よく晴れた祝日の昼下がり。サンバーディアスワゴンが、国道をギシギシ軋みながら走っていきます。
やたらと風の強い日で、トールタイプのボディーが横風でぐらぐらと揺さぶられます。左折待ちの信号で思わず呟く私。
「全高いくつだっけ、この車」
「1,900mm」
「……ランクルより高いじゃん」
「高いよね。未だに曲がるとき、ちょっと怖いんだよ。横転するんじゃないかって」
調べてみたところ、現行販売されている軽自動車のうち最大全高のものは、ダイハツ・ウェイクの1,835mmだそうです。軽自転車の全高基準は、2,000mm以下。ギリギリを攻めています。
「でもこの車、重心は低いんじゃない?エンジン搭載位置は運転手のケツより下でしょ」
「まあ、そうだね。直列4気筒が荷室の下に横積みにされてる。見た目の割には低重心っちゃ低重心か。……それでも、運転手の視点からしたら、やっぱり高いからさ。カーブのRが大きいときは正直怖いよ」
オタクが乗ったキャンピングカーが派手に横転する動画がネットで流行ったばかりです。シチュエーションとしては似たようなものなので、何というか気をつけて乗っていきたいものです。
◇
本日向かう先は、東雲のスーパーオートバックス、A-PIT。
予定のないときにふらりと向かう先として重宝しているドライブスポットですが、今日はちゃんとした用事があるようです。
「エアクリーナーがほしくて」
「エアクリ?シルビアじゃなくて、サンバーの?」
「そう」
「HKSのチューニング用みたいな、目の粗いやつしか置いてないんじゃない?」
「そうかも。普通のやつがいいんだけどなあ」
「またどうしてエアクリを」
「エンジンがね、調子悪いんだよ。この車」
始動とアイドリング不調のようです。
この後何度か実演してもらいましたが、イグニッションから問題なくエンジン始動する確率が、大体半分ほど。無事エンジンが回っても、少し吹かしてやらないとアイドリングが安定しません。
「納車直後から、どうもアイドリングが調子悪くて。エンジン一発でかからないことも多いから、一通りチェックしたんだよ。まずはスロットルバルブがギトギトだったから清掃して、スパークプラグとプラグコード交換して。でも相変わらずなんだよね。走っちゃえば落ち着くんだけど……。とりあえず、近々ディーラーに持ち込む予約はしたので、その前に交換できる怪しいとこは先に潰しておこうかなって」
※リアのエンジンルームハッチを開け、オーナーからメンテナンスを受けるサンバー君の図。新山さん曰く、「キャビンに工具も部品もおけるので、やたらと作業性が高いレイアウト」とのこと。
※交換用のプラグとコード
※汚れ気味のスロットルバルブ付近
「ディーラー?買ったとこじゃないの?」
「他所でやってもらっても保証は効く契約になってるから。……それに、ちょっと不安なんだよね、あそこ」
曰く、買ってすぐ、走行中に電気系統が不意に落ちる症状があったとのことです。
電源が大元から落ちるらしく、カーナビが再起動する始末。オルタネーターか?しかし警告灯の表示はない……。納車直後から結構な症状ですが、以前バイクで同じ症状を経験していた新山さん、落ち着いておりました。
バッテリー端子をチェックしたところ、案の定締めが甘く、締め直しを実施。それだけで無事正常化したとのことです。
「整備簿じゃ『増し締め済』ってなってたんだけど、やたらナットが硬かったから、作業者が勘違いしたのかな。ーーともあれ、そのせいもあって、少し懸念がね。ディーラーが一番安心感があるかなと」
バイク乗っててよかったよ、と嘯く新山氏。着々と経験値を上げて来ているようです。恐るべし。
◇
しかして、東雲スーパーオートバックスに目当てのエアクリーナーは案の定ありませんでした。
一応HKSの適合車種表があったので見てみたところ、そもそもスバルの欄にサンバー対応品が確認できません。
「アルシオーネはあるのに……販売台数じゃ絶対勝ってるはずなのに……」
「用途が用途だから。ここで買うものじゃないんだよ」
「分かっちゃいたけど……悲しい」
結局、駐車場無料分達成の為、wakosの551みたいなやつとエンジン添加剤だけ買って退散することになりました。
◇
停車中、改めて内装とキャビンを眺めます
「タコメーター付いてないの?マニュアルなのに?」
「付いてるモデルもあるみたいだけどね。一応ほら、速度メーターんところに目安のギア数が振られてる。2速で引っ張るなら45km/h、って具合に。リミットじゃないけど」
「初めて見たわこんなん……」
「軽トラのメーターだとたまにあるよね。ちなみにタコメーターは前オーナーが後付けで付けてくれたみたい」
※後付けのタコメーター。写真は停車時ですが、電源オン時はブルーの表示がやる気を上げてくれます
「後ろはさすがに広いね」
「シートは基本倒してます。4人乗ることはまずないからね。こうすると、ボックスとギターが縦に、しかも直列で積める。横にしなくていいのはホント楽だね。無造作に積めるから、余裕があるよ」
「こうしてみると本当に四角いんだな……箱みたいだ」
「小物入れも多いし、上にハンガーも掛けられる。車中泊は大分捗ると思うよ。まだやってないけど楽しみだわ」
◇
「総じてどうですか。遅いし、買ってそこそこトラブルも出てるし、サスもグニャグニャで運転に気を使う車とは言ってたけど」
「いや、買ってよかったと思うよ。小回り効くし、雪道の狭いとこにも突っ込んでいけるし。結構狭いとのあるじゃない、雪の深い山道って。デカイ車じゃ入りにくい場所も、サンバーなら気にせず突っ込んでけるのは気持ち的に楽」
「4.8Lで重量約2.5t、全長5,000超、全幅1,900超の大物、サファリと迷ってたわけだけど。その辺は?」
「結果的にサンバーにして正解だったかな。前述の小回りの部分と、何よりシルビアと2台持ちにしたのが良かったと思う。役割分担も明確だし。……多分、サファリにしてたら多少後悔があったと思う。シルビアは手放すことになるだろうから、そうすると、ハンドリングのいい、キビキビした動きの車が、遠からず恋しくなるだろうからね。ーートルクで走る、バカデカくて防御力最強の車ってのは、未だに憧れはあるけどさ」
シルビアとの2台持ちを選択したのが英断だったかもしれない、と述懐する新山氏。
しばらく長距離ランとツーリングはシルビア、街中の買い物と、四駆と車中泊が活きるシチュエーションはサンバー、たまに気分転換でバイク、通勤はスクーターという体制になるようです。こう書くとリッチで羨ましいですね……。
ともあれ、足掛け5年に渡る、次なるカーライフ構想の旅に一応の決着が付いたようです。
最後に御茶ノ水で適当に楽器を見て、祝杯がてら久しぶりのラーメンで気持ちを上げて帰りました。
盛太郎・御茶ノ水店。ラーメン中盛り。満腹中枢が働き始める前に食い終わるべし。お疲れ様でした。