ー ORDINARY ー

※ 登場人物はすべてフィクションです。車と楽器とフィクションに塗れた会社員の日常を、のんべんだらりと書き綴っています。

安藤、アウディA3を買う、その2。

物が高くなる理由。

 
要は人件費か材料費、どちらかが高くなるから商品も高くなるわけです。ブランド、希少価値、利率の問題などを除外すると、物が高い理由というものは、下記の二点にタイプ分けされるんじゃないかと思っています。
 
1.性能がよい
2.作りが細かい
 
1をコスパがよいもの。
2を上質なもの、と呼んでもいいかもしれません。
 
何が言いたいかと言うと、世に言う高級車の「質感がよい」「だから高い」という理由は、作り込みの細かさ、工程の複雑化、それによる人件費増によるものなのかなと改めて感じました。「そんなん言われないとわかんねーよ」という、性能に直結しないところにまで拘ったものに、価値を感じてお金を出す。これがアウディに行って、いろいろ説明を受けた感想です。
 
 
日曜日、近所のアウディディーラーに徒歩で行ってみました。
 
この日は何も考えずに、安藤をダシにしてA3を眺められればそれでいいや、くらいのつもりで、アポなしで突撃しました。輸入車ディーラーといえど、国産とそんなに変わりゃしないだろうと気楽に考えて突撃したのですが…
 
ウィーンと自動ドアを潜ると、吹き抜けの天井、木目調の内装、涼しくて静かな空気がお出迎え。
 
お客さんが何人かいて、会話もしているのに、非常に静かだったのをよく覚えています。静謐、という言葉が脳裏に浮かびます。「…なんか、やっぱ、違う気が」と気後れしていると、受付のおねーさんが「いらっしいませ!」と笑顔満面で近づいてきてくれました。
 
「展示車のA3を見せていただいてよいですか」と事前に準備してきた台詞を吐き出すと、「もちろんです!こちらへどうぞ!」と車の前まで案内されます。恐縮しながらついていく私。
 
少し悩みましたが、この時点で購入前提ではない旨を伝えることにしました。知人が購入を検討していて、私も興味を持ったので少しだけ見せていただきたい、という冷やかし宣言にもかかわらず、「座席に座っていただいても構いませんので!」と言い添えて去っていくおねーさん。お礼を言って、どれどれと見物にかかります。バム、と音を立てて、ドアをオープン。
 
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「お、おおぅ…」とだらしのない声が漏れました。内装、たしかにかっこよいです。ソフトパット、ステアリングの手触り、ナビを格納式にしたことでスッキリとしたインパネ上部、エアコンの吹き出し口、シフトノブ、随所に散りばめられたシルバーの装飾…。
 
詳しいことはまるでわかりませんが、見てすぐに「ああ、いいな」とは感じました。
 
週明け安藤に会ったら、よかったよと伝えよう。ひとしきり堪能して運転席から這い出ると、今度はニコニコした男性が、「いかがでしたか?」と話しかけてきました。「お知り合いの方がご購入を検討されているとか…」
 
後で名刺をいただいたら、なんとこの人店長さんでした。曰く、「購入前提ではないと言いながらも、妙にマジマジと見ていたので気になって声をかけた」とのこと。「アウディのどんなところにご興味があるのですか?」と尋ねられたので、「内装の質感が高いという話をよく聞くけど、実際に質感が高いというのがどんなことを示すのか、よくわからない」と正直に答えると、丁寧に説明してくれました。ありがとうございました。
 
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「基本的に細かな装飾に拘っていることが理由ですね。たとえば内装。ほとんどの部分に、このようにシルバーの装飾が入っています。これがまあ、加工に大変な手間がかかるんですよ。だから値段も高くなる。ただ、アウディはこういったところにやたら拘るんです。複雑な造形そのものが目的ではありませんが、上品なデザインに仕上げるための手間は惜しまないわけです。それが価格に反映されます」
 
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「一番わかりやすいのは、Aピラーの付け根部分ですかね。ここ。切れ目がちゃんと付け根の部分にあるでしょう? 普通の車はこうじゃないんですよ。たとえばこの某Aクラス」
 
「ってベンツじゃないですか!なんでここにあるんですか!」
 
「比較検討される方のためにレンタルしてるんですよ。ほら、こちらは、ピラーの付け根が変なところにあるでしょう。変というか、ほとんどの車はこうなんですけどね。ここを揃えると、見栄えがだいぶスマートになるんですよ」
 
他には、ボルボのV40と、おそらくこちらはA4との比較対象でしょうが3シリーズが置いてました。
 
現行3シリーズは全セダンの中で世界一かっこいいと思ってるのでしばらく眺めてしまいましたが、さすがにあれも乗せろと言うのは気が引けたので我慢。いつかは運転してみたいものです。
 
「それと、特徴的なのはルーフとピラーの継ぎ目ですね。処理が綺麗でしょう。ここを綺麗にするの、ものすごく難しいんですよ。他車だとカバーを付けて隠しているパターンも多いんですけどね。他にも、ボディのアクセントになっているライン。触っていただくとわかるんですが、エッヂの立ち方がすごいでしょう。これがあるので、アウディはただ丸っこいイメージじゃなく、力強さも感じられるんですね」
 
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「あとはやっぱり、こういったダイヤルの操作感覚です。ほら、このクリック感!比べてみてください、全然違うでしょう!人間工学に基づいた操作感、手応えの心地良さを追求して、こうしたボタン一つ一つにも心血を注いでこだわり抜いているわけです!」
 
 
正直、見てすぐに分かる部分、言われないと気づかない部分、言われても全然違いが分からない部分(ダイヤルのクリック感の違いは、どうしても違いが分かりませんでした)、いろいろとありましたが、大まかなイメージは掴めました。アウディはとにかく細部の処理に拘っているようです。
 
高級腕時計なんかもそうですが、世の「高いもの」というのは、言われないと分からないような部分にまで細かーく手が入れられている印象があります。そういったものに普段から触れることで、見逃しがちな細かーい部分にまで目が利くようになるのかもしれません。少なくともアウディは、それを価値と見なしているように感じました。
 
残念ながら私は言われてもほとんど違いが分かりませんでしたが、こういう価値観もあるんだな、と思えたのはおもしろかったです。
 
実際に試乗もさせてもらえたのですが、
 
「乗り心地は硬めだけど不快ではない」
「エンジンの始動音がやたら静か」
「停車状態からの出足は少し鈍い」
 
というのが感想でした。何せ比較対象がコペンとシルビアなので、最近の車は普通こうなのか、アウディがすごいのか、ATとDCTとCVTは加速の感じがどう違うのか、全然分かりません。今度車を買い替えるときは興味ある車はなんでも乗ってみることにします。
 
 
最後に。私のディーラー突撃から一週間後に、安藤はA3 sportsback 1.4TFSIを購入したそうです。私がお邪魔したディーラーで。
 
「ちょっと待ておまえ家どこだ!」
 
「ここです」
 
「近っ!なんで最初に言わないんだよ!」
 
「僕だって梁井さんちがどの辺かなんて知りませんでしたよ」
 
色は展示車と同じスクーバブルー。何となく、安藤は白いセダンを買うつもりかと思っていたので意外でした。曰く、「僕もアウディは白のイメージがあったんですけど、ちょっと大人っぽすぎる気がしたので…」とのこと。
 
納車は9月上旬になるとのことです。納車したら皆で遊び行きましょうといってたので、車が来たら写真撮らせてもらおうと思います。
 
しかしまさかホントに買っちゃうとは…。