BMW ALPINA B3 3.3 Limousine E46。
私のB3・F30型が絶賛入院中でありまして(詳細は後日別エントリで述べたいと思います)、暇と悲しみを紛らわす為、今回は同日に納車された新山氏の新たな愛車、B3・E46型について記したいと思います。
◯ BMW ALPINA B3 3.3 Limousine E46 (2002年式6MT)
エンジン: S52B32 Turned by Alpina 3,299cc(E36型M3北米仕様搭載エンジンのチューンド)
ボディサイズ:全長 4,470 × 全幅 1,740 × 全高 1,395 mm
ホイールベース: 2,725mm
トレッド:前/後 1,470/1,475mm
タイヤサイズ:225/40R18 / 255/35R18
車重:1,480kg
最高出力:285ps(kW)/6,200rpm
最大トルク:34.2kg-m(N・m)/4,500rpm
2014年、走行距離126,700km時に下記の交換実績あり。
エアーエレメント/MTオイル/デフオイル/ブレーキオイル/フロント及びリアのブレーキローター/EGルームバキュームホース/アルピナシャシーキット/ヘッドライトレンズカバー
2015年、走行距離127,590km時
エンジンオイルフィルターハウジングガスケット/70Aバッテリー
2016年、走行距離140,921km時
エンジンヘッドカバーガスケット
2020年、走行距離164,891km時
ステアリングラックブーツ
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2022年8月6日。走行距離178,600km時。私のF30と同店同日での納車となりました。下記はそのときの記念写真です。
車を探していたのは私の方とは言え、先に契約したのは新山ですし、あくまで追っかけたのが私とも言えるのですが……ともあれ、アルピナの同日納車はさすがに前例がないらしく、営業担当氏が日取りを合わせてくれたようです。当日「絵面が笑えるので記念に写真を撮らせてほしい」とおっしゃられ、上記の記念撮影となりました。良い思い出です。
稀少なマニュアルミッションのアルピナです。結構な争奪戦になることも予想されて然るべきでしたが、結果として、店頭で発見した新山さんがわずか1週間で掻っ攫っていきました。この辺りの紆余曲折はあまりに面白過ぎるので、別途購入記のような形で書き残しておきたいと思います。
兎に角して、この日よりバイエルンに魂を売り渡したアルピナブラザーズ2人は、それぞれエンジンチェックランプの点灯に慄き、オーバーヒートに肝を冷やし、経年と過走行から来る不具合をモグラ叩きのように一つ一つ潰しながらも、『セダンの極致』と言うべきアルピナの走行性能を味わい尽くさんと、東北やら北陸やら中部やら、津々浦々を走り回ることになります。
◇
しかしながらそもそもの話、何故新山さんは念願のサファリを手放してまでB3に飛びついたのでしょうか。
「魔が刺した…とでも言っておこうか」
「リボルバーオセロットみたいなこと言ってるけど、『手が滑った』だからね、その台詞」
E46でのドライブ中に尋ね、返ってきた答えがこれです。どうも衝動買いに近しいようです。
「衝動……いや、その、まあ、衝動買いと言ってしまえばそうなのかな? ただ、前からBMWのマニュアルモデルを探してはいたんだよ。だから、漠然と探していたものに対して、ドンピシャで適合する車が出ちゃったからっていうのが一番じゃないかな」
「出物があったからだと」
「そう。さっきの『飛びついた』っていうのが、一番しっくりくる表現かもしれない」
大排気量NAエンジンの、低重心で運動性能に優れるセダンまたはクーペレイアウト。しかもマニュアルミッションで、極め付けは『広義の意味で走行性能に振り切ったメーカーであるアルピナのB3』が、近くの店で、しかも自社工場を持つ専門ショップに格安で現れた、というのが理由だそうです。
「格安の理由は過走行だけど、きちんとメンテナンスされてた車ってことは点検簿を見て分かったし、であれば、走行距離そのものは問題にならないことは、シルビアとサファリでよくわかってたからね」
(注:シルビアとサファリが殊更に頑丈だったことを後日痛感することになる)
「サファリに不満は?」
「ほぼなかった。低重心のマニュアルモデルじゃないってこと以外は。全体的に車としての基本性能が素直で気持ちよかったし。だけど、『これを逃したら同じような条件の整った車には二度と乗れない』と思ったから飛びついた。それに尽きるかな。『アルピナなら間違いないだろう』っていう信頼感もあったし、事実満足してます」
「買う前に確認したことは?」
「アクセルレスポンス。この車は電子スロットルだし、別に鋭敏じゃなくてもいいんだけど、変な制御が入ってないか、自分のフィーリングに合うかどうかは事前に確認したかった。そこはフーガで合わなかったところだから…。空吹かしと、ショップの敷地内で動かさせてもらった限りじゃ問題なし。買った後自分でエアクリ変えたら応答速度もめちゃくちゃ速くなったしね」
「ちなみに、もしかしたらこれが『アガリの車』かもしれないけど、それでも次に車を買うなら?」
「ディーゼルエンジンでマニュアルミッションのサファリ」
業が深いです。
◇
続いて所感いきます。
まずもってこの車、エンジン始動音からしてデカいです。
「排気音はマフラー換えたシルビアが断トツで大きかったけど、始動音はB3の方がすごいね」
「芝居っ気がないよね。3.3リッターの鋳鉄エンジンを叩き起こしてる音がする」
F30も冷間始動時はぶったまげるような爆音ですが、通常始動音は大層大人しいです。E46は冷えていようが暖まっていようが轟音を響かせながら始動します。
エグゾーストにおいても、中々にお元気な音を響かせながら走ります。太さはあれども、低音で押してこない、ハイミッドが効いてる音がします。
動きも軽やかで、シルビアより280kg重いのに、軽快さはB3の方が上のように思えます。この辺りは、BMWの誇る前後重量配分50/50がそうさせるのか何なのか。
それでいて直進安定性というかスタビリティというか、どっしり感というか、安定感もあるのがB3です。
「シルビアとフーガの合いの子みたいだ」というのが新山さんの談でした。
シルビア寄りなのがE46で、フーガ寄りなのがF30というのが私の所感です。世代も近いですし、いささか短絡的ではありますが…。
続いて、おそらくこの車一番の特徴であろう、エンジンについてです。
「ちょっと古いエンジン使ってるんだよ、このB3。ーー先代E36型の、北米仕様M3にだけ載せられてた『S52B32』をアルピナが独自に組み上げたやつ。アルピナは大体、その世代の最先端エンジンのうち、『M仕様そのものを除いて』なるべく高性能なやつを使うんだよ。で、そいつのシリンダーブロックを元に、クランクシャフトやらピストンやらを自作して、ボアアップしたエンジンを組んで載せるんだけど……、こいつに限っては何故か『先代の』、しかも北米用に出力を抑えたものとはいえ『M3の』エンジンを載せてんの」
「湾岸ミッドナイトにおけるL型エンジンの理屈と同じだよね。要するに、新開発のアルミブロックより、頑丈でチューニングに対する許容性と耐久力に余裕のある鋳鉄エンジンを選んだんだよ。で、アルピナが目を付けたのが、スペックよりも長距離走行に対する頑丈性を意識して別個に用意された、北米仕様M3のエンジンだったわけだ。いいよね。あえて旧型をチューンナップして組み上げた専用エンジン。浪漫がある」
「それはよくわからないけど……。あとそうだ。この車、アルピナとしてのエンジン型式が、なんと『E46』なんです。偶然だけど、元車の型式と同じなんだよ。前期型だとE44だったりするんだけど。ほら、車検証」
ばっちり『E46』と表記されてあります。
ちなみに私のF30前期型のB3は、アルピナ独自のエンジン形式が『N55R20』。BMWはエンジン型式の採番に厳然としたルールがあるのですが、アルピナは果たして…。
『左のマニュアル』であることに対しては、やはり慣れるまでは「免許取り立てに戻ったような気分」だったらしいですが、1ヶ月もするとシルビア時代と変わらないリニアなシフトワークを決めておりました。この辺りは慣れなのでしょう。
「通勤なしのレジャー使用のみだけど、納車から3ヶ月、何キロ走ったの?」
「8,000km」
毎週末600km計算です。この車を買って満足しているかどうかの答えとしてはこれで十分でしょう。羨ましい。私は半分入院中で2,000kmも走れてないですけど。
「最後に、この車の今思う一番好きなところは?」
「うーん……今一番思うところだと、弄りやすさかな」
まさかの答えが返ってきました。
「走りのフィーリングとかじゃなくて?」
「それももちろん気に入ってるけど、一番実感してるのは兎にも角にも弄りやすいこと。各パーツのレイアウトとか、弄りたい箇所へのアクセスのしやすさとか。具体的にいうと、内装の留め方が、全部ツメの嵌め込みじゃなくて一部ビス留めだったりとか……。そういうところが自分の感性に合うんだよね。ドイツ車の特性なのかBMWの設計思想なのか分かんないけど。触ってて『おおー』となるし、だからもっと弄りたくなるというか」
それはもはやアルピナじゃなくてBMW E46の特性ではないかと思うのですが、当人が気に入っているなら何よりです。
実際、購入以来ほぼ毎週末、E46はどこかしら手を入れられており、ショップでパーツを取り寄せては自宅でDIY作業を敢行している新山は、ショップの営業さんから「メカニック新山さん」なるニックネームまで付けられている始末です。
彼のE46弄り奮闘記については、後日機会があったら書き記したいと思います。ほとんどは経年に対するプラスティックパーツ及びゴム類劣化の対応なのですが……。
※「ショップから近いから」という理由で我が家の目の前でサンルーフの修理を敢行する新山氏
続きます。