ー ORDINARY ー

※ 登場人物はすべてフィクションです。車と楽器とフィクションに塗れた会社員の日常を、のんべんだらりと書き綴っています。

新山さん、キング・オブ・オフローダーに乗る(日産サファリ)。

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日産サファリ。


昨今のSUVブームとは一線を介する、道なき道を突っ走らんばかりの走破性と耐久性を誇り、日本国内での販売がなくなった今日においても、世界の紛争地帯や砂漠の悪路を縦横無尽に走り回る、日産のフラッグシップクロスカントリー車。


2016年夏、北海道ツーリングからの無事帰還を祝う酒席で、新山さんからオフロードロマン溢れるサファリへの憧れを吐露されてから、気がつけば5年が経過した2021年11月の上旬。


フーガ購入後も、イマイチフィーリングの合わない電子スロットルとステアフィールに悩まされ、一向に治らない仕事の忙しさに目を回しながら、ほとんど習性と化した中古車サイトの巡回を続けていた新山さんは、奈良県の某中古RV車ショップに本車が登録されたのをついに発見。「時は来た。それだけだ」との謎ツイートを残し、発見から2日後にはフーガを走らせて奈良まで現車確認ツーリングを敢行。3週間後には、フーガを売却した資金を手に、新幹線でサファリを引き取りに向かうのでした。


◯日産 サファリ 4.5 グランロードリミテッド 4WD (1998年式4AT)

 

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エンジン:TB45E型 直列6気筒 OHV 4,478cc

ボディサイズ:全長 4,910 × 全幅 1,930 × 全高 1,865 mm

ホイールベース: 2,970mm

トレッド:前/後 1,605/1,625mm

タイヤサイズ:265/70/R16

車重:2,250kg

最高出力:200ps/4,400rpm

最大トルク:35.5kg-m/3,600rpm

変速比:(1~4)2.784/1.544/1.000/0.694

最終減速比:3.900

最小回転半径:6.1m

最低地上高:215mm


「ーーそのまま奈良から500km走って帰ってきたわけだけど、いかがですか。念願叶ってのサファリは」

「いい。とてもいい」


納車されてしばらく。『佐倉市に馬鹿でかい海老フライを食いに行く』ドライブの道中で、新山さんから所感を伺います。


「直進性がね、期待してなかったんだけど、思いの外いいんだよ。素直。ステアリングフィールに変なアシストがない。横Gをかけた分だけ、ステアにタイヤが撓む抵抗が伝わる。というか、これが普通だと思うんだけど」


フーガはどうもその辺の感触が合わなかったようです。


「フーガはね、とにかくステアフィールがどんな状況でも均等になるように、謎のアシストが入ってる感覚だった。普通さ、ステアリング切ると、初期反応としてタイヤが撓む感覚ない? あるでしょ? あるんだよ。で、その抵抗を手が感じ取ってから、ステアの切り角を決める。無意識にGとタイヤの撓みをステアから感じ取って、車の挙動に反映される前に、腕が切れ角を調整してるはずなんだよね。フーガはね、その初期反応がないの。制御で修正を入れてるのかなんなのかはわからないけど。だから、車の挙動に現れてから修正舵を当てざるを得ないので、常に修正舵を当て続けてる感覚になる。だから、直進安定性が悪く感じちゃうんだよ」


なるほど、と頷きますが、このときの私の感想は、「こいついつもこんなこと考えながら運転してたのか」です。引いてます。


「脚もね、揺れるんだけど、謎に不安がない。ピッチングしない。縦というか、前後にグニャングニャンしないから、高速でそこそこの速度で巡航しても、全然不安がない。こんなに車高が高いのに。超楽」

「でも、ロードインフォメーションはちゃんと伝わってくるよね。それなのに、全体としてはやたら静かに感じる」

「ね! 静かでしょ!! これが日産クロカンフラッグシップの実力ですよ!!! 抑え込みゃいいってもんじゃないんだよ、ナチュラルなフィードを残して不快なフィールを取り除く、これが車の極致として日産が辿」


途中から覚えちゃいませんが、興奮は伝わってきます。


ステアリングフィールについては、フーガはAWS (4輪操舵)も付いていたので、「その辺りが謎のフィールを生んでいたのかもしれない」と新山さんは言いますが、そんなスポーツ走行に影響を与えないような初期切れ角にまでフィードを与えているとは、いまいち信じられません。AWSの付いていないType-S以外のモデルだと、どうだったのかが気になるところです。


「アクセルは?」

「素直。踏んだら踏んだ分だけ燃料を吹いてくれる感じ。フーガは、……フーガと比較してばっかで申し訳ないけど、踏み始めで謎に反応が鈍くて、一定以上踏むとやっと反応する感じがあったんだよね。NAなのに」

「ターボみたいだね。やたらとECOモードで走ってたけど、もしかして」

「そう。それが理由。ECOモードなら、カバ踏みでも制御掛かって穏やかに反応するでしょ。どうせリニアさがないなら、こっちのが楽だと思って、ずっとECOモードで走ってた」


北米をメインターゲットとしていたフーガ。スポーツセダンといっても、ストップアンドゴーの多い日本の道のように、じわっと踏む局面が多いと、苦手な面が目立つのかもしれません。

 

それはともかくサファリです。

 

「サファリはね、エンジンいいよ。4.5Lとはいえ200馬力しか出てないし、車重もあるからフル加速しても正直遅いんだけど、気合いの入った音するし、気持ちがいい。十分だよ。巡航はそこそこの速度で出来るし、加速力を求めて買ったわけじゃないから。フーガもエンジンはめちゃくちゃよかったんだけど」

「なるほどねー。……現行車のフーガから、20年以上前のモデル落ちの車に乗り換えたわけだけど、その辺は? 今までの話聞くと、逆にその古さ、電子制御の少なさが好みなんだとは思うけど」

「え? このサファリ現行車だよ」


しれっと答える新山さん。


「嘘こけ! 1998年式の車が現行モデルなわけあるか!」

「ホントだよ。日本じゃ販売終わっていて、海外でもパトロールやアルマーダ(海外でのサファリのモデル名)は、Y61からY62にモデルチェンジはしてるけど、中東じゃまだY61がパトロール・サファリの名前で売られてる。つまり、まだ日産車体の湘南工場で作ってる」


どうもY62からラグジュアリー重視の車に舵を切られたようで、その分、ストイックな走破性が求められる国ではY61が継続的に売られているようです。やってることがトヨタ・ランドクルーザー70とほぼ同じです。


「たしかにランクルとよく比べられる車だけど、比較すると、サファリは変わらず無骨で一本気で、走破性は一級品だったけど、それ以外の細かい部分でのアップグレードが、時代に追いつかなかった感があるね。内装の高級感だったり、ATが4速のままだったり、パートタイム4WDのままだったり。紛争地帯みたいに『とにかく悪路で使える車を』って状況ならともかく、日本じゃ『それならランクルの方が』って言う声に負けちゃったんだと思う。……いい車だと思うんだけどね、サファリ。だから未だに中東で売られてるわけだし」

「実際おれも話聞くまで知らなかったわけだしね、サファリ。ーーそういえばこないだ、タイヤショップのおにーちゃんに『すみませんこの車、車種は……?』って訊かれてたよね」

ランクルだったら分かってもらえたのかなあ……」


ぼやきながら千葉の県道を突っ走る新山さん。


あーだこーだ言いながらも、憧れのサファリをひたすらに満喫していたようで、新山さんの過去ツイートを見返す限り、雪山も行ったし普段の足にも使ったし、全国あちこち走り回っていたようです。

 

4駆と車中泊はサンバーで、6気筒エンジンの滑らかさはレンタカーのR34スカイラインで、杢目調の豪奢な内装はフーガで経験している為、仕様の新鮮さに大きいものはなかったかもしれませんが、憧れ叶って乗れた車ということもあり、『キング・オブ・オフローダー』と謳われた日産のフラッグシップオフロード車を存分に味わっていたのを、私は傍目で眺めていました。


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※キング・オブ・オフローダーを存分に味わい尽くす新山氏


そんな新山さんが最後まで背筋を震わせていた問題が、1つ。

 

燃費です。


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「ベストは7.7km/Lでした。最低3.3km/L」

「……今日おれんちに迎えにきてもらうのまでに、2Lのガソリンが消えてたのか」

「そうなるね。ちなみに燃料タンクは95L。街乗り燃費だと、房総半島を一周したら帰って来れない計算になる」


一度給油に立ち会った際、「やった!6.5km/L超えた!」と喜んでいるのを見て、結構な狂気を感じました。レギュラー仕様なのは焼け石に水と言ったところです。

 


唯一の弱点である燃費の問題から、買ってしばらくは「遠出の腰が重くなるんじゃないか」なんて懸念を漏らしていましたが、蓋を開けてみればそんなことは全くなく、2021年11月28日に納車されたこのサファリは、わずか9ヶ月で約15,000kmを走破していました。


購入時点での走行距離は203,000km。紆余曲折を経て、2022年8月6日に手放した時点での走行距離は218,000km。週に416km走っている計算になります。40万円近いガソリン代を、たった9ヶ月で飲み尽くしたサファリ。

 

以降、燃費以外のサファリの特徴です。

 

チャームポイントその1。エンジン搭載位置の低さ。


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「レベルゲージの位置、やたら低くない?」

「そう! よく気づいた! サファリは直列6気筒のOHV積んでんだけど、こいつはね、エンジン上部にカムシャフトがない分、搭載位置が低くなるんだよ。コルベットとかもこの形式。この低重心が走りの安定感を生んでるのかもわからんね」

サファリのボンネット高で低重心も何もないのではないかと思いますが……。

 

チャームポイントその2。カセットテープが聴ける。

 

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高中正義は分かるけど、なぜ日本の民謡が……?」

「こないだハードオフで買ってみた。いいよこれ。淡々と走ってるときに落ち着く。掛けようか?」

夕方のC2高架下に響き渡る民謡。シュールです。

 

チャームポイントその3。サンルーフとウィンドウのデカさによる解放感。

 

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コペンで横に停められたときの写真。デカイ。

 

「すげえ。ウィンドウの位置がこんなに低いんだ。肘が置ける。おまけにサンルーフの先端が頭より先にあるから、全開にするとハチャメチャに解放感がある。生粋の深いデカ目のオープンカーよりオープンカーしてる気がする」

「その例えはよくわかんないけど……まあ、かなり気持ちよくはあるよね。夕方とかは開けて走りたくなる」

私が今まで乗った車の中でコペンを除くと一番の解放感です。これは羨ましい……。

 

チャームポイントその4。バッテリーカバー。

 

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名著『新型サファリのすべて / 別冊モーターファン』を東雲のスーパーオートバックスで発見した新山さん。熟読していたところ、サファリにはバッテリーの冷却を補助する『バッテリーカバー』なるものが純正部品として付いているはずが、この個体は交換作業時の不慮なのかなんなのか、カバーが付属していなかったとのことです。

さっそく部品を発注し、独力で取り付ける新山氏。

 

「これでまた1つサファリが完璧に近づいた。スーパーサファリ(※)になる日も近い」

「…………」

 

※ドバイの大富豪がHKSに発注した1,000馬力仕様のY61型サファリ

 

 

他にこういうオフ車に乗っている人間がいないこともあって、助手席に乗っているだけでも相当におもしろい車でした。

 

視点の高いハイエースやキャラバンと言ったFRのワンボックスを運転していた時の楽しさに近いです。パワーも大したことはないのに、悠々とのんびりと走ることができます。一度はこいつでキャンプに行ってみたかったものです。

 

「強いていえば重心の低いスポーティーなクーペやセダン、オープンカーには心惹かれる」と言いながら、燃費以外にとりたて不満点は見当たらなかったようで、燃費問題に関してもある意味計測を楽しんでいた部分が見受けられました。

 

フィーリングも合うみたいだし、しばらくはこのままいくんだろうなあと思っていた、2022年の夏。

 

私の買い替え検討が盛り上がりの兆しを見せていた頃から、事態は動き始めました。