ー ORDINARY ー

※ 登場人物はすべてフィクションです。車と楽器とフィクションに塗れた会社員の日常を、のんべんだらりと書き綴っています。

コペンローブ、北海道に行く。その9。

9日目。2016年の8/12(金)。晴れ。


日付が変わる少し前。


間も無く着岸するので車へ乗り込むようにとのアナウンスが流れ、雑魚寝部屋でのうたた寝から叩き起こされました。

 

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絞ったら疲れがドバドバ溢れそうな、ボロ雑巾みたいな体を引きずってコペンの元まで辿り着き、運転席に乗り込みます。現在地は陸奥湾内の青森港付近。あとはもう兎にも角にも帰るだけです。


0:00。日付が変わる同時に青森港に着岸。上陸します。


半端に寝たせいか、疲労と眠気が一気に溢れてきました。北海道に着いてから、途中で昼寝はしているものの早朝から晩まで走り続けてもう7日目です。適当なコンビニで夜食を仕入れ、仮眠。体力の回復を待ってから再出発します。


未明、青森インターから東北道に乗り、以降は東北道をひたすらに南下。無事帰路につきました。


走行距離約700km。青森からの東北道走破は今まで計3回経験しましたが、まあひたすら真っ直ぐで、何もない景色が続きます。急ぐ理由もないので、屋根を閉めてのんびり走りながら、道中つらつらと、今回の旅行を振り返っていました。


結論から言って、走行中の景色が一番思い出に残っています。


岩見沢の晴れた国道、パッチワークの丘の花畑、霧の中の釧路湿原。早朝のオホーツク海を臨む国道239号線、エサヌカ線の水平線、宗谷岬間近の丘の道。オロロンラインの直線と、ニセコパノラマラインの緑と青……。


今でもよく覚えているのは、この辺りを走行中のふとした景観です。到着した場所の景観は、写真を撮ってるので後で見返して記憶に残るんですが、走行中や信号待ちの、何でもない情景がいつまでも頭に残り続けることがあります。


一体何が鍵になって頭に刻み込まれるのか、いろいろ考えてみたんですが、一番は「遠くに来てしまった感」だと思います。


子供の頃、RPGで終盤のダンジョンが無性に好きでして。出発点から物理的または概念的に「遠い」場所のマップを散策してるときが、一番ワクワクしていた記憶があります。ゼノギアスの雪原アジトとか、クロノクロスのタイムクラッシュ爆心地とか、FF9の記憶の場所とか、スパロボαの雷王星付近とか深宇宙ステージとか。


一方現実はというと、子供の頃なんてそうそう遠くまで行けるもんじゃありません。東京に出るのさえ自分にとっては大遠征で、一度家族に連れられて渋谷のNHKスタジオに行ったとき、「とんでもない大都会へ来てしまった」とソワソワしたことをよく覚えてます。他にも、自由研究の為に上野の博物館へ行ったついでに秋葉原をふらついたとき、都内のどこかの児童図書館に連れていかれたときなど、「自分の生活圏の外に出た」ときの映像は、わりと鮮明に覚えています。


子供の頃は行けなかった「遠い場所に行きたい」というのが、どうも自分の原体験としてあるようです。


旅行は根本、この原体験の感覚を追いかける為にやっていると言ってよく、「チェックポイント到達と移動そのもの」が目的で、逆にいうと現地で何をするという目的意識が欠けているのが現状です。


今後は行き先の背景を調べて、もうちょっと現地そのものを味わって帰りたいと考えてますが……、今のところこの旅行はこれはこれで満足しています。地図を塗りつぶして行く感じ、自分のテリトリーをゆっくり広げていっている感じが、自分にとってはとても好きです。


15:00頃、無事自宅に到着。

 

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ガソリンスタンドの高圧洗浄機を使って洗車を済ませます。洗車完了までがツーリング。その足で駅前に出向き、惣菜とビールを買い込んで、事故なく帰還できたことを祝って一人宴を開始します。


コペンを買って以来、いつか行こう行こうと思っていた北海道ツーリングですが、2年目で達成できました。人生やったもん勝ち行ったもん勝ちなところあるよなあ、というのが、この車に乗り始めてしみじみ感じていることです。これからもなるべく、行きたいところには行っておこうと思います。



最後に。これをオチにするのもどうかと思うんですが、自省の為に書いておきます。この旅行中、私は警察のご厄介になりました。罪状は北海道の敵、スピード違反です。


場所はオロロンライン、たしか留萌手前の市街地に入ったところだと思います。


以前書いた通り、北海道は街と街が離れて点在していて、走り続けていると「今街に入った」とわかるポイントがあります。ここが問題で、街の間が大抵60km制限、街に入ったところから50km制限、となっていることが多いのですが、私はこれをボケっとしていて見逃しました。後ろからスピーカーで止まれ止まれと声がして、パトカーがやってきます。


「おにーさん旅行中?  いやー僕が捕まえた中で一番遅かったんだけどね。17kmオーバー。15km以上だとさすがにねー」


全く嬉しくない言葉ですが、言っても詮無いことなので大人しく切符を受け取ります。街に入ったところでスピードを落とす。分かっちゃいたのですが、完全に気が抜けていました。

 

まあ逆に、この経験のおかげと言ってはなんですが、これ以来殊更に道路標識を気にするようになりました。一時停止はもちろんのこと、速度制限標識をよく見て、街中に入ったときには意識してギアを一つ落とし、アクセルを戻す癖がつきました。おかげさまで警察のご厄介になったのは今のところこれが最後です。


後日、新山さんと互いの北海道旅行報告会の最中にこの話をしたところ、


「あー、そういう経験あるとやっぱり運転変わるよね。……おれもちょっと考えようかな」


後日、奴のシルビアにはレーダー探知機が取り付けられていました。「あるとやっぱり気をつけるようになる」とのことです。皆さん、安全運転でドライブを楽しみましょう(自省)。


終わります。