ー ORDINARY ー

※ 登場人物はすべてフィクションです。車と楽器とフィクションに塗れた会社員の日常を、のんべんだらりと書き綴っています。

コペンローブ、仁賀保高原に行く、その1。

景色が良くて、遠くて、行ったことがないところ。

 
遠出する際はいつも上記の条件で目的地を探しているのですが、そういえば日本海側ってあんまり行ったことないなあ、と思うに至りました。豪雪地帯だから夏の間に行っておいた方がよさそうだし、景色も良さそうです。というわけで、今回は秋田県仁賀保高原の風力発電所に行ってきました。
 
総走行距離1,121km。全行程ほとんど快晴で、空と海の青、雲の白、山の緑と、景色の鮮やさが印象的なドライブでした。
 
 
土曜日の夜、日付が変わる頃、ガソリンを満タンにして出発。
 
涼しい夏の深夜、お盆の東北道を、オープンにしてひた走ります。
 
那須高原SAで休憩し、ちょっとシートにもたれて仮眠を取るつもりが、今回も気づいたら朝になってしまいました。2シーターでシートも倒せず、寝心地は最悪なのに、毎回車内で熟睡してしまうのは何故だろう。ちなみにうっすらと窓を開けて寝ると、暑苦しい夏の夜でも換気が出来てそこそこ快適に眠れます。
 
気を取り直して再出発。
 
朝方、雨に降られる中、村田JCT山形自動車道へ合流。山形市に入った辺りからは急に晴れ始め、普段あまり馴染みのない、東北内陸部の街並を眼下に眺めながら走ります。
 
月山ICから湯殿山ICの区間は未開通らしく、一度下道へ。国道112号、通称月山道路に入ります。風光明媚なワインディングを、標高1,984mの月山を右手に眺めながら走るこの区間は、非常に気持ちが良かったです。
 
再び山形道に乗り、鶴岡JCTから日本海東北道へ。現状この区間の終点である、酒田みなとICまで北に向かって走り、下道に降ります。
 
この区間も、進行方向の先に雄大な鳥海山を臨む、異常に景色のよい高速道路でした。真っ直ぐに伸びた車線、空の青と日本海の青、鳥海山の緑。たまにフラフラと飛んでいる鳥。ここはまた走りたいです。道中、前方に大学生らしき野郎二人組が乗った、真っ白できれいなインテRが走っていたのをよく覚えています。
 
以降、国道7号線羽州浜街道を日本海に沿って北上し、目的地であるにかほ市を目指します。

 
…それにしても、走行中は写真が撮れないので、記録が残せるドライブレコーダーがほしいなあと最近よく思います。車で遠出する場合、結局一番記憶に残る光景って、運転中のフロントガラス越しの景色だったりするんですよね。頭の中に残ってるからいいんですけど、日本海東北道から眺めた鳥海山の景色は、媒体使って記録に残しておきたかったなと思いました。
 
 
昼近くにもなるとさすがに日差しがキツイです。高速走ってる間は気にならなかったのですが…。帽子を装備し、熱射の下をオープンでダラダラと走ります。
 
東北に来て驚いたのは、とにかく風車が多いこと。風況がよいらしく、日本海沿を移動していると、大体風車が建っています。
 
スマートジャパン・エネルギー列島2014年版(5)秋田
 
日本海東北風力発電所マップ
 
地図を見ていただけるとわかるように、日本海沿いを走っていると笑えるくらいの風車が立ち並んでいます。最初のうちこそ見かけるたびにはしゃいでいましたが、さすがに慣れてきて、気がつけば海沿いの景色の一部と化していました。

空腹を感じ、道の駅にかほの近くで昼食を取ることにしました。
 

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 せっかく遠くまで来たので、奮発して海産物をツマミにオールフリーで一杯やることにしました。名物らしき岩牡蠣、サザエ、ウニ。牡蠣飯が味が染みてて美味しかったです。
 
そのまま海沿いを走ればにかほですが、ちょっと遠回りして、鳥海ブルーラインを走ります。山から臨む日本海と、にかほ市の街並がとんでもなく美しかったです。
 

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それにしても、ワインディングはともかくとして、峠の走り方が未だによくわかりません。別に速く走りたいわけではありませんが、どうもスムーズに走れないのです。ヒルクライム、ヒルダウンはどんなイメージで運転すればいいのやら。
 
 
山を下り、街中に下りて、気がついたらにかほ市に入っていました。のどかな田舎道を、看板を頼りに、目的地である仁賀保高原へ向かいます。
 
続きます。
 
 

安藤、アウディA3を買う、その2。

物が高くなる理由。

 
要は人件費か材料費、どちらかが高くなるから商品も高くなるわけです。ブランド、希少価値、利率の問題などを除外すると、物が高い理由というものは、下記の二点にタイプ分けされるんじゃないかと思っています。
 
1.性能がよい
2.作りが細かい
 
1をコスパがよいもの。
2を上質なもの、と呼んでもいいかもしれません。
 
何が言いたいかと言うと、世に言う高級車の「質感がよい」「だから高い」という理由は、作り込みの細かさ、工程の複雑化、それによる人件費増によるものなのかなと改めて感じました。「そんなん言われないとわかんねーよ」という、性能に直結しないところにまで拘ったものに、価値を感じてお金を出す。これがアウディに行って、いろいろ説明を受けた感想です。
 
 
日曜日、近所のアウディディーラーに徒歩で行ってみました。
 
この日は何も考えずに、安藤をダシにしてA3を眺められればそれでいいや、くらいのつもりで、アポなしで突撃しました。輸入車ディーラーといえど、国産とそんなに変わりゃしないだろうと気楽に考えて突撃したのですが…
 
ウィーンと自動ドアを潜ると、吹き抜けの天井、木目調の内装、涼しくて静かな空気がお出迎え。
 
お客さんが何人かいて、会話もしているのに、非常に静かだったのをよく覚えています。静謐、という言葉が脳裏に浮かびます。「…なんか、やっぱ、違う気が」と気後れしていると、受付のおねーさんが「いらっしいませ!」と笑顔満面で近づいてきてくれました。
 
「展示車のA3を見せていただいてよいですか」と事前に準備してきた台詞を吐き出すと、「もちろんです!こちらへどうぞ!」と車の前まで案内されます。恐縮しながらついていく私。
 
少し悩みましたが、この時点で購入前提ではない旨を伝えることにしました。知人が購入を検討していて、私も興味を持ったので少しだけ見せていただきたい、という冷やかし宣言にもかかわらず、「座席に座っていただいても構いませんので!」と言い添えて去っていくおねーさん。お礼を言って、どれどれと見物にかかります。バム、と音を立てて、ドアをオープン。
 
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「お、おおぅ…」とだらしのない声が漏れました。内装、たしかにかっこよいです。ソフトパット、ステアリングの手触り、ナビを格納式にしたことでスッキリとしたインパネ上部、エアコンの吹き出し口、シフトノブ、随所に散りばめられたシルバーの装飾…。
 
詳しいことはまるでわかりませんが、見てすぐに「ああ、いいな」とは感じました。
 
週明け安藤に会ったら、よかったよと伝えよう。ひとしきり堪能して運転席から這い出ると、今度はニコニコした男性が、「いかがでしたか?」と話しかけてきました。「お知り合いの方がご購入を検討されているとか…」
 
後で名刺をいただいたら、なんとこの人店長さんでした。曰く、「購入前提ではないと言いながらも、妙にマジマジと見ていたので気になって声をかけた」とのこと。「アウディのどんなところにご興味があるのですか?」と尋ねられたので、「内装の質感が高いという話をよく聞くけど、実際に質感が高いというのがどんなことを示すのか、よくわからない」と正直に答えると、丁寧に説明してくれました。ありがとうございました。
 
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「基本的に細かな装飾に拘っていることが理由ですね。たとえば内装。ほとんどの部分に、このようにシルバーの装飾が入っています。これがまあ、加工に大変な手間がかかるんですよ。だから値段も高くなる。ただ、アウディはこういったところにやたら拘るんです。複雑な造形そのものが目的ではありませんが、上品なデザインに仕上げるための手間は惜しまないわけです。それが価格に反映されます」
 
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「一番わかりやすいのは、Aピラーの付け根部分ですかね。ここ。切れ目がちゃんと付け根の部分にあるでしょう? 普通の車はこうじゃないんですよ。たとえばこの某Aクラス」
 
「ってベンツじゃないですか!なんでここにあるんですか!」
 
「比較検討される方のためにレンタルしてるんですよ。ほら、こちらは、ピラーの付け根が変なところにあるでしょう。変というか、ほとんどの車はこうなんですけどね。ここを揃えると、見栄えがだいぶスマートになるんですよ」
 
他には、ボルボのV40と、おそらくこちらはA4との比較対象でしょうが3シリーズが置いてました。
 
現行3シリーズは全セダンの中で世界一かっこいいと思ってるのでしばらく眺めてしまいましたが、さすがにあれも乗せろと言うのは気が引けたので我慢。いつかは運転してみたいものです。
 
「それと、特徴的なのはルーフとピラーの継ぎ目ですね。処理が綺麗でしょう。ここを綺麗にするの、ものすごく難しいんですよ。他車だとカバーを付けて隠しているパターンも多いんですけどね。他にも、ボディのアクセントになっているライン。触っていただくとわかるんですが、エッヂの立ち方がすごいでしょう。これがあるので、アウディはただ丸っこいイメージじゃなく、力強さも感じられるんですね」
 
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「あとはやっぱり、こういったダイヤルの操作感覚です。ほら、このクリック感!比べてみてください、全然違うでしょう!人間工学に基づいた操作感、手応えの心地良さを追求して、こうしたボタン一つ一つにも心血を注いでこだわり抜いているわけです!」
 
 
正直、見てすぐに分かる部分、言われないと気づかない部分、言われても全然違いが分からない部分(ダイヤルのクリック感の違いは、どうしても違いが分かりませんでした)、いろいろとありましたが、大まかなイメージは掴めました。アウディはとにかく細部の処理に拘っているようです。
 
高級腕時計なんかもそうですが、世の「高いもの」というのは、言われないと分からないような部分にまで細かーく手が入れられている印象があります。そういったものに普段から触れることで、見逃しがちな細かーい部分にまで目が利くようになるのかもしれません。少なくともアウディは、それを価値と見なしているように感じました。
 
残念ながら私は言われてもほとんど違いが分かりませんでしたが、こういう価値観もあるんだな、と思えたのはおもしろかったです。
 
実際に試乗もさせてもらえたのですが、
 
「乗り心地は硬めだけど不快ではない」
「エンジンの始動音がやたら静か」
「停車状態からの出足は少し鈍い」
 
というのが感想でした。何せ比較対象がコペンとシルビアなので、最近の車は普通こうなのか、アウディがすごいのか、ATとDCTとCVTは加速の感じがどう違うのか、全然分かりません。今度車を買い替えるときは興味ある車はなんでも乗ってみることにします。
 
 
最後に。私のディーラー突撃から一週間後に、安藤はA3 sportsback 1.4TFSIを購入したそうです。私がお邪魔したディーラーで。
 
「ちょっと待ておまえ家どこだ!」
 
「ここです」
 
「近っ!なんで最初に言わないんだよ!」
 
「僕だって梁井さんちがどの辺かなんて知りませんでしたよ」
 
色は展示車と同じスクーバブルー。何となく、安藤は白いセダンを買うつもりかと思っていたので意外でした。曰く、「僕もアウディは白のイメージがあったんですけど、ちょっと大人っぽすぎる気がしたので…」とのこと。
 
納車は9月上旬になるとのことです。納車したら皆で遊び行きましょうといってたので、車が来たら写真撮らせてもらおうと思います。
 
しかしまさかホントに買っちゃうとは…。

安藤、アウディA3を買う、その1。

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現場研修中お世話になった方々とは、車の話をする機会が結構ありました。

 
セリカ乗りのラフェスタ課長。土井さんの愛車をランエボと間違えていたアテンザ主任。念願叶って買ったフォレスターをぶつけられ「フォレスター(旧型)がフォレスター(新型)になった」と遠い目をしていた同期。少女時代にどハマりし、愛車のヴェルファイアをテヨンの痛車にしようか迷っていた職人さん。
 
他にもいろんな人がいましたが、今回は安藤という後輩と、アウディの話をします。
 
 
川崎の同期、安藤。細身で控え目な性格ながら、不思議と毎月結構な受注額を取ってくる営業マン。
 
この男、ヘタレなのか度胸があるのかよくわからないところがあり、先輩に勧められるままアウディのディーラーに行き、勧められるままA7に試乗させられ、900万円オーバーの見積もりをもらって帰ってきたという伝説を持っています。
 
「なんで見積もりもらったの!」と尋ねると「いや、いい車だったんで…」と答える辺り、結構な大物なのかもしれませんが、本人もこれ以来アウディは気になり続けていたらしく、先日私のフロアにやってきた際、ちょっとした相談を受けました。
 
「車を買おうと思ってるんですけど…」
 
「何。ひょっとしてA7じゃないだろうな」
 
「違いますよ。アウディアウディですけど。A3が欲しいんです」
 
A7のときよりやや現実的なターゲット。今回はどうも本気のようです。
 
「別に前回も冷やかしだったわけじゃありませんよ! 前からアウディは気になってたんで、輸入車ってどんな感じなんだろうと思って行ってみただけです」
 
「にしてもおまえA7は…。Eセグメントじゃん。2つくらい飛び越してるだろ」
 
「リアのデザインが好きですって話したら、せっかくなんで乗ってみませんかって言ってもらえたんですよ。買えないし、断ろうかと思ったんですけど、滅多にない機会じゃないですか
 
建築学科出身で、デザインも少し学んでいたという安藤。元々アウディの曲線的なデザインが好きで、迷っていたところでハイエンドクラスに触れたことで、アウディ好きが決定的になったようです。
 
「一年間追加でお金貯めて、ようやっとA3が予算内に入ったんです。それでもローン組むんで、支払いは結構キツイんですけど、それでも欲しくて…」
 
アウディかあ。正直高いよねえ。グレードは?」
 
「クアトロも気筒休止もいらないので、一番下のグレードで十分です。1.4 TFSI」
 
「ええと、…308万円か。オプションと諸費用付けたら400万円いくでしょ。 これ相当キツイんじゃない?
 
「キツイです」
 
「それだけ予算あれば他の車も選びたい放題でしょうが。四駆がいらないなら同じプラットホームのゴルフがあるし。国産は?」
 
Cセグメントが欲しいんですよ。そうすると、国産より輸入車の方が強いかなって。インプレッサとか、アクセラとかも好きなんですけど…。とにかくアウディに乗りたいんです!」
 
バーン、と机を叩く安藤。
 
「就職したら車買おうと思ってたんですけど、いざ買おうとしたら何買えばいいのかわからなくて。悩んでたとき、仕事帰りの夜に、A7を見たんです。初めて車に色気を感じました。迫力のシングルフレームグリル。Cピラーの緩やかな傾斜。上品に垂れ下がったリアテールランプ!もちろんA3とA7は全然違います。でも、フロントはちゃんとアウディのファミリーフェイスだし、リアはあれはあれで可愛らしくて好きだし。何より内装のデザインが、A7のエクステリアに感じたものと同じ色気があるんです!緩やかな曲線が…」
 
〜中略〜
 
「…わかった。おまえがアウディ好きなのはよーくわかった。で、何迷ってんの? 相談に来たって話だけど、それだけ好きなら買えばいいじゃん」
 
「いや…。金額が金額なんで、やっぱり誰かに背中押してほしくて…」
 
こういうところが安藤の安藤たる所以ですが、気持ちはよくわかります。人生で経験のないレベルで自分のお金を動かし、資産購入をするわけです。ビビって当然です。
 
「梁井さん、たしか家の近くにアウディのディーラー出来たって話してたじゃないですか。試乗とかしに行ってないんですか?」
 
「行くわけないじゃん。自分で買うわけでもないんだから。安藤こそ、そんなに気になるなら、川崎でも誘って試乗して来なよ」
 
「なんで川崎さんディーラー試乗に誘うんですか!」
 
「いや、その代仲良いから。こないだもラブライブ皆で見に行ってたでしょ。しかもその代で、多少なりとも車に興味持ってるの川崎くらいだし」
 
「誘うならもっと別の場所に誘いますいやそうじゃなくて! 試乗は、そりゃしましたよ。すごく楽しかったです。けど、舞い上がっちゃって乗り味とかよく覚えてないんです。梁井さん、最近車買ったばっかりじゃないですか。印象聞いてみたかったんですよ」
 
「おれだって乗り味なんかよくわかんないよ。サスペンションとかエンジンの仕組みもほとんどわかってないんだから。安藤の方が、理系だし調べればすぐわかると思うけど。…まあでも、いいんじゃない? 買っちゃえば。それだけ欲しくて、支払いの目処もついて、しかも乗って楽しかったなら、買わない方が絶対後悔するよ。万が一買った後どうしようもなくなったら、そのときは手放せばいいよ」
 
「はあ。そんなもんですかね」
 
「そんなもんです」
 
 
もうちょっとだけ考えてみます、と言って安藤は去っていきましたが、これ以来、「輸入車を買う」もしくは「質感の高い車を選ぶ」とは、一体どういうことなんだろうと考えるようになりました。
 
私の周りにも、輸入車乗りはいないわけではありません。年上の友人には、ゴルフ5、2代目TTを愛車にしている人がいます。
 
が、いずれも中古で、しかもかなり安く手に入れたと聞いています。プレミアム寄りの輸入車を、それも新車で買おうとしている友人は、さすがに安藤が初めてです。
 
国産と輸入車の特徴的な違いは何なのか。質感が高いとはどういうことなのか。動力性能に差はなくても、高い車はなぜ高いのか。
 
その答えを出すために、仕方なく、あくまで仕方なーく、私はアウディにA3の試乗を申し込むことにしました。嘘です。興味本位で輸入車乗ってみたかっただけですすみません。
 
そんなわけで次回、ディーラーでいろいろと話を聞き、実際に乗せてもらった感想と、安藤のアウディ購入記の顛末を書こうと思います。車にもいろんな価値基準、魅力があるんだなとしみじみ感じた試乗でした。興味が広がりました。
 
続きます。
 

川崎、ラブライブの映画を見に行く。

一ヶ月ちょっと前のある日。
 
外出からオフィスに戻ると机の上には伝言メモがあり、見るとそれは川崎からで、「営業一課の安藤くんに折り返してください」と書かれていたのですが、何気なく紙面を取り上げてみると、下の方に小さく\ハラショー/と書かれていました。
 
「…川崎さあ、おまえやめろよこういうの。他の人が見たら何だと思われるだろ」
 
「すみません。気持ちが来週まで抑えきれなくて…」
 
これだけで何の話か分かった人はおそろしいですが、何の話かと言いますと、今回はラブライブの話です。アニメの話が苦手な方には申し訳ありません。私は結構好きです。
 
「ああ、今映画やってるんだっけ? 駅にもデカデカとポスター貼ってあったよね。おもしろいの? ラブライブ
 
「最近の私の生きる喜びです」
 
川崎も私も、この年代では珍しくもないですが学生時代からアニメやゲームが好きな、いわゆるオタクです。が、お互い年も少し離れているし、就職してから熱も下がり始めていて、あまり川崎とこの手の話をしたことはありません。今回は余程誰かと話がしたかったものと見えます。土井さんは三次元アイドル専門だし。
 
Angelic Angelの先行プロモ見ました? いやあもうエリチが可愛くて可愛くて! あれはちゃんとかしこいエリチですよ!」
 
「エリチってのが、金髪で生徒会長でハラショーっていうキャラだっけ?」
 
「その子です。梁井さんラブライブ見てないんですか?」
 
「就職してから全然アニメ見てないんだよ。バトレイバーDVDで借りてきて見返したくらい。ーー川崎はラブライブ、2期まで全部見たの?」
 
「見ました。劇場版やることに決まってから、録画してたやつ引っ張り出して一気見しました」
 
ふと違和感を覚えました。
 
「…劇場版って、たしか先週公開じゃなかったっけ」
 
「そうですよ」
 
「川崎、先週も何かの映画見に行ってなかった?」
 
「行きました。ラブライブは今度で二回目です」
 
「……」
 
「そんな顔しないでくださいよ!いや、おもしろいんですよ映画! ただまあ、それだけじゃなくて、今回入場特典が毎週変わるんですよ。これがほしくて」
 
映画を見に行くと、先着順でフィルムなどのグッズがもらえるらしいです。
 
「ああ、ニュースで見たよ。『映画ラブライブの是非を問う、エゲツない集客方法!』とか、そんな見出しで」
 
「うっ…否定はしないですけど。でも実際、私たちそれで喜んでるわけですし、別に悪いことじゃないと思うんですけどね。それに、映画、結構よかったんですよ。梁井さんも見に行ってみたらどうですか?」
 
 
梅雨時で雨が続いており、遠出する気にもならなかったので、1期だけ見てから、久しぶりに映画館に行ってみました。

 

 

 
「どうでした?」
 
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「買っちゃってるじゃないですか!」
 
「にこにーが…にこにーが可愛くて…つい…」
 
「やはりそこに行きましたか…。ちなみに私は凛ちゃんが好きです」
 
 
というわけで久しぶりにDVDを借りて来て、タラタラとアニメを見ています。ラブライブ、キャラが可愛いというより、かなり笑いに走ってて結構おもしろいです。
 
映画のテーマソングであるAngelic Angel、この曲好きなんですよねー。劇中ニューヨークにて、和風の衣装で、華やかに歌われる曲ですが、曲調がちょっとチープな音色のギターチューンで、そのアンバランスな感じがとても好きです。音数も少ないし、結構シンプルなアレンジですよね。
 
 
ちなみに私は一度で満足し、映画の来場者特典も川崎にあげましたが、川崎は8/1現在、計9回見に行っているそうです。
 
「最近もう特典とかどうでもよくて、ただただ見たいんです。台詞全部覚えちゃいましたよ。凛ちゃん可愛いよ凛ちゃん」
 
 
けいおん以来、本気でオタ活(オタク活動の意。一定のアニメにのめり込み、関連グッズを買い漁ったり動画を漁ったり、心がぴょんぴょんしている状態を指す)をしているという川崎。ある程度瞬間的なものかもしれないとはいえ、ここまでのめり込めるのは、ちょっと羨ましかったりします。寝る間を惜しんで本読んだり、ゲームしたり、アニメを見たり、文章書いたりしたのっていつ頃までだっけ、と考えてしまいました。
 
フィクション関係からちょっと遠ざかっていたことに気づいたので、このブログでも、好きなフィクションについてちょこちょこ書いてみようかなと思います。まあ、このブログ自体が創作のリハビリでもあるのですが…。

梁井、アンプを買いに行く。

学生時代からダラダラとギターを弾き続けておりまして、このたび機材を買い足すことになりました。アコースティック用のギターアンプです。

 
アコースティック(生音)なのにアンプリファイド(増幅)させるという、ちょっとした矛盾のあるこの組み合わせ、プロの間でもいろんな考え方があるようです。たとえば生音に忠実に増幅することを大事にする立場。
 
または、音色にはある種の諦めを持って、しっかりと増幅させることと、弾き易さを優先する立場。
 
John Mayerがこの考え方だったのは意外でした。曰く、「アンプリファイドしてるのにアコースティックっておかしいだろ?」とのこと。
 
「サウンドホールで自然増幅するのでなく、ピックアップで拾った信号を電気的に増幅するスタイルを取る以上、もはや楽器のスタイルが変わっているので、音色調整にこだわりすぎるのはナンセンス。それなら高価なシールドを使ったりするより、プレイアビリティを優先して、ワイヤレスにでもした方がナンボかマシ」
 
と、ギターマガジンか何かのインタビューで読んだ覚えがあります。目からウロコでした。
 
この考え方が行き着くところまで行ってしまうと、渡邊忍のように「むしろそれはエレキの亜種」みたいな音をアコギで叩き出すようになるのかもしれません。あの音かっこよくて好きです。
 
話がズレましたが、私が今回アコギ用のアンプを買うことになったのは、友人の結婚式でソロギターを演奏するためです。
 
アンサンブルのサークルに入っているので、式の余興で合奏をすることはそれなりにありますが、ソロは今回初めてです。いい機会なので拝命することにします。
 
「どんな曲がいいの?」
 
「盛り上がるやつ!!!」
 
直前までアレンジしていたのがカーペンターズだったのですが、これはどうも使えなさそうです。バラードよりも明るい曲の方がいいとのリクエスト。
 
それなら、ちょっと古いけどみんな知ってて、結婚式の定番で、速くはないけど、明るく元気の出る曲にしました。特別好きな曲というわけではありませんが、弾いてみると意外と楽しい曲で、ノッて弾けそうです。
 
足りない元気はヘッドバンキングと音圧で稼ぐことにして、今回奮発してアンプを買うことを決意。休日、久しぶりに御茶ノ水の楽器街に向かいました。
 
 
電子機材に極端に疎い私は知りませんでしたが、アコースティック用のギターアンプ、かつエントリーモデルといえば、そんなに選択肢はないようです。この際音質無視で、オシャレな珍アンプでも探そうと思ってたのに…。
 
実際に店頭に置いてあったのは下記の二つ。

 

 Roland AC-33

 

FISHMAN LoudBox Mini Loud Box

FISHMAN LoudBox Mini Loud Box

 

 FISHMAN Loudbox mini 

 

愛用のSeagullを買ったお店に両方あったので、実際に音を出させてもらうことにしました。まずはフィッシュマン。
 
「結構音量出るんですね」
 
「60Wありますからねー
 
続いてローランド。
 
「…やっぱ比べると音飛ばないですね」
 
「30Wですからねー」
 
普通こういうのワット数低い方から弾かせるんじゃないかと思いますが、おかげで違いがはっきりわかりました。今回マイクを使わずに音圧を稼ぐことが目的なので、フィッシュマンでほぼ決まりです。が。
 
「…ん? あれ? これルーパー付いてるんですか?」
 
「あ、そうそう、付いてます付いてます。ちょっとなんか弾いてみてくださいよ」
 
てっきり高額フィッシュマンを勧める気なのかと思いきや、ローランドのループ機能について尋ねるといきなりノリノリになる店長さん。
 
G△7 / F#m7 Bm7
 
「よしっと。ポチッとな」
 
「お、おおー」
 
プレイバックが流れる中、適当にアドリブを合わせてみます。オーバーダブのボタンを押してくれていたらしく、これも録音され、即座にプレイバックされます。
 
「いいでしょいいでしょ。僕ルーパー大好きなんですよ!ちょっとフレーズメモったり、ボイジング確かめる時いいですよね!」
 
こういう自分の趣味を全開に押してくる店員さん、好きです。ルーパーフェチの方にあったのはさすがに初めてですが…。
 
たしかにアンプにルーパー機能が付いているのはフレーズメモとして便利ですが、このルーパー、フットスイッチも合わせて買わないとライブでは使い物にならず、それなら単体で買ってエフェクトボードに組み込めば済む話なので、今回は見送ることに。何より30Wは音量が物足りません。AC-60までグレードを上げると、今度はルーパー機能が付いてこない。
 
普段レコーダーのMTR機能を使っており、ルーパーは興味はあるものの持ってはいなかったので、残念がる店員さんに今度ルーパーを買いに来ることを伝え、フィッシュマンの購入を決めました。メーカー的にアコースティックのソロギターに合いそうですし、「安くてデカイ音がそれなりの音質で出るアンプ」という購入目的は果たせました。
 
数日後に郵送で届く予定なので、楽しみです。練習しなきゃ。
 
 
ルーパー使いといえば、私の場合まずカーキ・キングが思い浮かびます。
 


Kaki King - Gay Sons Of Lesbian Mothers Video HQ ...

 

 ソロギターでハイブリッドな人、結構増えてきてる気がします。そもそもが始祖のヘッジスからしてボーカル伴奏として使ったり多楽器と合わせたりとフリーダムなスタイルですが。

 


Arai & Kogure (the band apart) - "stereo" live at ...

 
新宿のタワーレコードでのインストアライブ。これは生で見ました。ルーパー、演奏の幅を広げるのにちょうどいい機材ですよね。アンプを買った記事なのに、ルーパーがほしくなってしまいました。

梁井、シフトアップの練習をする。

結局スムーズな運転というのは、アクセルワークがすべてなんだなと最近思います。
 
パーシャルスロットルという言葉があります。私はこの言葉を「アクセルの踏み具合を一定にする」ことだと勘違いしていましたが、実際は「アクセルの踏み具合を調整して、加減速のない一定速度の状態を作り出す」ことなのだとこないだ知りました。せっかくなので忘れないように書き記しておこうと思います。
 
先日志賀高原に行った帰り、254号で新山に運転を交代したときのことです。
 
 
「新山さ、シフトアップのとき、アクセルって戻してる?」
 
「そりゃもちろん。抜かないとガクンとするでしょ」
 
「いやでもさ、クラッチ切る前にアクセル抜くと、それはそれでガクンとするでしょ。だから、おれいつもクラッチ切るのとアクセル抜くの、ほとんど同時にやってるんだけど、これっておかしいのかね。ネットで調べたら、『クラッチ切る前にアクセル抜け』ってよく書いてあったんだけど、どうやっても上手くいかないんだよ」
 
「…ああ、わかった。それ多分、『アクセルを抜く』って言葉の取り方の違いだ。もちろんクラッチ切るときにはアクセル抜くけど、その前にまず、アクセルをパーシャルにしろってことだと思うよ」
 
「パーシャル…。パーシャルスロットルってやつ? やってるつもりなんだけどなあ」
 
「それ多分、アクセルの踏み具合を一定にしてるだけでしょ。そうじゃなくて、速度を一定にするために回転数を一定にするのが、パーシャルスロットル」
 
「…もうちょっと詳しく」
 
「車が加速も減速もしていない状態を作るわけ。加速中にクラッチ切ったら、いきなり前に進む力が途切れて前のめりになるでしょ。だから、ほんの少ーしだけアクセルを緩めて、回転数を一定に保つ。その状態なら、速度は一定になる。そこからクラッチ切って動力が途切れても、たいして衝撃こないでしょ。加速してないんだから」
 
「つまり…、加速する→アクセルを緩めてパーシャル(回転数を一定)にする→クラッチを切ると同時にアクセルを完全に抜く→シフト操作→クラッチを繋ぐ→ゆっくりアクセルオン?」
 
「そういうこと。ちょっとやってみるからタコメーター見ててよ」
 
…………。
 
「お、お、おおー。回転数の動きが山なりだ!」
 
「縦軸回転数、横軸時間でグラフにしてみるとそうだね。…あとは、再加速するときのアクセルの踏み方かな。2速に上げてからの加速なんか、相当丁寧に踏まないと、やっぱりショック出るもんね。ーーいやあ! やっぱりこういうの考えながら走れるから、MTは楽しいなあ!」
 
 
そんなわけで翌週、練習に出かけてみました。
 
練習と言いつつ単なるドライブなんですけどね。目的地は栃木県、ツインリンクもてぎ。ホンダコレクションミュージアムを見に行きます。ジャジャというバイク漫画を読んで行きたくなりました。
 
が、天気がいいからと昼前から出たのが失敗でした。暑すぎてエアコンが切れない。エアコンを付けると馬力が食われて、回転落ちがカミソリのように鋭くなり、それはそれで楽しいのですが、今回のような微細な練習はしたいときにはフラストレーションが溜まります。クラッチミートの感触も気持ち悪い。軽自動車の排気量だとこの辺り顕著です。
 
それでもオープンは気持ちいいことは気持ちいいので、往路はこの際、頭を空っぽにして走ることにします。練習は復路に後回し。こちとら無類の夏好きなので、陽射しの強さと蒸し暑さはさして苦にもなりません。のんびりと走ります。
 
2時間弱でツインリンクもてぎに到着。入場料と駐車代で2,000円取られますが、園内で使える500円チケットがもらえます。
 
入っていきなり水平対向のエクゾーストとスキール音が聴こえると思ったら、南コースでドライビングスクールをやっていました。プロドライバー山野哲也選手による、ハンドリングクラブという定期講座のようです。ポルシェが走ってる。見学自由とのことで、せっかくなのでしばらく見物します。
 

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エリーゼの全開走行を間近で見られたのが嬉しかったです。ロールしながらグイグイとコーナーを曲がっていきます。エメラルドグリーンのきれいなエリーゼでした。

結局一時間近くぽけっと見物をしてしまいました。日陰を求めて、コレクションホールに向かいます。
 

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パーシャルスロットルの練習にきた、という目的を完全に忘れておりました。楽しかった…。バイクは詳しくありませんが、あくまで自転車の補助であったエンジンユニットから、スーパーカブ、歴代マシンにGPマシンの展示まで、眺めているだけでホンダの歴史がわかりやすく頭に入ってきます。
 

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四輪の方も、S500、Nっころ、初代シビックなど、旧車がおそろしくらきれいに展示されてします。こうして見ると昔の車もかっこいい。個人的に一番テンションが上がったのはこいつです。
 

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ホンダ・バモス。
 
初代の正式名称は「バモスホンダ」らしいですが、ここでは「ジオブリーダーズ」での表記に準じます。神楽総合警備の出張くん4号、姫萩さんの愛車でした。こんな珍車、ここに来ないと拝むことはなかったかもしれません。屋根もドアもないオープンカー。運転手は運転がお仕事。入江以外では、夕ちゃんがジオブリで一番好きなキャラだったので、あのラストは悲しかったような嬉しかったような…。
 

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まだまだ貼り足りないくらい写真を撮りましたが、キリがないのでデモ走行の写真を載せて終わりにします。おもしろかった。
 
 
日が沈む頃には帰り着いている予定だったのに、南コースとコレクションホールで結局4時間以上滞在してしまい、出る頃にはすっかり夕暮れになってしまっていました。かといって急ぐ理由もないので、開き直ってこのまま水戸市の方まで回って帰ることにします。
 
涼しくなってきたのでエアコンを切り、シフトアップの練習に取り掛かります。

とにかく発進のたびに腰に意識を集中して、衝撃があったかなかったか、いつあったのか、それなら何が原因かを、あれこれ考えながら繰り返します。周りに車がいなければゆっくり、後続車がいる場合は1,2速である程度までひっぱって速度を乗せてやる必要がありますが、いろいろやってみて、結局はひっぱろうがさっさとシフトアップしようが、パーシャルが出来て、クラッチを繋ぐタイミングを間違わなければ、衝撃は来ないとわかりました。

定速状態を作り出すためのアクセルの戻し具合が思ったより微細で苦戦しましたが、おかげで感覚は掴めた気がします。とにかく、アクセルの戻しはほんのちょっとだけ。あくまで減速するのではなく、定速にすることを忘れないように。

あとはこれを日々繰り返して、低いギアで高回転のときでも、右足の調節一つで、定速状態にさっと移行できるようにしたいと思います。頑張ります。

コペンローブ、志賀高原で霧に襲われる、その2。

信州中野ICの料金所に着く頃には、雲が切れて晴れ間が覗いてきました。

もくもくと雲の立つ夕方の高速を、燃費走行中と思われるイエローのインプに引っ張ってもらいながら、オープンでゆっくりと走ります。BGMは適当にiPodにぶち込んでいたテイラースイフトで、シンプルなアコギの音色と山間の景色が、車内にロードムービー感を演出しております。気持ちいい。

が。

今回のドライブ、往路より復路の方がいろいろと起きました。


「うわ、すげー混んでる」

GoogleMAPをチェックしていた新山が、関越からの渋滞を発見しました。それなら下道でのんびり帰ろうと、適当なパーキングに立ち寄り、ケバブを食いながら迂回ルートを協議します。

「何も考えなければ17号なんだけど…。ああ、やっぱりこっちも混んでるね。関越が埋まってれば当然か」

「254号使おうぜ。バイパスより、幹線に並行して走ってる道のが空いてるから好きだ。最近走りやすい抜け道増えてるし」

「渋滞解消に国交相も自治体も金かけてんだろうね。…あ」

予定ルート上のGoogleMAPに、バッテンの表記を発見。交通規制です。

「254号も、17号もダメだ。迂回させられてる。多分これ夏祭りだな。うわー八方ふさがりになっちまった! こりゃ、大人しく関越乗って帰るか」

「ちょい待ち」

渋滞と分かっていて突っ込んでいくのを意地で避けたい新山が、ケバブを食い終わる頃に、ルート探索を終えたスマホ片手に道を指示してきます。

長瀞の方に抜けちまおう」

長瀞!? 遠回りすぎるでしょ、秩父抜けてくつもりかよ!」

「そこまで行かないよ。吉井ICで降りたら、県道41号、13号で南下して、皆野町まで下る。んで、国道140号を秩父鉄道に並行しながら東へ進んで、寄居で254号に合流。あとは川越で16号にぶち当たるまで走ればいい。距離もそこまで変わらないし、これ絶対渋滞しないぜ」

「…いやしないだろうけどさ。ほとんど山の中じゃんこれ。ちゃんと走れるの?」

「多分。職場のインテグラ先輩が、よくこの手の抜け道使うんだけどさ。広域農道とか。秩父のあたりは、結構走りやすくて快適だったって言ってたよ」

「ホントかなあ…」

新山の職場のインテグラ先輩と言えば、遊びにいくと常時車かバイクのどちらかをいじっているという剛の者で、特に愛車のインテグラTYPE-Rは、吸音材やカーペットをすべて引っぺがして乗っているような人らしいので、あの人の「走りやすくて快適」は、はっきり言って参考に出来ません。強烈な不安を覚えながら高速を降りて、指定ルートに入っていきます。

ところが、これが大正解でした。

狭すぎず広すぎず、田舎道あり峠道あり街中あり、走りやすくて楽しい道でした。観光客も帰ったあとらしく、交通量も少ないです。これは関越迂回ルートとして覚えておきたいと思います。254号に入ってから通り過ぎたホンダの寄居工場がデカくてきれいだったのが印象的でした。


254号に入ったところで、新山と運転を交代。

今回久しぶりに助手席に人を乗せて長距離を走りましたが、私の運転時、助手席の頭が結構前後していたことに気づきました。一方、新山の運転では、私の頭は全然揺れません。シフトアップ時の回転数合わせの精度が違うのかと思いきや、どうも原因はそっちではないようです。

あれこれ尋ね、説明してもらい実践してもらい、タコメーターの動きを見て、少しは大事なポイントをイメージ出来たので、この件はまた改めて書こうと思います。


最後のトラブル。

「あ」

「今度は何」

「…ガソリンが足りない」

ディスプレイの航続可能距離とナビを見比べたところ、「まあギリギリ足りるかな」くらいだった差が、「ひょっとしたらマズいんじゃないか」レベルの差になってきています。余裕をぶっこいたまま無給油で来たツケが回ってきました。

「どどどどどうすんの!もう家の近くまでスタンドないぞ!」

「とりあえず、近道かつ交通量の少ない道選んで走るよ。万が一のときは、端に寄せてJAF呼ぼう。けど、多分走り切れると思うよ」

航続可能と最短のスタンドの距離は、その差4kmほど。普通燃料系は数リットル残してエンプティマークが付くことが多いので、十分足りるとの判断です。

果たして、航続可能距離が0を指し、ヒヤヒヤしながらも数キロ走り、スタンドに駆け込んで燃料を入れてみると、28Lほどしか入りませんでした。コペンの燃料タンクは30L。ギリギリまで入れて33Lちょっとなので、やはり5L程度の余裕はあるようです。心臓に悪いので二度とやりたくありませんが、勉強になりました。

余裕はあるとわかりましたが、今後必ずエンプティ前に給油することにします。万が一、一般道でガス欠を起こした場合、他車に迷惑をかけることは必須ですので、以後気をつけます。

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スタンドに駆け込む直前、ステレオから奥田民生が流れてきて「さーすらーおーおおー」と歌い出したとき、新山が「勝ったな」と呟いたことをよく覚えています。彼の中で奥田民生は勝利のBGMのようです。お疲れさまでした。