ー ORDINARY ー

※ 登場人物はすべてフィクションです。車と楽器とフィクションに塗れた会社員の日常を、のんべんだらりと書き綴っています。

Lowden F32C.

Lowden F32C


北アイルランド名工、ジョージ・ローデン率いる最強メーカー、ローデン・ギターズの定番モデルです。

 


Lowden F32C (Whole Step Down Tuning)

 

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グワングワンと響く、ピアノみたいな音色のギターです。

 

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サイドバックはインディアンローズウッド。トップはシトカスプルース。

 

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ネックはマホガニーと薄いローズウッドの5ピース。良し悪しは分かりませんが、5ピースネックなんて私はこれ以外モノホンを見たことがありません。

 

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指板はエボニーです。エボニーにしては柔らかそうで、謎の杢目模様が出ています。

 

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ブリッジはボーコテ。バインディングはメイプルのようです。装飾は最小限。


ナット幅45mm、スケール650mm。ネック幅が広く、長いですが、弾きやすいです。000-18で苦戦していたフレーズが、ローデンだとわりとスムーズに弾けたりします。ネック端の処理が良いのか。

 

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ブリッジが独特で、スルータイプの上にセパレートサドルです。これのおかげなのか何なのか分かりませんが、サスティーンがアホみたいにあります。曲終わりで音を揺らしていると、ミュートするまで延々と音が止みません。


音色は、適切な表現かどうかわかりませんが、ピアノみたいな音がします。


サウンドホール内でゴリゴリのリバーブがかかっているような独特の響き方です。帯域もハイとローに寄っていて、ミッドはどちらかというと薄めです。この辺りはスプルース・ローズの組み合わせの特性かもです。


おまけに音がポーンと前に飛んでいきます。10年近く昔、はじめて触ったときはあまりに音が前に出るので「弾けるかこんなもん」とビビった記憶があります。ピーキーです。


手持ちのMartin 000-18など、自分のイメージする「所謂普通のアコギの音」はもう少し身の詰まった、アタック感のあるタイトな音がします。が、こいつは単音を弾いても響きと倍音感でぐわーっと包み込んでくるような謎の迫力があり、存在感が独特なので、どちらかというとソロギターに向いている気がします。一回くらいバンド系の録音でも使ってみたいですが…。


どうもローデンはギター作りの大半を独学の試行錯誤の中で学ばれたようで、そのせいか、ブレイシングの設計も他メーカーに比べるとかなり独特だそうです。スルータイプのブリッジによるサスティーンと、ブレイジングによるサウンドホール内の増幅が合わさって、こんな不思議な音が出るんだろうなと、弾きながらぼんやりと思っています。


低音の響きが豊かなので、ダウンチューニングが合う気がして、普段1音下げにしています。記事冒頭の動画がその状態です。下のはレギュラーチューニング。

 

 


Lowden F32C

 

テンションの問題か音の張りはさすがにレギュラーの方が良いので、今度弦のゲージを上げた上で1音下げにしておこうかと画策中です。



購入は2017年5月5日。御茶ノ水のギタープラネットにて。


購入動機は「ソロギターに合う響きのきれいなギターがほしかった」……という理由を傘にした、とどのつまりが人生の憂さ晴らしです。


手帳を見返すと、2017年春は我ながら「よくこれで逃げ出さなかったな」と思うレベルの仕事のスケジュールであり、年度始めから面白いくらいに続出する問題を必死こいて蹴散らしていた時期でもあり、仕事でも私生活でもロクでもないこと続きあった私は、死んだ目でギタープラネットに入店しました。


単に弦の補充が目的でしたが、ついでにカポタストがぶっ壊れていた為、せっかくだしG7のちゃんとしたやつでも買うかと御茶ノ水まで足を伸ばしたところで、どうせいろいろ見るならばと久しぶりにアコギ専門店に足を踏み入れたのが運の尽きでした。


ギタプラの奥に入ると、ローデンが壁一面に吊られていました。


「…………」


疲れた目でローデンの壁を眺めながら、しばらくその場で呆けます。Andy MckeeやらDon Rossやらが使っていたローデン。あの頃に聴いた欧米ソロギター独特の和音感覚。記憶の中の響き。

 

まだ学生だった頃に一度だけこの店でローデンを触らせてもらったことがありますが、そのときは前述の「何を弾いても音が前にすっ飛んでいく」感覚に圧倒され、「これはとても自分に扱えるもんじゃない」と10秒くらいで試奏を切り上げた記憶があります。


が、こちとら卒業後もゴリゴリバリバリギターを弾き続けており、少なくとも当時よりは腕が上がっている(はず)です。今弾いたら多少は違うんじゃないか等と考え始めたところで店員さんが声をかけてくれたので、思い切って弾かせてもらうことにしました。

 

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「今使ってるやつがここで買ったSeagull(シダートップ、サイドバックがチェリー)で、小さめのボディーのやつなので、ドレッドノートかそれに準じたタイプが気になってる」と話すと、「比較的定番モデルである」ということでF32Cと、比較用に同じ木材仕様のD-28を出していただけました。思えば28弾いたのもこの時が初めてな気がします。


何分大分昔なのでぼんやりとしか覚えていませんが、Martinは「イメージするアコギの音だ」「ネック幅が細いなあ」と思ったこと、Lowdenは「やっぱり響きが独特過ぎる」「ネック幅が広い」と思った記憶があります。


ただ、以前Lowdenに感じた「これはとんでもないギターでありこんなんまともに弾ける気がしない」みたいな印象は、良くも悪くもありませんでした。個体の問題なのか自分が変わったのか。

 

基本試奏は短く済ませるべきと思ってるのですが、このときは結構な時間弾いてしまった気がします。「気に入りました?」「け、結構…」「どうします?」「と、とりあえず出直してまた来ます」「取り置きしましょうか?」「…………お願いします」

 

などと答えたあたり、多分この時点で腹はくくっていたのでしょう。

 

後日。良いは良いものの、モノがモノなのでふらっと買うのも思い切りがいる、せっかくだし他にも色々試してみようと、あちこちの店をふらついたものの、ピンとくるものがありませんでした。強いて記憶に残っているのは下記のメリルギター。

 

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Blue-Gで、「ローデンが気になってるけど他を見ている」と話したところオススメしてくれました。アメリカ・バージニア州のメーカーだそうです。サイドバックがコアだったのか…。朧げながら、柔らかできれいな音だった記憶があります。

 

ただ、どうにも気持ちが上がらず。あれこれ考えた結果、今回自分は良いアコギがほしいんじゃなくとにかくローデンがほしいんだと確認するに至り、ゴールデンウイーク終盤、先日買い忘れていたカポを買いに行く(という理由をつけて御茶ノ水に向かう)道中、購入を決意。「今回は買いに来た」と再びギタープラネットに突撃することとなりました。

 

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「もう何が何でも買うので他の個体も比較で試させてほしい」とお願いし、いくつか弾かせてもらいました。ただし、

 

「①ボディーサイズはF(ローデンはS・F・Oの順で大きくなる。今回はドレッドノート前後のがほしかった)、②トップはスプルース(音より見た目の好みの問題)、③カッタウェイ付き(あるなしでハイポジションのアクセスが段違い)」とまで限定すると弾はそうあるわけでもなく、唯一試したのは下記のF35C IR/ADです。


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F32Cとの違いは、コンター加工付きであること、トップがアディロンダックスプルースであること(やや白が強い)、サウンドホールに装飾があることです。

 

ローデンは英字でサイズを、数字で木材の組み合わせを表すらしく、32はスプルーストップ、ローズウッドのサイドバック。35または50は、所謂カスタムモデルを指すようです。上記の違いは32を基にしたカスタムオプションでしょう。


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ディーサイドのコンターはほしいっちゃほしかったですが、音色は同じ傾向で、そこまで大きな差を感じませんでした。しかもF35Cは、恐ろしいことに値段が大台に乗ってます。購入当時半ばヤケになっており、「もし35の音が昔聴いたような『吹っ飛ぶ音』だった場合はそこまで行ってしまおう」とも考えていましたが、幸か不幸か激烈な差は感じられず。それなら買える値段で、ということで、F32Cに決定いたしました。


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今回のオチは、キャンペーン中なのか何なのかG7カポが付いてきたことです。

 

カポを買うつもりでギターを買ったらカポまで付いてきた。喜ぶべきか何なのか。他、セットで付いてきたストラップ、トートバッグ、ポロシャツ、クロス、サービスで付けていただいたエリクサーの弦2セットです。


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※2018年メインだったFullertoneのテレキャスターとのツーショット

 

 

半ば衝動的に買ったローデンですが、長年水面下で憧れていたこともあってか、手に入れてよかったとしみじみ感じ入っています。

 

仕事に疲れて帰ってきてこやつを弾くと、あまりに響きの柔らかさに、あらゆる感情がふわふわと虚空に消えていきます。コペンをオープンにしてふらふらドライブしているときと同じ感覚です。

 

響きが豊かなせいか、長く弾いているとコードからつらつらとメロディーが続けて出てきて、こいつのおかげで何曲か自然発生しました(Church、Wintergreen、Pastoralなどなど)。ソロギターの幅が広がった気がします。

 

素朴で柔らかな曲が弾きたいとずっと思っていたのですが、方向性が固まりました。弾いていると情景まで浮かんでくるギターはこいつくらいです。末永くよろしくお願いします。

 

今後の目標は何とかこいつを3020で使うことですが、どうなることやら……。