称したのが由来とのことです。
M30型エンジン自体は1968年の2500及び2800シリーズへの搭載が最初であり、そこからシルキーシックスの呼称が始まったとの説もあるようで、今となっては明確な初出はどうも確認できないようです。
その後、1990年に直列6気筒DOHCのM50型エンジンが登場。こちらは排気量2.0L台なのでスモールシックスと呼称され、3代目3シリーズであるE36型等に搭載されます。
六本木のカローラと呼ばれるまで広まった2代目3シリーズ、E30型の後継に搭載されたこともあり、シルキーシックスのイメージは3シリーズと共に、世に爆発的に広まっていった、とのことです。
……じゃあなぜ、1968年以降に出た他の直列6気筒搭載車、特にE21型やE30型が、スモールシックス・シルキーシックスと呼ばれなかったのか。
これは多分、シルキーシックスの呼称定着年の問題だと思います。
1975年発売である初代3シリーズ、E21型に搭載されるM10型エンジンは1962年に出たエンジンなので、M30型エンジンより設計が古いです。一方、2代目3シリーズ、E30型搭載のM20型エンジンは1977年から。つまりM30型エンジンより後発のエンジンです。これにシルキーシックスの名が定着していない。
となると、やはりシルキーシックスの呼称はM30型エンジンそのものではなく、あくまで6シリーズの発売である1976年以降、M30B32型以降のエンジンに対して発生し、定着。それ以降の後継開発エンジンであるM50型が、ビッグシックスに対するスモールシックスの呼称を得て、爆発的に広まった、と考えるのが正しいんでしょう。
やがて2015年、排気量のダウンサイジングを求める風潮により、直列6気筒のNAエンジンは、BMWラインナップから消えることになります。
2007年からM3にはV8が積まれ、2014年からは直6に回帰したもののノーマルの3同様、ターボ化される。
E46型3シリーズに搭載された名機、M54型エンジンと、その後継であるE90型3シリーズに搭載されたN52型エンジンが、最後の直列6気筒NAとして、シルキーシックスエンジンはその歴史に幕を閉じることになります。
※N53型エンジンは、N52型より2年早い2013年で生産終了されている
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話が大いにズレましたが、これが『直列6気筒がBMWの代名詞』と言われるに至った理由です。続いてターボの話です。
乗用車のターボに火をつけたのもやっぱりBMWで、1973年のBMW 2002 Turboがその火花です。
ターボの歴史は、1900年代の初頭、蒸気タービン技術に端を発します。
ディーゼル機関車の低回転トルクを向上させる為にターボの導入が試みられ、1925年に完成。そこから船舶を中心に広まり、最終的は飛行機で運用が激化します。
軍用飛行機が空気の薄い高高度で飛行する為に、パワーを向上させるターボエンジンが採用され、アメリカで広まりました。B29が、日本の戦闘機じゃ迎撃できない高高度で飛行する理由もターボです。この辺りは湾岸ミッドナイトのユウジ編に詳しいのでぜひ。
その為か、乗用自動車への最初の導入もアメリカでした。1962年のことです。
GMがオールズモビルF85カトラスとシボレー・コルベアにターボエンジンを設定。しかし、市場に定着するには至りませんでした。過給圧が低かった為と言われます。それにしては180馬力まで出ていたらしいですが…。
車へのターボ導入が加速するのは、1970年からです。
この年、トヨタが自社初のレーシングカー、トヨタ7をターボ化します。
ただし、8月26日の鈴鹿サーキットにおけるテスト中に、ドライバーが事故で死亡。出場中止となり、トヨタ7のプロジェクトそのものが凍結されるに至りました。結果、ターボのトヨタ7は、1,000馬力を超えるとも言われる伝説だけ残し、一度も実戦投入はされず消滅します。
1972年には、ポルシェがターボを搭載した917/10Kをカナディアン-アメリカン・チャレンジカップ(Can-Am) に投入。圧勝します。
そして1973年、満を辞してBMWが乗用車である2002にターボを設定。
ツーリングカーレースで鎬を削っていたポルシェを、1969年、航空機エンジンで培ってきたターボの技術を叩き込んだM121エンジンを搭載した2002tiで破り、そのノウハウを市販車に導入。M10型エンジンをターボ化します。2002Turboは、フロントスポイラーに逆さ文字で「TURBO」と書かれたステッカーが貼られ、公道にその名を轟かせるに至りました。
結局その翌年、1974年にポルシェが930型911にターボを設定し、今まで続く911ターボの歴史を築き上げることにはなるのですが…、市販車として世にターボを知らしめたのは2002Turboが先であり、これはもう、エンジン屋であるBMWの面目躍如と言えるでしょう。
1978年には、2002Turbo搭載のM10型ターボをミッドシップに搭載した、ジウジアーロデザインのスーパーカー、BMW M1がパリサロンで発表されます。レースでも活躍し、1981年まで生産されましたが、参戦カテゴリであったグループ4からグループCに規定改定され、生産終了。それからしばらく、BMWの市販車からターボは姿を消すことになります。
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そして時は経ち、2006年、BMWは25年ぶりのガソリンターボエンジン搭載車を発表します。
E92型335i 。N54B30A型、直列6気筒ツインターボエンジンを積み、1,300〜5,000rpmまでという広範囲で400Nmを叩き出す、E90型3シリーズのクーペモデルです。
そこから2009年に、エンジンがバージョンアップ。N55B30A型エンジンが発表され、535iに搭載されます。翌年の2010年には、335iのエンジンもマイナーチェンジでN55B30A型に変更されます。B54のツインターボから、ツインスクロールの大型シングルターボに変更され、よりトルクバンドの広い、扱いやすいエンジンへ。ある意味ターボの悪癖が鳴りを広めるエンジンに改良されます。
M235iにはこのN55B30A型が搭載されています。
アホほど長くなりましたが、話はここに繋がってきます。
2014年。このサイズ感で、この価格帯で、日本ではマニュアルミッションまで設定された、コンパクトな4シータークーペ。
おそらくメーカーは、何とかこのN55B30A型エンジン搭載のコンパクトなスポーツクーペを世界に届けたかったんじゃないかと思うのです。
その後、BMWのエンジンはモジュラー設計であるB58型へ。
3,4,6気筒の共通パーツ化を前提とした、気筒数によらない部品設計を可能とする、生産効率の良いエンジンへと進化します。
M235iはその前の、最後のエンジン搭載のスポーツモデルというわけです。
◇
1973年、ポルシェとの戦いで生まれた直列4気筒ターボ。
戦前から脈々と続いた直列6気筒に、21世紀になって改めて復活したターボを叩き込んだエンジンが、N54〜55型エンジンです。
そいつを全長4500以下、全幅1800以下のコンパクトな4シータークーペに載っけてた車がM235i。それが200万円で買える。どうすか、ほしくなりませんかこの車!!!
◇
以上です。真面目な話、サイズ感もよくて、キビキビ走るクーペで、相当なトルクがあって長距離も楽で、挙げ句の果てに後席もトランクもある、そこそこ新しい車というと最良の選択肢だと思います。
これで屋根が開くならすでに買っています。つたえファクトリー辺りでいい出物がないものか…。
新山さん、増車する(スバル・サンバーディアスワゴン)。その2。
よく晴れた祝日の昼下がり。サンバーディアスワゴンが、国道をギシギシ軋みながら走っていきます。
やたらと風の強い日で、トールタイプのボディーが横風でぐらぐらと揺さぶられます。左折待ちの信号で思わず呟く私。
「全高いくつだっけ、この車」
「1,900mm」
「……ランクルより高いじゃん」
「高いよね。未だに曲がるとき、ちょっと怖いんだよ。横転するんじゃないかって」
調べてみたところ、現行販売されている軽自動車のうち最大全高のものは、ダイハツ・ウェイクの1,835mmだそうです。軽自転車の全高基準は、2,000mm以下。ギリギリを攻めています。
「でもこの車、重心は低いんじゃない?エンジン搭載位置は運転手のケツより下でしょ」
「まあ、そうだね。直列4気筒が荷室の下に横積みにされてる。見た目の割には低重心っちゃ低重心か。……それでも、運転手の視点からしたら、やっぱり高いからさ。カーブのRが大きいときは正直怖いよ」
オタクが乗ったキャンピングカーが派手に横転する動画がネットで流行ったばかりです。シチュエーションとしては似たようなものなので、何というか気をつけて乗っていきたいものです。
◇
本日向かう先は、東雲のスーパーオートバックス、A-PIT。
予定のないときにふらりと向かう先として重宝しているドライブスポットですが、今日はちゃんとした用事があるようです。
「エアクリーナーがほしくて」
「エアクリ?シルビアじゃなくて、サンバーの?」
「そう」
「HKSのチューニング用みたいな、目の粗いやつしか置いてないんじゃない?」
「そうかも。普通のやつがいいんだけどなあ」
「またどうしてエアクリを」
「エンジンがね、調子悪いんだよ。この車」
始動とアイドリング不調のようです。
この後何度か実演してもらいましたが、イグニッションから問題なくエンジン始動する確率が、大体半分ほど。無事エンジンが回っても、少し吹かしてやらないとアイドリングが安定しません。
「納車直後から、どうもアイドリングが調子悪くて。エンジン一発でかからないことも多いから、一通りチェックしたんだよ。まずはスロットルバルブがギトギトだったから清掃して、スパークプラグとプラグコード交換して。でも相変わらずなんだよね。走っちゃえば落ち着くんだけど……。とりあえず、近々ディーラーに持ち込む予約はしたので、その前に交換できる怪しいとこは先に潰しておこうかなって」
※リアのエンジンルームハッチを開け、オーナーからメンテナンスを受けるサンバー君の図。新山さん曰く、「キャビンに工具も部品もおけるので、やたらと作業性が高いレイアウト」とのこと。
※交換用のプラグとコード
※汚れ気味のスロットルバルブ付近
「ディーラー?買ったとこじゃないの?」
「他所でやってもらっても保証は効く契約になってるから。……それに、ちょっと不安なんだよね、あそこ」
曰く、買ってすぐ、走行中に電気系統が不意に落ちる症状があったとのことです。
電源が大元から落ちるらしく、カーナビが再起動する始末。オルタネーターか?しかし警告灯の表示はない……。納車直後から結構な症状ですが、以前バイクで同じ症状を経験していた新山さん、落ち着いておりました。
バッテリー端子をチェックしたところ、案の定締めが甘く、締め直しを実施。それだけで無事正常化したとのことです。
「整備簿じゃ『増し締め済』ってなってたんだけど、やたらナットが硬かったから、作業者が勘違いしたのかな。ーーともあれ、そのせいもあって、少し懸念がね。ディーラーが一番安心感があるかなと」
バイク乗っててよかったよ、と嘯く新山氏。着々と経験値を上げて来ているようです。恐るべし。
◇
しかして、東雲スーパーオートバックスに目当てのエアクリーナーは案の定ありませんでした。
一応HKSの適合車種表があったので見てみたところ、そもそもスバルの欄にサンバー対応品が確認できません。
「アルシオーネはあるのに……販売台数じゃ絶対勝ってるはずなのに……」
「用途が用途だから。ここで買うものじゃないんだよ」
「分かっちゃいたけど……悲しい」
結局、駐車場無料分達成の為、wakosの551みたいなやつとエンジン添加剤だけ買って退散することになりました。
◇
停車中、改めて内装とキャビンを眺めます
「タコメーター付いてないの?マニュアルなのに?」
「付いてるモデルもあるみたいだけどね。一応ほら、速度メーターんところに目安のギア数が振られてる。2速で引っ張るなら45km/h、って具合に。リミットじゃないけど」
「初めて見たわこんなん……」
「軽トラのメーターだとたまにあるよね。ちなみにタコメーターは前オーナーが後付けで付けてくれたみたい」
※後付けのタコメーター。写真は停車時ですが、電源オン時はブルーの表示がやる気を上げてくれます
「後ろはさすがに広いね」
「シートは基本倒してます。4人乗ることはまずないからね。こうすると、ボックスとギターが縦に、しかも直列で積める。横にしなくていいのはホント楽だね。無造作に積めるから、余裕があるよ」
「こうしてみると本当に四角いんだな……箱みたいだ」
「小物入れも多いし、上にハンガーも掛けられる。車中泊は大分捗ると思うよ。まだやってないけど楽しみだわ」
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「総じてどうですか。遅いし、買ってそこそこトラブルも出てるし、サスもグニャグニャで運転に気を使う車とは言ってたけど」
「いや、買ってよかったと思うよ。小回り効くし、雪道の狭いとこにも突っ込んでいけるし。結構狭いとのあるじゃない、雪の深い山道って。デカイ車じゃ入りにくい場所も、サンバーなら気にせず突っ込んでけるのは気持ち的に楽」
「4.8Lで重量約2.5t、全長5,000超、全幅1,900超の大物、サファリと迷ってたわけだけど。その辺は?」
「結果的にサンバーにして正解だったかな。前述の小回りの部分と、何よりシルビアと2台持ちにしたのが良かったと思う。役割分担も明確だし。……多分、サファリにしてたら多少後悔があったと思う。シルビアは手放すことになるだろうから、そうすると、ハンドリングのいい、キビキビした動きの車が、遠からず恋しくなるだろうからね。ーートルクで走る、バカデカくて防御力最強の車ってのは、未だに憧れはあるけどさ」
シルビアとの2台持ちを選択したのが英断だったかもしれない、と述懐する新山氏。
しばらく長距離ランとツーリングはシルビア、街中の買い物と、四駆と車中泊が活きるシチュエーションはサンバー、たまに気分転換でバイク、通勤はスクーターという体制になるようです。こう書くとリッチで羨ましいですね……。
ともあれ、足掛け5年に渡る、次なるカーライフ構想の旅に一応の決着が付いたようです。
最後に御茶ノ水で適当に楽器を見て、祝杯がてら久しぶりのラーメンで気持ちを上げて帰りました。
盛太郎・御茶ノ水店。ラーメン中盛り。満腹中枢が働き始める前に食い終わるべし。お疲れ様でした。
新山さん、増車する(スバル・サンバーディアスワゴン)。その1。
S15シルビアのオーテックバージョンという珍車を駆り、早10年ちょい。
次なる車に、『余裕で車中泊が出来る』『雪道にガンガン突っ込める』『超長距離をゆったり走れる』などの要素を求めて、数々の車を見てきた、我が友人の新山さん(求めていると言いながら上記の全てをシルビアで敢行している)。
サファリに心を掻き乱されながらも、最終的に選んだ車は下記の通りでありました。
「スバル・サンバーディアスワゴンです」
「軽じゃん!それも過給なし!ツアラーとしての役割はどうした!」
「最後のは諦めました。というかその役割は、今後シルビアに負わせます」
まさかの増車。2台持ちです。
「シルビア、手放さないの?」
「いろいろ考えたけど、無理だわ。愛着もあるし、ハンドリングが良くてキビキビ走るタイプの車は、今のところ手放せそうにない。2台目が軽なら維持費も抑えられるしね。ーーそんなわけで、しばらくシルビアとサンバーの2台体制で行きます。いやあ、気分でその日の車選べるの、控えめに言って最高だよね」
2016年に『バイク降りてシルビアに集中しようと思って』などと話していた人間の発言とは思えません。
ともあれ、アレから足掛け5年。念願の『フルフラットにして車中泊できる四駆』を手にした新山さんです。雪道ドライブと長距離運転のお試しを経て、今度は都内に試運転に行くとのことでしたので、ついでに同乗させてもらいました。
◯スバル・サンバーディアスワゴン(2006年式)
エンジン: EN07F型 658cc 水冷SOHC8バルブ EMPi 直列4気筒
ボディサイズ:全長 3,395 × 全幅 1,475 × 全高 1,900 mm
ホイールベース: 1,885mm
トレッド:前/後 1,280/1,280mm
タイヤサイズ:165/70R13
車重:980kg
最高出力:48ps(35kW)/6,400rpm
最大トルク:5.90kg-m(58N・m)/3,200rpm
変速比:(1~5)4.090/2.470/1.615/1.125/0.861/
最終減速比:6.500
最小回転半径3.9m
「珍スペック過ぎる…」
「要するに軽トラのスペックなんだよね。こいつはワゴンだけど、歴史的な軽トラ・軽バンの仕様と同じで、前輪が運転席の真下にある。だからショートホイールベースで、旋回性がアホみたいに高いんだよ。
ーーなお、言うまでもないですが、駆動方式はスタンバイ式の4WD。基本レイアウトはRRです。通称『農道のポルシェ』」
※やたら短いホイールベースと突き出たノーズの図。フロントタイヤの真上に運転席があり、リアタイヤの真上にエンジンが積まれています
サンバー。1961年から綿々と続く、スバル最長寿車種です。
軽規格のフルキャブオーバーバン。スバル360の応用からRRレイアウトが採用され、2012年まで一貫して上記の仕様が継続された、言ってしまえば珍車です。バンを主軸に、トラック、ワゴンタイプをシリーズにラインナップしています。
2012年のスバルの軽自動車事業撤退から、サンバーシリーズの自社生産も終了。現在はダイハツ・ハイゼットのOEM車として販売が継続されていますが、エンジン搭載位置がフロントとなり、『農道のポルシェ』の歴史は終了することになりました。
ちなみに、役目を終えたスバルのサンバー生産ラインは、その後86・BRZのラインに使われているとのことです。なんというかこの辺り歴史を感じます。
◇
適当な昼食を摂り終えて待っていると、『着』とのメールが着信。部屋の前に出ると、黒いサンバーが停まっていました。
「違和感がある」
「まあ、10年間シルビアだったからね」
近くの自販機で缶コーヒーを買い込み、助手席に乗り込みます。
「視点は結構高いんだね」
「ハイエースとかキャラバン程じゃないけど、見通しもいいから運転はしやすいよ。じゃ、行きます」
始動音。わりと元気のいい音がします。
「うわ!音が後ろから聴こえる!」
「これは不思議な感じするよね」
「すげえ。…音量もちょっと大きい気がするけど、遮音性の問題かな」
「それはあるかもしんない。元がバンだもんね」
あまとう氏のカルマンギアと、もっと昔に知人のボクスターに乗せてもらったことがそれぞれ一度あるので初めてではありませんが、リアエンジンの音を聴くのは人生で3度目です。なかなかに気持ちが盛り上がります。
発進。国道に出て、しばらく定速で走ります。
「わりとこう、ガタガタギシギシ音がするね」
「バスみたいだよね。静かじゃないけど、オモチャ感があってそんなに悪くない」
「……今、2速発進した?」
「した。わりと1速が、ぐわーっと回転上がってっちゃうんだよ。コペンよりかなりローギアードだと思うよ。1速は渋滞のとき、クラッチだけ繋いで微速前進用に使ってる」
こんなところもバスみたいです。
調べてみたところ、1速4.0以上、最終減速比6.5以上という変速比は軽トラ仕様では珍しくないみたいで、『積載量が多いときに1速発進、軽いときは2速発進』というセオリーは、わりと使われているようです。知っててやってるのか、体感で思い付いたのか…。
国道を直進します。さして混んでもいないので、前がペースを上げればこちらも踏んで加速するシーンが増えてきました。
「そういえば、NAエンジン買ったんだね。前にサンバー気になるって話してたとき、『スーパーチャージャー付きのもある』って言ってたけど、そっちにしなかったの?」
「値段も結構違うし、近くにあった出物がNAだったから。少し迷ったんだけど、まあ、NAでいいかなと」
シルビアでもターボではなくNAモデルを選んだ剛の者です。以前のスペックRとの乗り比べの経験も効いているのかもしれません。
「実際乗ってみてどう?動力性能は」
「めっちゃ遅い。ちょっと不便なくらい遅い」
率直です。
「そんなに?」
「高速だと特にそれが顕著でさ。基本80km/hで左車線走行。登り勾配に差し掛かると80km/hも維持できないし、追い越しかける場合は、かなり前から加速しないと抜けないから、相当前見て運転することになる。回転数も4,000rpmやら5,000rpmやらで走り続けることになるから、すげー疲れるよ」
「コペンはターボもあるから、巡行中も踏めば進むけど…」
「これはね、踏んでも進まない。今シフトダウンして4速全開にしてるんだけど」
コペンの5速で軽くアクセルを踏み込んだときのような進み方です。
「まあでも、街中では使い切る感があって良いかな。良くも悪くも回さないと進まないから。ホイールベースが短いし、前輪が運転席の真下にあって鼻先が出てる分、ブレーキ気をつけないと前が沈み込むから、姿勢作るのにも気を使うし。運転上手くなりそう」
たしかに、急制動をかけると思いっきりノーズダイブします。これはブレーキが上手くなりそうです。
「ちょっとコペンの走行感覚と似てる気がするな。エンジンが頑張って回って、トルクを絞り出してる感じ。ーーあと、市街地の快走路は、むしろシルビアより速く感じるんだけど」
「シルビアの安定性が(比較して)高いからかもね。直進安定性の高いツアラーに乗ってると、スピード感がないままスピードが出てるのと同じ理屈かも。……比較対象が適切じゃない気はするけど。あとね、これ、軽にしては重い。1,000kg近くある。遅いのはそこも原因なんだろうな」
重量は980kg。コペンより100kg以上重いです。調べてみたところ現行軽バンは大体同じくらいなので、車両形態の宿命なのかもしれません。
続きます。