ー ORDINARY ー

※ 登場人物はすべてフィクションです。車と楽器とフィクションに塗れたとある会社員の日常を、のんべんだらりと書き綴っています。

新山、ターボのシルビアに乗る。その1。

何度か書き記している通り、地元の友人新山の愛車であるシルビアS15は、オーテックバージョンという比較的珍しいモデルです。


日産の特装車製造を手掛けるオーテックジャパンによるカスタムモデルで、車検証にも「GF-S15『改』」とバッチリ刻まれている、言ってみればお上の認めた改造車です。

 

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※車検証の型式番号にバッチリと刻まれている『改』の文字


その最大の特徴は、一般的なシルビアのイメージに反する『NAチューンドモデル』であること。


つまるところ新山の愛車は、「高回転までぶん回して楽しい車」として開発されており、「高回転域での伸びにギア比を振っている」ということは、逆に「低速トルクを大なり小なり犠牲にしている」ことも意味し、この特性が新山を「次乗る車は街乗りと高速巡行が安楽な車」という思考に向かわせている一旦であると私は思います。


となると、「じゃあ逆にターボモデルはどうなのか」という話になってきます。新山曰く、


オーテックバージョンについて改めて調べてみたら、やっぱりターボのSpec-Rと比較されてることが多くてさ。読んでて気づいたんだけど、おれターボ車ほとんど乗ったことないんだよ。それこそ梁井のコペンと、先輩の34Rをちょろっと動かしたくらいで。ーー同じ車で、同排気量のNAとターボを乗り比べる機会なんて早々ないと思うんだけど、……よくよく考えたら、シルビアはそれが出来るんだよね」


おもしろレンタカー。

https://www.omoren.com


千葉県野田市に本店を構えるスポーツカー・MTカーに注力したレンタカー屋で、それこそRB26エンジンのGT-R三世代からアルトワークスまで、おもしろいところだとジムニーからガヤルドまで、「気になるけどなかなかじっくり乗る機会がない」車のラインナップが魅力です。私が車選びの出発点にNCロードスターを借りたのも、86を借りたのも、購入前の決心の為にコペンを借りたのも全部ここです。大変お世話になりました。


S15も当然のようにラインナップされており、グレードもやはりというべきか一番人気のSpec-Rです。


「というわけで、シルビアに乗り続けるにせよ乗り換えるにせよ、『ターボがどんなものなのか』はちゃんと知っときたいと思いまして。ふと見たら次の休みの予約が空いてたんで、6時間コースで借りてみることにしました。暇なら大黒あたりまで一緒にどうすか」


以上が、シルビア(NA)に乗ってシルビア(ターボ)を借りにいくという、珍行動の経緯となります。


同排気量で、違いはターボの有無とそれに伴うチューニングのみ、という二車の比較は中々に出来ない体験だと思いますし、せっかくなので書き残しておこうと思います。



おもしろレンタカー野田店。

 

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「大黒パーキングかな?」

「変な笑いがこみ上げてくるね、この車の並び」

 

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しれっと置かれているランボルギーニガヤルド。異彩を放っています。


スタッフのおねーさんが案内してくれます。シルビアに乗ってシルビアに乗りに来た新山に特に突っ込むことはなく、ただちらっと新山のオーテックに目をやっては「私の15とホイール一緒です」なんてことを話しており、「やっぱそういう人が働いてるとこなんだなあ」としみじみ感じ入ります。

 

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「こちらですね。操作方法は…、多分大丈夫ですよね」

「まあ同じですからね。ETCの場所だけ教えてもらえます?」

「運転席側右手、ブースト計の下です。あとは、バックミラーのところにドラレコが付いてますので、そちらには触らないようにお願いします。雨が降ってますのでアクセルは急に開けないようにしてください。ターボですし、ガバッと開けると空転することもありますから。それではお気をつけて」


……


野田店は住宅街の真っ只中にあるので、通りに出るまでは細い路地を抜けていきます。微速前進しながらファーストインプレを話し合う新山とナビシートの私。


「こうして徐行に毛が生えたレベルで動かしてる限りじゃ、特に何も変わらないね」

「まあね。でも普段と同じ車ってのは、こういうとき助かるな。車両感覚も同じだし、エアコンの操作とかもブラインドで出来るから運転に集中できる」

「欲かいてGT-Rとかにしなくてよかったよね……。にしても、運転席はステアリング違ったりシフトレバー変えてたりするから諸々違うんだろうけど、助手席の光景はあまりにいつも通り過ぎて不思議な感じ」

 

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いつもの光景。


「運転席は、あとシートの違いがデカイ。おれのレカロに換えてるから、久しぶりの純正シートなんだけど……、うわ、後方確認がしやすい」

バケットシートってやっぱり後ろ見にくいの?」

「ちょっとね。こうして久しぶりに戻ると、違いが分かるくらいのレベル。あとは、膝が余る。体制が崩れるから長く運転してると腰か背中にきそう。改めて比べると、レカロってしっかり固定されてたんだなあ」


そうこうしてるうちに大通りに出ました。右折して加速します。


「すごい! 前に進む!!」


身も蓋もないインプレです。

 

「このくらいの速度域だと助手席じゃよくわからないんだけど、違うもんなの?」

「違う。3,000~4,000rpm弱でシフトアップしても、普段より前に出る。このくらいだとまだターボの影響じゃないだろうけど……、うわー、そうかー、こんな感じかー」


往路にて、「今日1日でターボ狂になって『NAのシルビアなんてシルビアじゃないでごわす』みたいに言い出す人間になっちゃったらどうしよう」と戦々恐々としていた新山さんですが、最初の感触は上々のようです。へー、ほー、と声を上げながら一般道を進んでいきます。


「気に入ったみたいだけど、ネガの方はどうなの?  ターボはアクセル操作の反応、ワンテンポ遅れるっていうけど……」

「立ち上がりが遅れる感覚はたしかにあるね。踏み込んだときも、アクセルを抜いたときの反応もシルビアより遅いと思う。ーーただこれ、オーテックバージョンがわりとタイトだってのはあると思う。オーテックは軽量フライホイール入ってるから」

フライホイール?」

「クランクシャフトの回転を安定させる為の緩衝材円盤みたいなもん。これを軽くすると、まあ間違いなくエンジン回転数に対する反応はタイトになるわけですよ。梁井のコペン、アクセルの反応遅いって感じある?」

「特別には感じたことないね」

「それはターボの挙動が穏やかだからだと思う。シルビアも比較的穏やかなターボとは言われるんだけど、おれの場合、やたら軽いフライホイールが入ってる車に四六時中乗ってるから、尚更に『反応が遅い』って感じるのかな、と思うね」

「ははあ。じゃあ、やっぱりNAの方が扱いやすいのかね?」

「それがそうも言えなくてさ。少なくともおれが感じた限りだと、一般道で流す限りはこっちの方が楽だと思う。アクセルの反応が鈍いってことは、それだけダルな操作しても挙動が安定してるってことでさ。車の動きががギクシャクしないんだよ。疲れてるときなんか、アクセル操作が雑にならざるを得ないときとかあるじゃない。それこそ長距離ランの帰りの一般道とか……、そういうときは、絶対こっちの方が楽だと思うよ」


野田店から一番近いインター、常磐道の首都高寄り、流山インターに入ります。


「入ったね。安全運転でお願いしゃす」

「はいよ。加速しまーす」


キュイーン。


「おお」

「おおおおおおおお」


合流。さらに流れを見て追越車線に入り、何台かをやり過ごして、走行車線に戻ります。


「ち、違うね」

「うん、ただ、これはなんとも……」


運転席も助手席も感じたことは近しいようで、互いの感想を交換します。


ダッシュ力は間違いなくこっちのが上だわ。超速い。ただ……」

「2速でリミットまでぶん回したときの加速感はオーテックのが上だよね」

「だと思う。いやー、一般に言われてることの感覚が分かったわ」


曰く、


「トルクバンド問題だよね。比較的低回転からガバッと立ち上がるのがターボで、回転が上がってからの盛り上がりはNAの方が上。だから、上まで回した時の気持ち良さはNAだっていう」

「だと思う。最初のダッシュ力はびっくりしたけど、5,000rpm後半からの加速が伸びないから、総合的なダッシュ力はオーテックに比べてダルく感じた」

「単純だけど、よく書かれてる通りなんだね。ターボは中回転域からのダッシュ力、NAは回したときのリニアな反応かー。なるほどねー」


続きます。