ー ORDINARY ー

※ 登場人物はすべてフィクションです。車と楽器とフィクションに塗れた会社員の日常を、のんべんだらりと書き綴っています。

コペンローブ購入記その6

コペンローブはお店でCVT試乗済。86はレンタカーでGグレードのMT試乗済…。

ということで、コペンのMTと86GTのMTを予約して試乗してみることにしました。


まずは86。

小雨がパラつく土曜の夕方。近くにはショッピングモール、大して広くもない国道に、買い物帰りのファミリーカーだらけという、街乗りの極致みたいな立地。それなりに混んでましたが、逆に市街地の感覚がわかってよかったです。運転席に座ると、

「コクピットって感じ…」

マルチエアコン付きであるGTグレードの内装は、Gと比べるとかなりかっこいいです。内装がいいとか運転にゃ関係ねーじゃねーかと思ってた学生時代の私よ、大人になってしまったら分かる、内装凝ってるとね、テンション上がるんだよ。

車高も低く、包まれ具合が半端ないです。ちょっと目を閉じ、「梁井、DBA-ZN6、出ます」と(心の中で)呟いてから半クラッチ。発進します。

コペンスイスポと比べると、クラッチのミートポイントが奥にあってシフトのストロークも短く、操作性がよかったのを覚えています。シフトフィールがいいとはこういうのを言うんでしょうか。交差点を曲がるときも、「おおー」と声が出るくらい気持ち良く曲がってくれます。

前が空いたとき、「踏んでもいいですよ」と言われましたが、加速はレンタカーのときに体感済みなので控えめに。普通に走る分には車内は非常に静かです。

そういえばレンタカーで高速に乗ったとき、一番印象的だったのはサウンドクリエイターの効果でした。吸気音、というか脈動を増幅して、運転席に取り込んで響かせる装置らしいのですが、おかげで「踏み込んだときだけ」コクピットに音が響きます。玄人の方々がどう思うかはわかりませんが、私のようなスポーツカー初心者からすると、これはすごく面白かったです。一定以上踏むと変身する感じ。

総合的に、すごく運転しやすい車でした。

クラッチとシフトの感覚は、むしろコペンより馴染みやすかったくらいです。予想以上に相性よく感じられたので、さらに迷う要因になってしまいました。強いていえばロングノーズなので鼻先の感覚が掴みづらかったのと、バックのとき後ろ下部が全く見えないのは気になりましたが、こんなん慣れだとも思いました。

コペンと印象が違うのは、何より運転席に座ったときの感覚。これは間違いなく86の方がストイックでした。

「コクピットに座る感じ」

というのが、86に感じた一番の印象です。こりゃあ操るためメカだと思いました。


続いてコペン

「近所の○○店で購入するつもりだけど試乗車がCVTしかなく、MTを買うつもりなのでこちらで試乗させてほしい」と伝えると、「担当は○○か?」と訊かれ、

「そうですか!いや、○○私の同期なんですよ!信頼できる営業なので、ぜひとも彼から買ってください!」

またこのパターン。まあでも意外な人の接点があって、ホント面白かったですこの車探し。

初めて乗るMTのコペンは、クラッチの感覚が86やロードスターと大分違って(ミートポイントがやや手前、シフトのストロークも程々にある感じ)、何度かエンストをぶちかましてしまいました…。ちょっと馴染みにくかったので、参った、86を諦めるための試乗だったのに86の方に好印象を持ってしまった、なんて思いはしたのですが…、

夕方のさいたま市、少し坂のある幹線道路や、新しく出来た車通りの少ない国道を、オープンにしてパタパタ風を受けながら、饒舌な営業さんからあれこれ話を聞きながらの試乗は、それでもやっぱり楽しかったです。それは86とは違う種類の楽しさでした。


ここからまーた一週間くらい悩み続けます。

現実的に買えるのはコペン。ただ86も買おうと思えば買える。維持費もギリギリだけど大丈夫。それなら、元々憧れだった車に行く方が初志貫徹でよくないか?クラッチの感覚も、86の方が合っていた気がするし。見た目だって86の方が好きだろう。

一方。

86を買うと金銭的に余裕のない生活になる。それでホントに毎日楽しめるのか?クラッチの相性なんて言っても、MTを運転したことが片手に余るような輩に相性も何もわかるもんか。乗ってりゃどんな車でも慣れるだろう。何よりコペン楽しくなかったか?

なーんて悶々としながら会社の昼休みにカップ麺を啜っていると、

「日本初!コペンローブのレンタカーが千葉県野田市に登場!」

危うくラーメンを吹きそうになる。これロードスターと86借りたとこじゃん!コペン新車で買ったのかよ!

おもしろレンタカーさん。導入したばかりの新型コペンは最長4時間のレンタルですが十分です。この際なので、野田からウチまで、田園地帯あり市街地ありの道をコペンローブでダラダラ走ってから、どっち買うか決めようと、さっそく予約してみました。


日曜の朝。晴れとも曇りとも言えない、暑くも寒くもない7月のオープンカー日和。

オーディオレスの白いコペンローブで、見知った道をぶらぶらと走ってみます。

ダイハツが提示した、田園地帯に停まるコペンを写したLOVE LOCALの写真がありますが、「あー、今あの写真みたいなとこ走ってる」と思いました。

信号待ち、隣に停まった軽トラのおっちゃんからシゲシゲと見られ、「かっこいいねー」「いやこれレンタカーなんですよ」と答えると、「そっか」とケラケラ笑われます。

小さくて軽い(軽規格としてはそれなりですが…)コペンを、慣れないシフト操作で3速に叩き込むと、いい具合の加速感で60km/hまでグイグイ伸びてってくれます。

試乗のつもりが、完全に頭を空っぽにしてドライブしてしまいました。


コペンを返し、ちょっと用事を済ませに都内に出て、夜、スピアーノくんでやたら空いてる環七を走りながら考えました。

今みたいに、軽自動車の窓を全開にして帰りの国道をダラダラ走るのが好きな私にとって、「DBA-ZN6、出ます」と呟きたくなるほどかっこいいスポーツカーと、軽のオープンカー、楽しいのはどっちだ?

コペンかなあ。

86を買って、私自身を憧れの車に合わせていく、というのも正しい選択だとは思いましたが、結局私は今の自分の雰囲気に合っていると思える車を選びました。まあ、私にオープンカーが似合っているかどうかはまた別の問題ですが、これもMTと同じです。乗ってりゃそのうち慣れるでしょう。


私はコペンを買うことにしました。

次で最後です。