ー ORDINARY ー

※ 登場人物はすべてフィクションです。車と楽器とフィクションに塗れた会社員の日常を、のんべんだらりと書き綴っています。

梁井、代車に乗る(BMW 530i E61型)。

張り切って一週間の夏休みを取ったにも関わらず、キャンプ道具を満載して出発したその初日に車がぶっ壊れたこともあって、ショップからは(不可抗力ではありますが)慰謝の言葉と、ありがたいことに早急な代車手配をいただきました。


E型世代最後の5シリーズツーリングです。


BMW 530i E61型(2005年式)

 

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エンジン:N52B30 直列6気筒 2,996cc 自然吸気
ボディサイズ:全長 4,855× 全幅 1,845 ×  全高 1,470 mm

ホイールベース: 2,890mm

トレッド:前/後 1,560/1,580mm

タイヤサイズ:245/40R18

車重:1,780kg

最高出力:258ps(190kW)/6,600rpm

最大トルク:30.6kg-m(300N・m)/2,500-4,000rpm

最小回転半径:5.7m


F30より一回りデカい車です。


代車というのはおもしろいもので、私の周りでは大体の場合『世代落ちのEセグメント車』が貸し出されます。『人と荷物がそこそこ積めて車格も高い』ことから、愛車に乗れずに意気消沈している顧客を慰める効果が高いからだと思われます。私の友人のR172型SLK55乗りは代車にEクラスセダンを当てがわれた結果、多彩になったアンビエントライトにテンションをぶち上げながら、ピンクだ紫だ怪しい色に光らせては友人知人を乗せて走り回っていました。


一方、『代車にガソリンを食わせたくない』という愛車原理主義者向けに、プリウスやミライース等、燃費命の車を選べるパターンもあるそうですが……、ともあれ、普段と違う車に乗ることが出来るこの機会は、中々に貴重なものです。


加えて、530i搭載のN52B30エンジンは、私のアルピナと同排気量かつ同様にバルブトロニック搭載型で、大きな違いはポート噴射であることと、NAであることくらいです。


同排気量のNA・ターボ比較が出来ます。世代は10年近く離れていますが……。


そんなわけで、落ち込んでいてもチャージパイプが自然治癒するわけでもないので、私は気持ちを切り替え、E61型530iを一週間堪能することにしました。



<デカい>


結論から述べますと、私はこの車を経て「次買う車も出来ればDセグメント以下にしよう」と思うに至りました。デカいです。

 

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※E46と並ぶE61。デカイ


F30より、3cm広く、20cm長いです。普通に乗ってる分にはそこまでデカさを感じないので「余裕じゃん」とか思っていたら、前からデカいトラックが来た際に左に寄り過ぎて、縁石でタイヤサイドを擦ってしまいました。大反省。ショップには申し出済です。


挙句に、ホイールベースも8cm長いので、狭い出口だと、内輪差でサイドシルが縁石に乗り上げそうになります。コペンのときのように「無造作に曲がって何とでもなる」感はありません。


狭い駐車場なんかに行くと、鼻先とケツと幅に慣れないうちは、据え切りにならないような切り返しに気を使います。


ある意味では、「コペンの小ささに頼って鈍り狂っていた車両感覚のままDセグセダンに乗り換えて、いつぶつけてもおかしくなかった状況から、代車でさらにデカい車を運転したことで己の運転の下手さに気づいた」ところがあります。車の乗り換えは、こういうのに気づくきっかけにもなりますね……乗り換える前に気づけという話ですが。


ただ、デカさについては「サイズをバッチリ頭に入れて運転すれば切り返しの面倒はかかるけどぶつけることは基本ない」はずなので、「F30が小さい」と思えるようになったら、おベンツさんのEなりSなりに乗ってみたいところです。W222世代がね、好きなんですよ…。

 

<低速トルク寄りのNAエンジン>

 

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そんなに速くはないですが、これは比較対象が悪い気がします。


シフトダウンして踏み込んでも、ドカンとは加速してくれません。NAですがトルクは低回転寄りです。


調べてみたところ、元々バルブトロニックは、スロットル常時全開という特性からレスポンスは向上するものの、バルブにリフト量を変化させる機構を付けることで吸気バルブが重くなる為、高回転が苦手と言われており、この第二世代から改良されて、何とか7,000rpmまで許容されるようになったとのことです。とはいえ、元々の特性と、時代柄と、Eセグメント車の性質も踏まえて、この車も低速トルクよりにセッティングされているものと予想します。それでも最大出力はレッドゾーン手前の6,600rpmか……。


なお、この車を運転していて、コペンの影響で「3,000〜4,000rpmでアクセルを抜く癖が付いていた」ことに気づきました。すっかりターボ野郎の身体です。B3のトルク特性がやたらとフラットなので、現在は流石に矯正されているものと思われますが……。

 

 

<どっしりとした硬い足>


タイヤはナンカンのNS-20を履いてました。新品っぽいです。18インチ。

 

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正気を保った大きさだなと見ていてしみじみ思います(当方リア20インチ30扁平指定)。


乗り心地は、硬めで揺れの少ない、アウディA3アルピナに比べても、ストロークが短い感じがします。


強い入力が入ったときも硬さで抑える感じ、そこそこ腰にくる衝撃です。アルピナのいなし方は、スポーツモードでもうまいと思います。


ただ530iも、高級車らしいどっしりした乗り心地で、腰高感もありません。


「デカい段差での初期衝撃と、そのときのストロークの長さの違いがあるけど、ドイツ車全般、振動の収まりはみんないい気がするね」というのが、同乗した新山さんの談です。


プラス「革シートがめっちゃいい。ズレない」とのこと。高級車の本質っつーのは、パワー云々より、多分広義の『乗り心地』なんでしょうね。

 

 

<デザインが超パワフル>


この車のデザイン、クリス・バングルがチーフデザイナーを務めた時代における、ピニンファリーナ出身のイタリア人である、ダビデ・アルカンジェリの作品とのことです(しかもこれが遺作となった)。

 

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エクステリアに関しては、「えらいイカつい顔してるな」というのが一番の感想で、好みかと言われると答えに窮しますが、「BMWの転換期となった時代の代表車」と言われると、趣深さを感じるところでもあります。

 

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フロントフェイスは、後輩たるE90同様、縦のデザインラインが目立ちます。釣り上がったライトと、クッキリと切り込まれた瞼下、目頭の彫り込み。ボンネット下からサイドウィンドウ、リアテールランプ上端まで流れるデザインラインが厳ついです。

 

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続いてリア。写真はセダンタイプです。

 

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リア・トランク周りのデザインは、建築家フランク・ロイド・ライトが1936年に設計したアメリカの個人宅『落水荘』がモチーフとのことですが、どの辺がその影響なのか私にはさっぱり分からず、前世代にあたる新山のE46や、後輩にあたる私のF30とひたすら比べてみたところ、「トランク開口部がストンと落ちておらず、トランク周りが切り込まれたようなデザインになっている」点が特徴なんじゃないかと愚考しています。特にテールランプ下。

 

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90年代のセダンのリアって、わりとストンと落ちているデザインですよね。もしかしたら、トランク周りの造形が複雑になった、その走りの車なのかなと、これを見て感じたりしています。


続いて内装。

 

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ドリンクホルダーは後のE90と同様、格納型です。この位置わりと使いやすいと評判がいいみたいですね。普段仕舞える、というのもスタイリッシュで好きです。


あとこの車、ドア周りのスイッチ配置が謎です。

 

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ドア側に斜めに付いています。

 

ハンドルから手を平行に動かせばいいので便利と言えば便利な気がします。数回乗った程度では慣れませんでしたが、デカイ車は空間に余裕があるはずなので、これは中々機能的だと思います。面白かった。

 

 

幸いにもアルピナN55用純正チャージパイプの在庫が国内にあったようで、一週間足らずで交換が完了したおかげで、E61との逢瀬も数度の乗車で終わりましたが、キャンプ道具と着替えを満載してなお余裕のあるワゴンタイプの利便性と、「3.0LもありゃNAで十分」という当たり前過ぎる事実を認識できました。

 

ただ、ボディシェイプの好みでいうと、セダンとして開発された車はやっぱりセダンがいいですね……。ワゴンを買うなら、レヴォーグみたいな初めからワゴンとして開発されたモデルが良いです。スバルのアイデンティティ的にまずあり得ないでしょうけど、アレ、ディーゼルで出てくれないかな……。

 

そんなわけでありがとうE61。またお世話になることがあればよろしくお願いします。

 

次はオーバーヒートの回です。続きます。