ー ORDINARY ー

※ 登場人物はすべてフィクションです。車と楽器とフィクションに塗れた会社員の日常を、のんべんだらりと書き綴っています。

土井さん、シビックへの乗り換えを検討する。

会社のスノーボード旅行における主力輸送機として活躍していた土井さんのスバル・インプレッサ WRX GDA、通称ドイプレッサがいよいよ限界を迎えつつあるという話を聞いたのは、世界がコロナショックに揺れ始めた2020年3月のことでした。

 


「部品がね、ないんだって」

 

残業中。疲れ果てていた土井さんと私の雑談は、中止になったらしいスノボ旅行に話題が伸び、そういえばインプちゃん元気ですかという私の問いかけに返ってきたのが上記の土井さんの台詞でした。


「インプの?」

「うん。いよいよあちこち壊れ始めて。エンジンリビルドまでやってもらおうとしたんだけどね。部品が足りないっていうから『探せー』ってお願いしたんだけど、『ないものはないっす。諦めてください』って。まあもうよく走ったし、道中壊れても困るし、そろそろ潮時かなと思って」

「じゃあ、とうとう買い換えるんですか?」

「うん」

「寂しくなりますね」

「しょうがないよね。天寿は全うしたよ」

「じゃあいよいよ車探しすね、M3買いましょうM3!現行のは土井さん大好きターボも付いてますよ!買って乗してくださいM3!」

「買わねーし。それにもう注文した」


寝耳に水です。


「何を! こないだまで欲しい車ないって言ってたのに!」

シビック。現行のFK7型」

 

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<webCG試乗記>

https://www.webcg.net/articles/amp/37992


◆ホンダ シビック ハッチバック FK7 (6MT)

 

エンジン:L15C型 1.5L 直列4気筒 直噴DOHCターボ

ボディサイズ:全長 4,520 × 全幅 1,800 × 全高 1,435 mm

ホイールベース:2,700 mm

トレッド:前/後 1,535 / 1,555mm

タイヤサイズ:前後 235/40R18

車重:1,320kg

最高出力:182ps(134kW)/5500rpm

最大トルク:240Nm(24.5kgm)/1900-5000rpm

変速比:(1~6/後退)3.642/2.080/1.361/1.023/0.829/0.686/3.673

最終減速比:4.105


土井さんのパソコンでスペックを出してもらいながらあれこれ訊いていきます。


「ホンダか…。完全にスバルのイメージだったので意外ですね」

「まあ好きだけどねスバル。ただ、インプレッサの前はシルビアだったし、メーカーにはあんまり拘りないんだよ。ターボが付いてればとりあえずは」


そこは拘るのか。


「セダンじゃないんですか?」

ハッチバック。もちろん」


どうやら6速マニュアルがハッチバックにしかない上に、基本ハッチバックの方がスポーツタイプのようです。スペックを読み進めていきます。


「うわ、タイヤ18インチなんですね」

「こんなデカくなくていいんだけどね。調べたら、セダンの方は16インチなんだって。なんで2つも上がるんだよ、17インチでいいじゃんとしみじみ思う」

「センター二本出しマフラー、ステンレスペダル……。結構スポーツカースポーツカーしてるんですね。気合入ってる」

「うん、ある意味シビックではないよねもう」


ひどい言いようです。


「乗りました?」

「乗ったよ、オートマだけど」


感想までは訊きませんでしたが、購入を決めたくらいなので感触は良かったものと思われます。ネットのレビューを見る限り、「それなりにデカくて重さもあるのでヒラヒラとはいかない」とありますが、元々重心低めのドッシリした乗り味が好みの土井さんなのでそこも合ったのかもしれません。ターボ付いてるし。

 

「しかしなんでシビックにしたんですか? 前マツダ3が気になってるとか言ってませんでしたっけ」

「スペック的に絶対おもしろいと思ってファストバックのやつ乗ったんだけどね、中狭いんだよマツダ3。後席倒さないとゴルフバック積めないし、ターボ付いてないし」

 

ラゲッジルームの容量を比べると、マツダ3が334L、シビックハッチバックが420L。近年ゴルフにハマっている土井さんにとっては死活問題だったようです。ちなみにコペンローブのラゲッジルームは通常200L程度、ルーフオープン時はほぼゼロ。NDロードスターは常時驚異の130Lだそうです。キャンプ行くのも一苦労だわ。

 

「買おうと思ってたくらいだったから、どうするかなあと考え直しちゃってさ。そのタイミングで、街中でシビックのタイプR見かけたんだよ。かっこいいなと思ったけどもう売ってないじゃないタイプR。それなら、ノーマルのハッチバックはどうなんだと思って調べてみたら、結構良さそうだなと思って。……あんまり街中で見ないし、人と被らなさそうってのも良いなって」

「たしかに全然見かけないですよね。おれなんか、タイプRじゃないノーマルのシビックが出てたことも知らなかったですよ」

「先代が国内はタイプRだけだったからね。現行型もタイプR先行で発売されたし。しかし梁井くんテレビ見なよ、CMやってたでしょうに」

 

駄弁りながら公式ホームページをつらつらと見ていきます。

 

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「内装は、まあ普通ですね」

「300万円の車にゃ見えないと思うなあ。インテリアは完全にマツダの勝ちだよね」

 

ふと、シフトレバー付近の画像を見ていたところで気づきました。

 

「……あれ? サイドブレーキがない」

「ないよ。電動パーキングだから」

「マニュアルでもない?」

「ないね」

「そんな時代なんですね……。おれ坂道発進サイド引く派なんで、なんか寂しい気がします」

「梁井くんクラッチミートできないの?」

「出来ますよ!あるものは使う精神ってだけです!」

「冗談だよ。それにこれ、ヒルスタートアシスト付いてるから。多分クラッチ繋いで動力が伝わったらアシストブレーキ解除って仕組みなんだと思う。よく出来てるよね」

 

その他スペックを見てみても、快適運転のサポート機能はスポーツタイプとは思えないレベルで充実しているようです。

 

Honda SENSING(ホンダセンシング)、衝突軽減ブレーキ(CMBS)、車線維持支援システム(LKAS)、オートハイビーム、挙げ句の果てにはアダプティブ・クルーズ・コントロール(ACC)も。

 

「ってことは前車追随するんですかこれ? マニュアルでも?」

「らしいね」

「シフトチェンジは?」

「それは当然手動。でも、高速巡航で6速入れちゃえば後はもう踏まなくていいってのは相当楽だと思うよ。どうせハンドルには手を置くし、運転お任せシステムじゃないから集中切らすこともないし。アクセルペダルから足離せるだけでも全然違うよね」

 

アウディA3で大阪まで行ったときのことを思い出します。やたら空いていたこともありますが、休憩一回で500km走れてしまったのはたしかに楽でした。

 

「おれももう40超えてるからさ、マニュアル欲しいけど高速楽だと助かるんだよね。クルコン付いてるのはマツダとスズキのマニュアルも同じだけど、趣味性と実用性のバランスが、シビックが良かったってのが理由かな。なんやかんや、こういうガンダムっぽい見た目も嫌いじゃないしね」

 

 

そんなこんだであとは納車日を待つばかりの土井さんですが、件のコロナショックにより納車延期が懸念されています。

 

「予定日いつなんですか?」

「8月」

「インプの車検月は?」

「今年の9月」

「……シビックってどこで作ってるんでしたっけ」

「セダンは寄居工場。ハッチバックはイギリス」

「…………入ってきますかね?」

「こうなってくるともう正直わからんね」

「……伸びたらどうするんですか?」

「営業に掛け合って程度のいい中古車で手を打つよ。別に新車にこだわってるわけじゃないから」

 

土井さんの幸運と新型コロナウィルス感染拡大の早期収束を祈ります。