ー ORDINARY ー

※ 登場人物はすべてフィクションです。車と楽器とフィクションに塗れた会社員の日常を、のんべんだらりと書き綴っています。

コペンローブ、四国に上陸する、その1。

「梁井さんまーた一人でツーリングですか!」

 
煽る後輩を無視して退社し、土、日、月と、コペンで四国へ長距離ドライブに行ってきました。
 
 
目的地を四国に決めた理由はいくつかあって、遠くへ行きたかったというのがまず第一にあるのですが、土井さんと川崎、この二人の影響が大きかったと思います。どちらも四国に縁があるようです。
 
どこへ行こうか決めかねていた頃、土井さんに行き先を相談してみました。
 
「土井さん、長距離ドライブの目的地って言ったら、どこ想像します?」
 
「北海道」
 
「遠すぎます、ていうか広過ぎます。今回三日間なんで本州でお願いします」
 
「何、梁井くんが行くの? ああ、そういえば休み取ったんだっけ」
 
たまには代休取ったら?とアウトランダー課長に勧められたこともあり、お言葉に甘えて三連休を作ってしまいました。せっかくなので普段行けない遠いところまで行こうと思ったのですが、雑誌を読んだりネットを調べてみたりしても、あまりピンとくる場所が見当たりません。
 
こういうときは知人の話を聞くに限ります。知っている人の好きな場所というのは、やっぱり興味が湧くものです。
 
「今回遠くに行きたいんですよ。コペンで片道300km以上走ったことないんで、ひたすら高速巡航っていうのも一度試してみたいし。かと言って、行って帰ってくるだけっていうのも味気ないし。土井さんならどこ行きます?」
 
「遠くねえ。具体的な条件あるの?」
 
「片道500km以上1,000km未満、本州の端っこは行ったことあるのでパス、出来れば海沿い走りたいです」
 
「うーん…その条件だと、おれなら実家帰るね。愛媛」
 
本州以外の場所が出て来るのは想定外でした。
 
「四国じゃないですか」
 
「本州の端まで行くよりは近いよ。しまなみ海道で海の上走れるし、観光スポットも高速道路でほとんど片付くし。今回の目的からすればちょうどいいんじゃないかな。梁井くん温泉好きでしょ? あそこ道後温泉あるから、しまなみ海道から四国入りして、松山で温泉浸かって、適当に四国巡りして、鳴門大橋通って帰って来ればいいよ」
 
「…言われてみれば、仕事以外で行ったことないんですよ四国。どのくらいかかりますかね?」
 
「最近帰ってないからなあ。ええと、」
 
「片道700kmちょいで8時間くらいでしたよ!二人とも仕事しないで何話してるんですか!」
 
やかましい奴が会話に飛び込んできました。土井さんが振り返ります。
 
「…おかえり川崎さん。買ってきてくれた?」
 
「はいポンタカード。ごちそうさまです」
 
土井さんの部下の川崎という女です。
 
残業用の食料買い出しに出かけていたようで、土井さんにコンビニカードと菓子パンを渡し、自分用に買ったらしいエクレアを満足そうに移動させる姿を見るに、パシリというよりタカリという言葉が頭に浮かびますが、「はいこれ、梁井さんの」と私にまで菓子パンを渡してきたので、何も言わずに受け取ります。
 
「…いいんですか」
 
「おあがりなさい。で、何、川崎さん四国行ったの?四国出身とかじゃなかったよね」
 
「私は生まれも育ちも八王子ですよ。こないだ高知のおばーちゃんち行ったって話したじゃないですか」
 
「おまえアレ車で行ったの!?」
 
「行きました。実家のヴィッツで」
 
「一人!?」
 
「一人で」
 
仰天しました。この女、エキセントリックというか行動的というか、プライベートでインパクトのある行動を取ることが多いのですが、まさか女性単独で、夜間長距離ドライブを敢行するとは思いませんでした。大学生じゃないんだから。
 
「いやいやいや。おれも下関とか青森まで一気に走ったことあるけど、あれ相当キツイよ。単純に高速飛ばせば1時間100kmで走れるけど、仮眠も取るし、休憩もそれなりに時間かかるでしょ。よく8時間で行けたね」
 
「金曜の深夜に出たんですよ。深夜なら渋滞もほとんどないし。あとはもう、ひたすら駆け抜けるしかないですね。ちょこちょこ休みながら走るより、距離を削ることを意識することが一番です。仮眠取ってから出発すれば、結構眠たくならないもんですよ」
 
気合で駆け抜けろと言っているようにしか聞こえません。ちなみに私がやったときは、下関までで車内泊含み24時間、青森までは走りっ放しで12時間掛かりました。
 
「で、梁井さん四国行くんですか?」
 
「行こうかなと思ってる。しまなみ海道はたしかに通ってみたかったしね。時間あんまないから、観光するのは愛媛の松山くらいになりそうだけど」
 
「今週ですか?」
 
「うん」
 
「今週末全国的に天気悪いですよ」
 
 
幸いなことに南下してさえしまえば、中国四国地方は曇りのち晴れくらいにはなりそうです。というわけで、四国ドライブを敢行します。
 
コペンローブで超長距離巡航をするのは初めてなので、その辺りのインプレッションを中心に、旅行の記録が出来ればと思います。
 
それでは、行ってきます。