ー ORDINARY ー

※ 登場人物はすべてフィクションです。車と楽器とフィクションに塗れた会社員の日常を、のんべんだらりと書き綴っています。

コペンローブ購入記その5

車の話とズレますが、私は以前、楽器屋で店員さんに「何かお探しですか?」と声をかけられ、「テレキャスジャズマスター、どっちを買おうか迷ってる」と答えたところ、派手に笑われた経験があります。

 
店員さん曰く、
 
「また全然違う2本で迷ってますねー」
 
余計なお世話だこのやろう全然違うから迷ってんじゃねーか!
 
とはおくびにも出さず、いやーそうなんすよー決めらんなくて、と笑って誤魔化しましたが、これはつまるところ、
 
コペンと86、どっちにしようか迷ってる」
 
と答えるのと同じレベルの回答であり、スポーツタイプが欲しいのはわかったけどもうちょっと絞り込んでから来いよ、という店員さんの愛想笑いは、まあたしかにその通りだなと思います。
 
ただまあ、全然違うから悩むんですよね。
 
たとえば86とBRZとか、エクストレイルとCX-5とか、クーガとイヴォークとか、ボクスターエリーゼとか。タイプが近くて共通点が多いモノ同士を比べる方が、差異がはっきりと見えるので、私にとってはすぐ決められます。事実、TokaiのストラトかG&Lのストラトで悩んだときは、10秒くらいでG&Lに決めました。同じ領域の中で自分の好きな方向に寄ればいいので簡単です。
 
が。
 
たとえば「イヴォークとエリーゼ、どっちがいい?」と訊かれたら、私は結構迷うと思います。どっちも好きだけど、タイプがあまりに違い過ぎるので、どっちを買うかで生活スタイルも変わるでしょう。ちょっとした人生の別れ道です。
 
そんなわけで、今回最終的に86かコペンローブかで迷うことになるのですが…、埼玉ダイハツネッツトヨタ。それぞれ担当してくれた営業さんは、どちらも笑わず、真剣に相談に乗ってくれました。感謝してます。
 
…ちなみにテレキャスジャズマスターも買わずに結局ストラトを選択したので、店員さんは単に、「こいつあんまり買う気ねーな」と判断してあしらったのかもしれません。だとしたら見事に正解でした。
 
 
まずはダイハツへ。
 
近所のディーラー。車を停め、外にちょこんと置かれた試乗用らしきコペンの周りをウロウロしながら見ていると、営業さんが出て来て声をかけてくれました。
 
「はじめて車を買おうと思ってて、諸々よくわからないけど新型が気になっている」とストレートに伝えると、「よければ詳しく説明する」と中へ案内されます。大人しくついていく私。
 
「はじめての車購入とのことで、細かく補足をしながら見積りを作っていきたい。で、見積り、残価ローン、保険のシミュレーションを行い、毎月の支払いのイメージを持ってもらってから、持ち帰って他車と比較をしていただければと思う。今日はそんな流れでよいか?」と前置きをされた上で、コペンの色とグレードを決め、あれこれオプションを付けていきます。
 
この担当さん、会話がとてもスムーズです。説明が上手いんですね。全体の流れをまず提示してくれるし、質問に対してはまず結論から答えてくれるので、話に付いていきやすいです。今後もお世話になるのでこの点は見習いたいものです。
 
とどめに、どのタイミングで言われたか忘れてしまいましたが、
 
「ちょっと乗ってみます?」
 
乗らいでか。
 
はじめて乗るコペンは、CVTだったこともあってゴーカートみたいな気楽さがありました。何よりよく曲がる!それまで乗ってた実家のスピアーノくんと比べると、左折一発で違いが感じられます。音もやる気にさせてくれるボボボボという低音がよかったです。
 
 
続いてスズキへ。
 
家から歩いて行ける距離にスズキがあるのですが、スイスポの試乗車は残念ながらないようです。が、元気な若いにーちゃん(今年の新卒らしい。頑張れ新社会人)に案内され、中古のスイスポに座らせてもらいます。
 
チャンピオンイエローの印象が強いスイスポですが、白もスッキリした印象でよいですね。コペンや86と比べて、座った感じは普通のハッチバック車です。いい意味で気楽です。でも、内装もエクステリアも、細かい部分が走り仕様になっているのがかっこいいです。
 
その後、担当させてもらう者をご紹介しますと言われ、店内にいくと、
 
「こんにちはー! よろしくお願いしまぁす!」
 
美人のおねーさん現る!
 
動揺し、ガラス扉に激突する私。焦るおねーさん。すみませんでした。あれこれ説明してもらいながら見積もりを作ってもらいます。
 
スイスポの利点は、その抜群のコスパ。安さもそうですが、残価ローンのキャンペーン中で金利もダントツで低かった。ただ、同価格帯のコペンと比べると諸費用で差が出ます。そうなるとあんまり変わらないか…?
 
後日近くのディーラーを紹介してもらって試乗したところ、こちらも非常に乗りやすく、好印象でした。軽いし小さいし、あとは良くも悪くも、ミラーがデカかったのが印象的。後方はかなり見やすいです。
 
ただ、これなら同じ価格帯のコペンの方が、コンセプトが振り切ってておもしろいな、とも思いました。車としてはすごくよかったので、コペン発売前だったらこっち買ってたかも。
 
最終的により思い切った2台であるコペンと86に絞られましたが、スイスポも好きな車です。こっちにしても不満はなかったでしょう。おねーさん美人だったし。
 
 
最後にネッツトヨタへ。
 
86の見積もりを作ってほしいと伝えると、紺色のジャケットを着こなした細身のにーちゃんが担当してくれました。同い年らしい。車のディーラーというよりアパレルにいそうなにーちゃんです。
 
この人、ホンダのTYPE-Rを乗り継いできた剛の者で、今の愛車はプリウスα(とインテR)、車の魅力は加速感。口癖は「免許が足りない」。86に対する説明も非常に技術的で、あれやこれやと教えてくれます。
 
途中「他にどんな車考えてます?」と訊かれ、「コペン」と答えると、
 
「うわーコペンかー!いい車ですもんねー」
 
なぜか渋い顔で賛同されました。後日、なんであんな顔をしたのか理由を聞いてみたところ、
 
「勝てないなと思ったんですよ。値段も100万違うし、向こうはオープンですからね。梁井さんスピード出すタイプじゃないって話でしたし、その2台なら、最終的にコペンにしちゃうんじゃないかと思ったんです。だから、どうやって86を勧めてくか、少し悩みました」
 
たしかに86を勧めながら、なんやかんやコペンを褒めてたなあという印象が残ってます。「オープンだし、気楽だし、何より86と違って思いっきり踏める。86でいちいち踏み込んでたら免許が足りない」などなど。
 
逆に86の魅力は、「FRであること、水平対向エンジンによる低重心から来る運転感覚、サーキットなどで走るなら間違いなく86。何よりかっこいい。楽しくて免許が足りない」などなど。
 
この時点で、理性はコペンにしろと叫びますが、憧れがやっぱり86かっこいいと喚きます。
 
86に関しては予算的にギリギリなので、こちらも少し商談を意識して話を展開していきます。もし86にするなら多少無理してでもGTグレードにするつもりでしたが、「予算的に厳しいので買うならG」「そりゃ勿体無い。買うなら是非GT以上に乗ってもらいたい」「私もそう思ってるけど40万の価格差はデカイ」などと、それとなーく値引きを要求。「限界はまた聞きにきてくれ」と、とりあえずの値引き額を提示してくれました。謝辞を伝えて帰ります。
 
帰りの車内で、予算的に考えてもやっぱりコペンかなーと思っていましたが…、
 
 
翌日なぜか新山からメールが来ました。
 
「昨日、ネッツトヨタに86の見積もりもらいに行った眼鏡って、おまえか?」
 
「なんで知ってる!」
 
「担当したの○○って同い年のやつだろ。ありゃおれの元同僚だ」
 
シルビア野郎新山、現在は転職して公務員をやってますが、新卒で入った会社ではディーラーをやってました。86の担当さんは、そのときの同期だそうです。
 
商談中、「車に興味を持ち始めたのは地元の友人の影響で、そいつはイチゴーのシルビアに乗ってる」と話したところ、担当さん、しばらく考え込んだ後、
 
「…その人、高速でスピード出したりするタイプと、サーキット行って走るタイプ、どっちですか?」
 
「どっちでもないですね。最近は『歩くように運転する』とか言って、シフトショックを0にすることに心血注いでるみたいですけど。普段からスピードはあんま出さないですよ」
 
これで「あいつか」とピンと来たそうです。
 
新山からも、元同僚でインテRに乗ってる免許の足りない友人の話は聞いていたのですが、私は全然気づきませんでした。うわーなんだよ友達の友達かよ!変なところで繋がっちゃったなーと悩む私。これで86かBRZならこの人から86を買うので、必然的に購入候補は2台に絞られました。
 
続きます。